One point happiness
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朝。
いつもの時間に目が覚めて、いつもの服に着替えていつもの時間に家を出る。
時間どおりに運行するいつもの電車。同じ電車の同じ場所。周りにいるものいつもの人達。
声も聞いたことのない、名前も知らない、顔だけ知ってる知り合い達。
いつもの風景。
窓の外に昨日と変わらない景色が流れてく。
電車の揺れに合わせて体が勝手にバランスを取っている。
乗りなれた電車。無意識のうちに覚えたリズム。
起きてても眠っていても身体が勝手に動いてる。
同じリズムで、同じ方向。皆が一緒に動いている。
変わらない日常。
電車を降りて、ホームを歩く。
遅刻寸前なのか、サラリーマンが必死な顔で走っていく。
その横を眠そうな中年サラリーマンがのんびりと歩いていく。
誰かが大きな欠伸をして、その横を笑顔の女子高生たちが、楽しそうに歩いていく。
同じシーンの繰り返し。
まるで擦り切れたフィルムのように、同じシーンを繰り返し繰り返し。
昨日と同じ、何も変わらない今日。
ホームの端に立ち止まり、人の流れをただ眺める。
同じ方向に歩く人達。流れに乗って、皆同じ。
皆何処に行くんだろう?
昨日と同じ今日の先に何があるんだろう?
心の中にぽっかり開いた小さな穴。
さらさらとそこから何かが毀れていく。
同じ一日。変わらない毎日。…変わらない世界。
いくら努力しても無くらないもの。…変わらないもの。
足掻いてもがいて進んだ先に見える未来は…。
人の流れに飲み込まれ、いつのまにか越えていた改札口。
表に出たとたん感じる肌寒さ。吹き付ける北風は、コートの中のささやかな温もりまで容赦なく奪っていく。
ささやかな抵抗を試みてコートの襟を掻き合せてみても、冷たい風は収まるどころか、ますます強く吹き
付けてくる。
寒さに凍える身体を抱き締める。
寒さに、心細さに震える心を守るように。
背を丸めて、足の先だけを見て歩く。
いつもの道を、行く先も確かめないままで。
暫く歩いた先に聞こえてきた賑やかな笑い声。
顔を上げれば、通りの向こうに流行の色に髪を染め流行の服に身を包んだ男の子たち。
顔を見れば、まだまだ子供。どう見たって高校生以上には見えやしない。
おいおい、お前ら学生なんだろ?
今日は平日。学校如何した?
なーんて質問してみても、きっと答えは笑い声。
つまらない事には背を向けて、楽しいことだけを見詰めて生きている。
思い浮かぶのは世間を騒がす多くの事件。
凶悪事件に走る若者たち。
事件に踊らされ、事件を起こす若者たちに振り回されてる大人たち。
皆何かが間違っていると解っていても、それが何なのか解っていない。
解らないまま、明日に向かって生きている。
皆何処に行くんだろう?
昨日と同じ今日の先に何があるんだろう?
再び歩き出した道の向こうに一人のお婆さんがゆっくりと歩いてくる。
地味だけど、綺麗な着物を着たお婆さん。
片手にバック。
片手に大きな風呂敷包み。
風呂敷包みは大きくて、小柄なお婆さんの上半身の殆どを隠してる。
ああ、危ないな。
足元がふらふらしてる。
あのままじゃ、そのうち転んでしまう。
仕方が無いね。
連続遅刻記録更新しちゃうけど、勘弁してね。
道の向こうに走り始めた俺の目に、動き出した若者達が目に入る。
なんだろうと見ていると、彼らはお婆さんの前に立ち塞がってしまった。
数人の少年達に囲まれ、お婆さんの顔が驚きに染まる。
まずい!
瞬間的にそう思う。
語りかける少年の手がお婆さんに伸びる。
お婆さんは驚いたまま動けない。
間に合わない!
ゆっくりと伸ばされた手が荷物に触れて。
お婆さんが微笑んだ。
あれ?
にっこり笑って少年たちに頭を下げるお婆さん。
彼らの手には、大きな風呂敷包みが収まっていた。
荷物を手にした少年の顔は、周りに冷やかされてちょっと照れた笑い顔。
少し怒った振りをして、周りの仲間を蹴る振りをする少年を、お婆さんが笑って見ている。
ああ、なんだ。
皆、良い顔してんじゃないの。
ゆっくり歩き始めたお婆さんの歩調に合わせ、少年たちも歩き出す。
すれ違う時に聞こえてきたのは、楽しそうな会話と笑い声。
朝の出勤通勤時間の人波に逆らって、ゆっくりと彼らが歩いていく。
忙しない人の波を割りながら、自分たちの歩調でゆっくりと前に向かって歩いていく。
ああそうか。
そうだよね。
皆、きっと解ってるんだ。
何が一番大切か。
ただそれを表現するのが苦手なだけで。
北風に丸めていた背を伸ばして歩く。
見詰める先は道の向こう。
風は相変わらず冷たいけれど、歩き続けていれば身体も温もる。
この道の向こうに何があるのかなんて知らないけど、真っ直ぐ歩いていればきっと何処かにたどり着く・・・
はずだよね。
ゆっくり歩いていた歩調が早くなる。
跳ねるように、足取りも軽く歩いていく。
自分のペースで。
真っ直ぐにね。
それでいいじゃない!
いつもと同じ朝に気付いた、いつもと違うこと。
今日は昨日と同じじゃない。
明日も今日と同じじゃない。
きっと何かが変わっていく。
きっと・・・ね。
「やべっ!遅刻だ!!」
跳ねる足が、駆け足に変わった。
流れる景色が輝いてひかりと一緒に流れて行った。
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一日遅れの青島君誕生日記念です♪
って言ってもあんまり記念っぽくないですが、
たまには良いですよね♪
何でもない日常にこそ大事なものって
あるような気がしませんか?
…なんてな。