過保護な彼と彼女の報酬と俺のプライバシー


「あ・お・し・ま・く・ん」

スタカートも軽やかにすみれさんが俺を呼ぶ。

「どしたの?なんかご機嫌だねー」

俺は既に日常業務となった始末書書きをしながらすみれさんを仰ぎ見た。

「ふふーん、まぁね」

「どしたのよホント。なんか美味しい物食べれる算段でもついたの?」

「スルドーイ」

「今日は何?」

いつものことだけどすみれさんは美味しい物が食べれるとわかった時は機嫌が良い。

単純というか己の欲望に忠実というか……。

「厚生省と農水省と外務省のランチ」

「はぁ〜?」

「一度行ってみたかったのよね」

「何処によ?」

「各省庁ランチ巡りの旅」

「『旅』ってすみれさん」

ラララーンと課内をダンスしそうな勢いだ。

実際ステップ踏んでるよ

「外部の人間はなかなか入れないところじゃない。誰が手引きしてくれるの」

そんなにすみれさんの交友関係広かったけか。

「青島くんのダーリン」

「むろいさん?!」

ギーッと椅子を鳴らしてすみれさんの方を向く。

「あら?私誰も室井さんなんて言ってないわよ」

………………しまった。

「そっかぁ。やっぱり青島くんのダーリンは室井さんなんだ」

「え。あーそのぅ…」

墓穴掘ったなぁ。俺と室井さんの事は秘密なのに。なんですみれさんにはバレるかなぁ。

「なに悩んでるのよ。あんたたちの事なんてみんな知ってるわよ」

「はいぃ?!」

「知ってるって。ここの連中も本店も総本店も」

「なんで!!」

「なんで、ってあんたたちの行動見てれば一発じゃん」

「そんなに?」

そんなに目立つのかな。

「うん。でも大丈夫よ。だれも悪い事は言ってないから。みんな好意的よ」

って、すみれさん……

俺たち男同士よ?

「これからの21世紀のモデルケースよ」

「モデルケースぅ?」

「マイノリティを排斥するのは良くないってこと」

………頭のいい人達の考えている事は良く分からない。

「すみれさん…なんか話がズレてきてません?」

うわぁ!!

俺たちの会話をいつから聞いていたのか雪乃さんが口を挟んできた。

「青島さんと室井さんの事なんて良いじゃないですか。もう警視庁の常識なんですから」

「警視庁の常識」ってどういうことよ?

ねぇ…

「気にする事ないですからね、青島さん。私達はお二人を見守ってますから」

「……………」

「雪乃さん……」

俺は縋るような目で彼女を見た。

どうやら…俺たちの知らないとこでなんか恐ろしい事になっているらしい。

けど、それを聞く勇気が……ナイ。

「すみれさん。話を元に」

「そうね」

「そうです」

「あのね、青島君」

「うん」

俺は抵抗するのを止めた。

何を言ったってすみれさんには勝てない。

「室井さんはね、それはそれはキミの事が心配でね…」

無茶ばっかりしてないから、って?

そりゃ生傷絶えないけどさ……

「誰か他の人にいただかれてしまうんじゃないかと」

いただかれ…、ってすみれさん?

「それが心配で私が青島君の様子を知らせてあげてんのよ」

知らせて?

あのう、すみれさん。あなたのおっしゃっている事がよくわからないんですけど?

「ダメですよすみれさん。そんな言い方では青島さんわかりませんよ」

雪乃さんが横から口を挟む。

って事は雪乃さん今ので理解した訳?

「あのね、青島さん。室井さんは青島さんの貞操を心配しているんですよ」

「てーそー」

「だから青島さんに色目を使う人間をチェックして対策を講じているんです」

わかりましたか?とニコッと笑いかけてくる。

俺もニコ、と笑いかけ……

って―――――――

「そ。その報酬が『官庁食堂巡り(改名)』ってわけ」

あぁ憧れだったのよ。官庁の食堂にはキャリアがいっぱい。一人くらい好みの男がいるかも知れない。

それにキャリアの食堂ならさぞかし美味しいに違いない、等々。

すみれさんは胸の前で両手を組み雪乃さん相手に夢見る乙女になっていた。

なんなのよ、それは。

室井さんってばそんなことをすみれさんに頼んでたの?

俺ってそんなに信用ないかなぁ。

こんなに室井さん一筋なのに……

正直俺は室井さんに少し腹を立てた。いつも「少しはオトナになれ」って言ってるのに、なに?これじゃ

室井さんの方がガキみたいじゃん。

「すみれさん!」

「なぁに青島君」

「で、今日すみれさんは室井さんと約束してるんだね?」

「そうだけどぉ?」

「俺も行く」

「俺も、って」

「室井さんにひとことカマす」

「カマすって…」

過保護にも程がある。

ヒトコト言わなきゃ気が済まないっ!!

 

 

その日の昼過ぎすみれさんと俺は課長から本店へのお使いをもぎ取り霞ヶ関へ来ていた。

「ここで待ち合わせ?」

「うん」

俺達はダークスーツの群れの中で場違いに佇んでいた。みんなどっかの省庁の人なんだろうなぁ…。

「ねぇ、誰が何処の官庁の人か区別つく?」

「ううん。すみれさんは?」

「私もわかんない。でも見る人が見れば区別が付くらしいわよ」

「へぇ〜」

目の前を通り過ぎる人をウォッチングしていると。前方桜田門方向から姿勢のいい人間が近づいてくるのが

見えた。

「私、あれならわかるな」

それはドンドン近づいてくる。

「そりゃ俺だって」

判らなきゃコイビト失格ですって

「「ズバリ警視庁!」」(笑)

 

「すまない遅れたな…青島までなんでここに?」

室井さんは俺がここにいることに驚いたようだ。

「あのね、青島君は一発カマしたいらしいわよ」

「かます?」

何処の国の言葉だ?みたいな顔をしてた。

「バレちゃった。青島君に今日の趣旨」

「バレた」

「そうです。室井さん、だいたいアンタは俺のことを何だと思っているんですか。

これでも立派な成人男性ですよ。自分に降りかかってくる厄介事くらいちゃんと対処できます」

「できてないだろ?」

「できてないじゃない」

二人とも大きく頷いている。

「してます!!」

「出来てたら青島君が私に奢る回数減ってる」

「新城のイヤミを聞く回数が減っているはずだ」

…………なによそれは

俺は見に覚えのあることに思わず頭を抱えたね。

おっしゃるとおり、です。ハイ。

 

「恩田君、これを」

室井さんがすみれさんにメモを渡す。

「各官庁に居る私の友人だ。話はつけてあるから」

「ありがとう」

メモを受け取って足取りも軽く向かうは――――何処だろう?

あ、と振り返って室井さんの耳に一言二言囁く。

「な」

室井さんはビックリした顔をしている。すみれさんなに言ったのさ。

「わかった。すまない」

「「いーえ。でもほどほどにね」

と繋がっていない会話をして去っていった。

 

「何がほどほどなんですか?」

「後でわかる」

ニヤ、と室井さんは俺の顔を見て笑ったんだ。

「ところで青島」

「はい」

「午後はは有休だと聞いたんだが」

「へ?俺届なんて出してませんけど」

「恩田君が課長から『代休溜まっているからどうぞ、ご自由に』という伝言を持ってきてくれたんだが?」

「あー?」

じゃさっきの耳打ちって―――――――

「偶然だな、実は私も午後から代休をとっていてな…」

それってさぁ

「時間はたっぷりあるから「カマす」ことがあるなら幾らでも聞いてやるぞ」

顔は笑っていたけど目は笑ってなかった。

「いえ、あの…ですね」

「行こうか」

行こうか、って何処へ?

逃げ腰になった俺の腕をムンズと掴み室井さんはタクシーを止めて運転手に告げた。

「六本木まで」

 

 

その日の俺の昼食は午後8時過ぎで、六本木の官舎のベッドの上だった。

END


ツクヨミ様より、あるブツと交換に頂いちゃいました♪

室井さんに一言カマすといいながら

結局、美味しくいただかれちゃってる青島君が

凄く可愛いです♪

オイシイものの為なら手段を選ばないすみれさんも

とっても「らしく」て、いいですねっ!

とっっっても良いものを有難うございました!

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