「東映版スパイダーマン」は、アメリカの大手出版会社、MARVEL COMICS(マーベルコミックス)発行の
人気コミック『アメイジング・スパイダーマン』(スタン・リー&スティーブ・ディッコ作)を原作としている。
しかしその内容は、スパイダーマンの見た目のデザイン、基本的な能力の設定以外はすべてオリジナル、
「東映ヒーロー・テイスト」満載に新たに日本的にアレンジしており、原作のストーリーは完全に無視している。
これは番組のメインスポンサーでもあるポピー=BANDAIが共同開発に加わったことに大きく起因しているようだ。

そもそもこの「東映版スパイダーマン」の企画が立てられたのは、
『東映側でマーベルのヒーローを3年間は自由に使用できる』
という契約が両社間で結ばれたことによるものであるが、
まさかマーベル側もスパイダーマンに巨大ロボットが登場し、
さらにスパイダーマンがその巨大ロボを駆使して戦うなどとは想像だにしなかったことであろう。

だが、等身大のヒーローと、巨大ロボ、二つの戦いが一つの話の中で見ることが出来るというこのシステムは好評で、
「東映版スパイダーマン」は平均視聴率14%を稼ぐ人気番組となった。
そしてヒーロー+巨大ロボ(+剣)という図式は、後のスーパー戦隊シリーズに延々と受け継がれていく。
「東映版スパイダーマン」はその点からも礎(いしずえ)になっている記念すべき作品なのである。




以下は『メーキング・オブ・東映ヒーロー2』(講談社編)に掲載された企画案の変遷である。
それによると巨大ロボットの登場は第2企画案から。
第3企画案で設定された敵組織「紅十字団」は本放送直前に「鉄十字団」に変更された。
(実は2話までは「紅十字団」で収録され、アフレコの時に「鉄十字団」と言い直している)



■第1企画案 「超人タケル&スパイダーマン」■
当初「スパイダーマン」は、「超人タケル&スパイダーマン」という題名を持ち、
聖咲奇(当時アニメ系雑誌『OUT』の編集者)を中心としたメンバーにより考案された。
そして壮大なスケールと、日米にまたがる国際意識を作品に取り入れようという意図のもとに企画された作品が出来上がる。
内容的には、アメリカで猛威をふるっていた、宇宙からの侵略者“パニッカー”
(原作『アメイジング・スパイダーマン』にはパニッシャーというキャラクターが1974年に登場している)が攻撃の矛先を日本に向けたため、
それを追ってアメリカのヒーロー、スパイダーマン(=ピーター・パーカー)が日本に上陸し、
日本の高神タケル(実は古代日本から現代にタイムスリップしたヤマトタケル)と協力して戦うというストーリーで、
スパイダーマンは、マーベルコミックスと同一のキャラクターが登場する予定だった。

■第2企画案 「スパイダーマンのロボット大作戦」■
「超人タケル&スパイダーマン」の企画に修正を加えたものが、次の企画案「スパイダーマンのロボット大作戦」である。
これは前企画から超人タケルを取りのぞき、スパイダーマンは、日本の科学者・山城拓也が、
ガリア星人の能力を偶然受け継いで誕生したヒーローに設定されている。
その代わり、ガリア星人の変形ロボット“ガリアSQ”を登場させている。
また、敵は黒魔術を使う秘密結社“バラ十字団”である。

■第3企画案 「スパイダーマンROB(ロボ」■
三冊目の企画書が、最終的な企画案を記した物で、タイトルは「スパイダーマンROB(ロボ)」。
ロボットの名称が“ガリアSQ”のままで、敵が“紅十字団”になっている他は実作品と同じである。



【1時間版スパイダーマン企画書】
上記「企画案」とは別次元で、吉川進、高久進、上原正三による「1時間版スパイダーマン企画書」が存在する。







<補記>

【放映テレビ局データ】

東京12チャンネル(水曜日19時30分より)
北海道文化放送(金曜日17時より)
東北放送(土曜日16時30分より)
信越放送(月曜日17時より)
新潟放送(水曜日17時より)
北陸放送(月曜日17時より)
中部日本放送(木曜日17時25分より)
関西テレビ(土曜日8時30分より)
テレビ西日本(土曜日18時より)
山陽放送(金曜日17時30分より)
中国放送(金曜日17時30分より)

「東映版スパイダーマン」は全41話だが、リピートが2回(第15、16話)あるので、放映は43回されている。

[再放送]
1981年 東京12チャンネル
1984年 東海テレビ
1990年 KBS京都
1995年 KBS京都
1998年 群馬テレビ
(詳細は未調)



第5話と第31話の脚本
タイトルロゴが違う。

実際に番組で使用されたものは右のロゴ(スポンサーであるポピーが製作したもの)だが、
初期ロゴ(企画者104・久保宗雄デザイン)の方もスパイダーマンが連載されていた
『冒険王』、『テレビランド』等に使われていた時期もあった。




参考文献:『メーキング・オブ・東映ヒーロー2』(講談社編)、『全怪獣怪人 上巻』(ケイブン社)

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