男と女
男は何不自由ない暮らしをしていた。
しかし、心はすさんでいた。
町へ出て、彷徨い歩くことだけが、小さな楽しみだった。
出会った女はいつも、男に何かを与えてくれた。
ある女は、情熱を。
ある女は、よろこびを。
ある女は、幸せを。
ある女は、愛情を。
しかし、男は満たされなかった。

ある時、男は一人の女と出会った。
その女は、何も持たなかった。
自分には自信がないという。
かわりに、男の持つものの中で、もっともいらないものを自分にくれればいいという。
男はおどろいた。
今まで、与えられることしか考えていなかった。
はじめて、男は、自分が助けられていることに気がついた。
(2001.12.9)