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| <hikkiの森>宇多田ヒカルの世界 * FINAL DISTANCE - 1 - セカンドアルバム「Distance」のタイトル曲「DISTANCE」を最初に聴いた時、メロディーのポップな感じから、明るいイメージの曲だと感じた人が多かったようだが、歌詞の意味をよく見ると、このオリジナルの「DISTANCE」も、底に流れているテーマは、「痛く」「悲しい」ものだったと思わせられる。アルバム全体のバランスを考えて、アップテンポの曲にしたというふうに彼女が言っている(注1)ことからしても、彼女の中では、バラードの「FINAL DISTANCE」との両方があって、はじめてテーマの全体が表現できたということになるのではないだろうか。 「distance」とは、「距離」という意味だが、ここでは、特に、人と人との「心の距離」といった、人間関係にかかわる意味で使われている。 どんなに親しい人との間にも、理解できない部分、踏み込めない部分がある。別々の人格である以上、おんなじにならなくてはいけない、というのは正しいことではない。だけれど、それでも大好きなんだ。その大好きだという気持ちを、大事にしていよう。いつかその「距離」を含めて愛することもできるようになれるだろう・・・。 別れによって、もう二度と会えない遠い距離で隔てられてしまった人との間にも、時間はかかるかもしれないが、いつか、心の絆を結ぶことができるようになるだろう・・・。 「FINAL DISTANCE」のプロモーション・ビデオでは、ガラス越しに手を重ね合う二人の姿が出てくる。ここは、この作品のテーマを表現する重要な場面だ。一緒にいたい、けれど、けっして埋められない距離も受け入れなくてはならない・・・。 彼女の作品は、どれも、「個」としてあることの「貴さ」と「悲しみ」にみちている。「FINAL DISTANCE」は、その意味での一つの到達点と言える。彼女は、「FINAL」とは、「最後の」でなく、「一番重要な」という意味だと話している(注2)。 注1、注2・・・「PATi PATi」2001年8月号 □ 2001年08月20日 (矢島瞳) |
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