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| <hikkiの森>宇多田ヒカルの世界 * Wait&See〜リスク〜 - 1 - 「Addicted To You」の頃の宇多田ヒカルは、悲しくつらい日々だったのではないかと、想像される。その時期を、苦しんで乗り越え、いよいよ前に進むべく、新しい宇多田ヒカルの世界を見せてくれたのが、「Wait&See〜リスク〜」だ。 このマキシシングルの発売は、いろいろな意味で大きな冒険であったという。この作品は、ずばり「冒険」がキーワードである。 その「冒険」の詳細については、次回に詳しく考察するとしよう。 ここでは、「Addicted To You」から「Wait&See〜リスク〜」にかけての、彼女の心の過程に注目し、その時期が彼女にとってどれほど大切な時間であったかを、まず振り返ってみたい。 レギュラーのDJをやっていた「トレビアン・ボヘミアン」というラジオ番組で、どういう時に歌詞が書けるかについて、彼女はこんなふうに語っていた。 「たいていね、人生がこう、なんていうのか、完璧っていうか、人生の全部のことがうまくいってる時期っていうのは、歌詞が書けなくなっちゃうんだ。何かがうまくいってない時とか、何か悩みがある時とか、すごくその時期悲しいことが続いてて、なんかもうウワ〜って時期とかになると、歌詞がすらすらすらすら書けて、もう、ラッキーみたいな。それで悲しみがちょっと吹っ飛ぶんだけど、なんかそういう傾向がアーティストって、みんなあるんじゃないかなって、最近思うようになったんだけど、なんか私生活すさんでるとね〜、とっても音楽調子いいし、歌も、歌も調子いいの。」(注1) 「Wait&See〜リスク〜」をつくる作業の間は、まだつらい日々の途中であったはずだ。そうだからこそ、歌がつくれるのである。 そして、作品はできあがった。ここで、一つの形あるものを完成させたことで、彼女の内面も、確実に一歩前進しただろう。 宇多田ヒカルのオフィシャルHPのメッセージで、彼女は「Addicted To You」の頃の写真のメイクが大人っぽくなっているのは、それがこの歌の気持なんだと語っていた。(注2) 大人になりたいけれど、いきなりなれなくて・・・。 自分の「未熟さ」を知ると同時に、それでも「強く」ありたいと自分を力づけようとしている、そんな心理がそのメイクの話からは感じ取れる。 「Wait&See〜リスク〜」が発売された2000年は、宇多田ヒカルの初めてのツアーが行われた年である。 NHK総合テレビで今年の3月24日に放送された「true secret story」という番組の中で、ツアーに関連して、興味深いことを彼女は語っていた。 村上龍氏の「生き方を決めた時から、その人は大人なんだ」という言葉に共感したという話のあと、彼女自身が初めて自分からやろうと言い出したのが、「ツアー」だったんだと明かしている。そして、それは、ツアーの前の冬ぐらいから、やりたいなあと思い始めたのだという。 その時期が、彼女にとって、「大人」へと出発する貴重な時間であったことは、間違いない。 注1: FM802において、2000年2月4日放送分 注2: オフィシャルホームページ、1999年11月2日の書き込み □ 2001年12月15日 (矢島瞳) |
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