アブ・カーディナル44 |
・・・漁師のためのリール |
以前勤めていた会社に、Mという男がいた。 |
(週刊釣りサンデー2000年11月5日号より) |
【筆者による6年後の解説】 ■6年前、はじめて雑誌連載になったシリーズの第1回です。 ■ここに登場するカーディナル4とは、80年代のアウトスプールではなく、ベージュのインスプール。いま売られているカーディナル3の兄貴分に当たります。 ■「M」の年間釣行回数200日は延べ釣行回数です。だから丸200日釣りをしていたわけではありません。それにしたって、このペースで5年使ってやっとベールスプリングが1本折れただけなのですから、普通の人ならまずこのリールを壊すのは不可能ということです。 ■89年の33に関してはベールスプリングの巻き数が減らされていて耐久性が損ねられていましたが、それ以外の3や33はそのようなことはないはずです。44に関しては当サイト「Broke? Broken?/ベールスプリング2」の応力計算より、90年復活版も巻き数は変わっていないと判断されます。 ■いまどきのリールのようにころころモデルチェンジしてしまえば、悪いウワサも旧型といっしょに葬り去れるのですが、ロングセラーや復刻版は一時期の不具合がすべてのものに当てはまるかのように言われていることがあります。だからロングセラー製品ほどその評判を見極めるのが難しいと言えます。でも、それをわかっていない人がメディアでモノについて語ってはいけませんね。まして某誌のように33と44を混同するなんて・・・。 ■「オリムピック(現マミヤOP)がアブに再生産させたもの」と書いていますが、実際そうだったかどうかは知りません。たまたまアブが復活させた時期が一致したのかもしれません。 ■掲載時のサブタイトルは「主張が伝わる逸品」。「漁師のためのリール」は「M」がいかにも漁師な奴だったのでつけたのですが、やっぱり違和感があったらしく編集部で変えられました。 ■カーディナルが「冷たく寂しい」かというと、そんなことはないでしょうね。ミッチェルに比べちゃうといかにも優等生然としたところなんかが当時の私には気に入らなかったのと、一般に名機と言われているものをちょっと皮肉な見方をして独自色を出してやろうてな意識が働いたのでしょう。つまり私はへそ曲がりだということ。 ■魚を釣るための「徹底した合理性」と書いてますが、あの低効率ギアひとつとっても、むしろ合理主義とは反対のものがあるかもしれません。 ■そもそも「M」式の使い方が設計者の想定した使い方かどうか、私は知りません。33や44はストッパーの切り替え力がかなり軽く、中指を伸ばせば“ミッチェル式”の使い方もできます。特に掛けっぱなしにして使うものとは考えてなかったかもしれません。実際のところはどうなんでしょう。 ■それにしても小型の33はともかく、44は用途を考えたらあのギア効率(およびそれを考慮していない短いクランク)はないだろという気がします。私の44がボウズ続きなのは知らず知らずリーリングスピードが変わるからかも。 ■そうそう、表紙に関連してもう一点、「ハンドルが上にあるとキャスト時ベールが返る」なんて馬鹿なリールはインスプールにはありません。むしろ馬鹿でかいゴリ巻きウッドノブの付いた一昔前の国産アウトスプールモデルの話でしょう。それにしたって、まっすぐロッドを振っていればそうそうトラブルは起きないはずです。 |