知っ得/厄介者のブラックバス

 ブラックバスのいる山梨県の河口湖にワカサギを放流すると聞いたとき、冗談かと思った。全部食べられてしまうと考えたからだ。だが、そうでもないらしい。山中湖や西湖でも両方放流しているが豊漁だそうだ。

 バスに対する一部の釣り人からの支持は依然根強い。環境省は05年試行の外来生物法で、生態系などに被害を与える特定外来生物に指定。一方、神奈川県の芦ノ湖を合わせた4湖に特例として漁業権を与えた。

 なぜ、4ヶ所だけに放流や釣りを許可したのか。生業とする漁協があったからだ。山梨県水産技術センターは「ワカサギとの共存は可能」と言う。反面、ほかの場所ではブラックバスの駆除に懸命になっている。特例措置の意義を理解するのは難しい。

 生物多様性条約締約国会議(COP10)が10年に名古屋市で開かれる。多様性を喪失させてきた大きな要因に外来生物の侵入があることは間違いない。議長国として特例措置を続けることに疑問はないのか。

 漁協を非難しても始まらない。とりあえずワカサギが復活し、バスがいなくても生計が成り立つように応援したい。釣り人に対しては「いまどきブラックバスを釣っているのは格好悪い」と感じるような空気を作るしかない。(編集委員・石井徹)
2008年10月15日朝日新聞夕刊より

■いわゆるバス“擁護派”は即座に「ワカサギだって河口湖から見たら“外来魚”だ!」って突っ込みそうです。こういう具合に「ニジマスだって」「ワカサギだって」「ヘラブナだって」と言う人がいますが、芦ノ湖を除けばバスは漁協すら(まさしく「すら」ですが)通さずに放流されて広まったわけで、「だってだって論法」は通らんでしょうね。

■とは思うのですが、なんかムカつきますよね、この朝日のコラム。それに、現実にワカサギと共存できていると書いているのに、何が気に入らんのでしょう。

■朝日新聞に知り合いがいる人から聞いたのですが、朝日の人は「村田基をバスから管釣りに追いやったのはうちの最大の成果だ」って言ってるとかです。

■こういう風に自分たちの価値観を押し付けて、社会を「正しい」方向へ導いてやろうという傲慢さがこの新聞のいやらしいところなんでしょうね。

■朝日といえば大阪の橋下徹が、「弁護士資格を返上したら」という社説にキレてぜんぜん関係ないところで「朝日新聞はなくなったほうがいい」なんてほえてるそう。場違いなところでいきなりまくし立てるあたりすでにイッちゃってるのか、ネット右翼みたいな支持者への計算づくのアピールなのかは知らんけど、どっちもどっち。やってろやってろ。

■記事に戻ると、このコラムは「環境エコロジー」というページに載せられたものです。漁協が放したとはいえワカサギを認めるならここに載せるべきコラムではないし、「エコ」(という言葉自体なんだかうさんくさいが)で語るべき問題でもないでしょう。あえて言うなら、日本の風景にワカサギとバスのどっちがふさわしいかという文化(もっとぶっちゃけて言えば好みか)にかかわる話ではないでしょうか。

■私自身あまりバスが日本の水辺に似合う魚だとは思いません。でも、芦ノ湖や富士五湖は30年以上昔の釣りの本でさえバスが紹介されてます。(芦ノ湖以外はおそらく密放流だったという)スタートはともかく、ここでのバスはもはや日本の釣り文化の一つになっていると言ってもいいのではないかと思います。

■なんだかこの編集委員、そのうち「このエコの時代に生き物を虐待する釣りなどしているのは格好悪い」とか言い出しそうだね。やだやだ。


■で、後日河口湖漁協のHPをのぞいたら、「10月20日の記事」には誤解と間違いがあるとして、朝日新聞に厳重抗議中と書いてありました。上の記事が時間差で載ったのか別の記事かはわかりませんが、内容は同じものと推測されます。「応援したい」と言われている当の河口湖漁協が迷惑がっているのです。

■これに似たことを思い出しました。もう何年も前ですが、バス釣りブームが下火になったころ、朝日新聞経済面にダイワ精工の決算が載っていました。利益が大幅に落ちた決算に対して朝日が付けた見出しは「ブラックバスに利益食われた」でした。一般の人が見出しだけ見たらバスが他の魚を減らして釣り具が売れなくなったと思うでしょう。

■しかし、この時期釣り具メーカーの利益が減ったのは、朝日新聞をはじめとしたエコな方々のおかげでバス用品が売れなくなったのが理由だったのではないでしょうか。(バスで金を儲けるのがいいか悪いかは置いといて)釣り具メーカーの利益を食ったのは当の朝日でしょう。

■こじ付けでもなんでもいいから言いたいことをぶち上げる。少々内容がおかしくても刺激的な言葉で大衆をひきつければOK。朝日新聞って、橋下徹や中山成彬に似ていますね。