脱ダム高まる中 「新たに100基必要」国交省が試算

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 全国の1級河川でおおむね100〜200年に1度あるような規模の大洪水を防ぐためには、計画中のダム以外にもさらに100基以上造る必要があると国土交通省が試算していることがわかった。各地でダム計画に反対の声が上がるなか、論議を呼びそうだ。

 国交省は、97年の河川法改正を機に、1級河川109水系について、それまでの長期目標の見直しを進め、「河川整備基本方針」を順次策定。河川ごとに「100年に1度の大雨」など対応すべき治水安全度の基準を決めている。基本方針は本年度中にすべて出そろう見込みで、現時点で策定済みの104水系の試算を朝日新聞が入手した。

 国交省の試算によると、大雨が降った際に、ダムや遊水地などの「洪水調節施設」でため込む必要があると見積もる水量は、東京ドーム約6千杯分にあたる計76億9800万トン。34億4800万トンはすでにあるダムなどでまかなえており、14億4200万トンは建設中または計画中の約150の施設で対応する。

 しかし、4割弱にあたる残る28億700万トンは新たな施設による対応が必要とした。平均的なダムの100基以上分に相当する。

 流域面積が国内最大の利根川水系では、3億8千万トンを上流部にため込む想定だが、完成施設分は約3割の1億1500万トン。必要性を疑問視する声が根強い八ツ場(やんば)ダム(群馬県)では6500万トンをカバーする予定だが、それでも全体の5割を超える2億トンは未対応としている。

 9月に地元の熊本県知事が反対表明した川辺川ダム計画のある球磨川水系では、同ダム計画を中止すれば1億600万トンの8割以上にめどが立たないことになる。

 国交省は今後、直近の20〜30年で取り組む具体的なダム計画などを盛り込んだ「河川整備計画」をそれぞれの水系で定める。数十年ごとに整備計画の策定と実行を繰り返し、基本方針に定めた長期目標を達成するという。(松川敦志)

■堤防強化が先
 今本博健・京大名誉教授(河川工学)の話 基本方針が想定するだけのダムを今後すべて建設できるとは思えない。国民が求めるのは「絵に描いた餅」のような壮大な計画ではなく、現実的な対策だ。現実を直視した治水政策を真剣に模索すべきときがきている。日本中をダムだらけにしても、堤防が脆弱(ぜいじゃく)なままでは意味がない。ダム偏重を改め、多くの水を安全に川に流せるよう、各地の堤防強化を推進するのが先だ。

2008年12月10日asahi.comより

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