■最近むかつくのは、テレビに竹中平蔵がへらへら笑いながら出てくるのをよく目にすることです。アメリカ発の新自由主義・市場原理主義を持ち込んで日本をすさんだ社会にしたことに対し謝罪ひとつしないふてぶてしさに、怒りを通り越したものを感じます。

■そんなわけで、こいつが出てくるとさっさとチャンネルを変えてしまうのですが、4日の「テレビってヤツは !?」は見てしまいました。

■でも、やっぱり気分が悪くなっただけでした。とぼけた顔してへらへらしているのでつい甘く見がちですが、ものすごくディベートがうまい。(なぜか)反対側の立場で出ていた萩原博子と室井佑月は簡単にやり込められていました。

■学者先生ですから頭がいいのは当然ですが、次々に言葉を繰り出して相手を圧倒する様を見ると、頭の回転も相当速いのがわかります。やっぱり優秀な人なのでしょう。でも、だから新自由主義など信奉できるんだろうなあと思いました。

■人間の能力にはピンからキリまであります。それなのに機会さえ平等なら結果は平等でなくてもいい、格差はあって然るべきという新自由主義を持ち込んだら、ひどいことになるのは当然です。

■竹中平蔵みたいな超エリートはそこがわからないのではないでしょうか。人間は高校大学と進むうちにまわりが自分と同じくらいの能力の人ばかりになります。これが社会に出ると、やはり人間はさまざまだということに再び気づきます。小中学生のころを思い出してみればいいでしょう。

■しかし、まわりがずーっとエリートだらけの学者先生はそうならないのでしょう。だから、成績の悪い人や仕事のできない人は努力が足らないだけ、ひどい環境で働かされたり簡単に切られたりするのは自己責任という、新自由主義に染まれるのではないかと思います。

■これはすなわち、人間がわかっていないということです。人間をわかっていない人が理論だけで政治をやっていたのです。これは恐ろしいことです。

■新自由主義の改革を進めたものの、「転向」して懺悔したのが中谷巌という人です。この人の「資本主義はなぜ自壊したのか」を読むと、新自由主義が一種の宗教だったことがわかります。

■かつて開高健はその著書の中で、共産主義を「未熟な宗教」と言いました。もしいま開高健が生きていたら、新自由主義を「幼稚な宗教」とでも言ったことでしょう。

■ここ何年か、中学校や高校の校長に教育とはまったく関係のない民間出身の元企業人をすえてみたり、小学生にまで株や投資の勉強をさせたりと、とても正気とは思えないことまで行われたものです。これらも金儲けに長けてさえいればいいという幼稚な宗教に毒されたものだったのではないかと思います。

■「テレビってヤツは !?」では、かんぽの宿疑惑にも話が及びました。しかし、荻原博子が「オリックスの宮内会長が郵政民営化にかかわった」と言ったのを、竹中平蔵はそうした諮問委員会にはかかわっていないと指摘、番組的には竹中平蔵が討論に勝ったような形になってしまいました。

■直接郵政民営化にかかわっていなくても、宮内氏が規制改革会議の議長として一連の民営化バンザイみたいな流れを作った人であることは明らかです。そこへかんぽの宿が安く売られるのは、鳩山弟でなくても怪しいと思うのが普通でしょう。近い立場にいたあの「過労死は自己管理の問題」発言の奥谷禮子の会社が郵便局員の研修を受注しているなど怪しい動きは他にもあります(「小泉規制改革」を利権にした男宮内義彦」より)。

■しかし、これがテレビだと、討論で勝った側が正しいということになってしまいます。はたして番組サイトには竹中平蔵の言うとおりだみたいな書き込みがいくつかされていました。

■テレビの討論(まがい)番組は本当に罪深いものです。90年代に宗教団体が凶悪事件を立て続けに起こしたことがありましたが、あのころその宗教団体の連中をじゃんじゃん出してしゃべらせていたのもテレビです。新自由主義も「宗教」だとすれば、さしずめ竹中平蔵は当時の「ああ言えば上祐」でしょう。

■そう考えると、あのときでさえ上祐ギャルなんていう追っかけが出現したわけで、竹中平蔵をすごいなんて思っちゃう人が出るのも当然といえば当然なのかもしれませんけどね。

■なんてことを書いていたら、最近麻生首相が「郵政民営化には反対だった」なんて言ってしまい騒ぎになっています。さらに「(2005年の郵政選挙で)ほとんどの国民は民営化の内容について知らなかったと思う」と発言し、マスコミはいっせいに批判しています。

■でも、後のほうの発言って、そのとおりじゃないですか? 刺客だくノ一だ造反だホリエモンだなどのバカ騒ぎで政策が議論されていたとは到底思えません。「純ちゃんがんばって〜」なんて手を振っていたオバサン連中がそんなこと分かってた訳ないでしょう(問題発言?・・・ええわ、このサイトの読者に女性はまずおらん)。

■麻生発言は自分も当時閣僚だったわけですし立場を考えると不用意でしょうけど、そうめちゃくちゃなことを言っているようには思えません。でも、なんだかマスコミの批判ぶりを見ていると、民営化見直しそのものがけしからんみたいな感じすら受けます。

■朝日新聞は鳩山弟のかんぽの宿への対応を「横やり」とまで書いています。以前サンプロに竹中平蔵が出たときも田原総一郎以下出演者はうなずいて聞くばかりの独演会でした。マスコミは2005年郵政選挙でばかげた報道を繰り返した過ちを認めたくないか、そうでなければマスコミ人はいわゆる勝ち組ですから新自由主義を支持しているのかもしれません。

■そう考えると「テレビってヤツは !?」に勝負にならない反対派の論客とともに竹中平蔵を出演させて独演会以上の効果を演出したのも、確信犯的行為だったのかもしれませんねえ。