アブ・カーディナル800 |
釣り好きはいるか? |
(こっそり書き足す筆者の解説および昔話) ■鱒の森の連載「Reel The Reel」の幻の第2回です。終了の理由はご自由にご想像ください。 ■あれは高校の2年か3年だったと思いますが、静岡でフィッシングショーがありました。冒頭は、そこに(学生らしく)普通電車で行ってあちこちのブースを回ったときの話です。他にもカーディナルC3/C4のデザインが気にいらんとか言いたい放題言った記憶があります。 ■関係ありませんが、いまシマノはフィッシングショーでスカッとしたシャツなどを着ていますが、当時は水色のはっぴでしたね。いかにも大阪のメーカーやなあと思ったものです。 ■アブに釣り人がいなかったという話ですが、原氏によると800に続いて出た600に採用されていたベイトランナーについても、当時のアブにもデザイン会社・ヘンリードレイファスにも明確な使用法を説明できる人はいなかったとか。 ■ベイトランナーとは、ダイワでいうコイクラッチとかアオリクラッチです。リールにしたのはシマノが先で、国内ではトライトンシースピンというリールにノガサンレバーだったかニガサンレバーだったかという名前で採用されました。本来スプールをフリーにして魚にエサを食い込ませる機構ですが、当時そういう使い方は日本になかったので、営業企画が知恵を絞り、ヒラマサに竿を締め込まれたときベイトランナーレバーでラインを送って体勢を立て直すという使い方を提唱(?)したのでした。 ■ベイトランナーは欧州のカープフィッシングなどで好評だったのですが、実はダイワ先生が特許を先に取得されておられまして、日本で作れなくなってタイの五十鈴で組んだりしていました。他にもウォームシャフト平行巻きの配置やレバーブレーキなど、ダイワさんにはかなり特許でいじめられたものです。 ■話を戻すと、その(本来コイ釣りなどに使う)ベイトランナーが、たしか最小モデルにまで採用されていたのですから、80年代のアブってすでに変になってたんでしょうね。釣り好きどころか釣りを知ってる人もいなかったのです。 ■「釣り好き」といってもどんな釣り好きかが難しいところでしょう。たとえばリールのレッグを小指と薬指で挟み、ベールを左へ開いて投げる人がいます。釣り人としてはエライんですよ。重量バランスの悪さや人差し指の届きにくさを持ち方でカバーし、ローターブレーキなしでもフェザリングできる方法を編み出してるわけですから。 ■でも、メーカーの人がこれじゃあ困ります。人間がリールに合わせちゃってるわけですから。 ■契約プロがたくさんいればいいかっていうと、あんまり期待しないほうがいいでしょうね。往々にして釣りのエキスパートは魚を釣ることが第一で、そのためには上に書いたみたいに使いにくいリールでも使い方を変えて対応してしまいます。私なんかは90年代初めスピニングリールに瞬間ストッパーが採用され始めたころ「使いにくい、とんでもない」と思いました。でも、98年のシマノフリクションベールまでこの状況は放置されました。この間この問題を指摘したテスター、アドバイザーはいたのでしょうか? ■そうなると、やっぱりリールの機構を理解しつつ、基本の使い方を押さえ、自らも釣りをする人が社内にいないとダメなのです。アメリカのアブのHPを見るといっぱいバスプロがいるみたいですが、それだけではダメなのです。 ■もっとも、釣りとリールが好きでも、考え方が妙に凝り固まっているわ、論理的な思考はできんわ、機械化卒のクセに材料のことは知らんわ図面もろくに描けんわという、私のような人が一番困るのはいうまでもありません。オチにもならんな・・・。 |