国交相「143ダム見直し」 川辺川中止も明言

 民主党が政権公約で建設中止を掲げた川辺川ダム(熊本県)について、前原誠司国土交通相は17日の就任会見で、八ツ場(やんば)ダム(群馬県)に続いて中止を明言した。ダムに依存した河川行政の全面見直しにも言及。「八ツ場ダムと川辺川ダムはその入り口」として、建設中または計画段階の全国143カ所のダム事業を見直す考えを示した。

 鳩山首相もこの日、二つのダムの建設中止について、「決めたことはやりぬく姿勢を貫くことは非常に大事だ。特に無駄遣いをなくすというのを、国民の皆さんは非常に期待している」と語った。

 前原国交相は会見の冒頭、「税金の配分を大きく変えていかなくてはいけない。少子長寿化、莫大(ばくだい)な財政赤字、人口減少の現在において、どこに優先的に税金を使うべきかで考えれば、公共事業の新規投資は減らさざるを得ない」と基本姿勢を語った。

 その上で、建設中か計画中のダムや放水路が140以上あるとし、「我々はこの事業仕分けをこれからやっていかなくてはならない」と事業見直しに言及。「八ツ場ダムと川辺川ダムは今後の河川行政、公共事業のあり方を見直していくうえでの入り口との認識を国民の皆さんにはもっていただきたい」と語った。

 八ツ場ダムについては、19日からの5連休中に群馬県長野原町の建設予定地を訪問し、地元住民と生活再建策やこれまでの経緯について話し合う考えを示した。計画浮上から57年がたち、総事業費が当初の倍の4600億円に上り、民主党は「時代に合わなくなった大型公共事業の典型」として中止を公約に掲げた。

 川辺川ダムは計画から43年たち、農業利水、水力発電、治水の三つの目的のうち、利水需要がなくなり、発電は事業者が撤退。総事業費が当初の350億円から2200億円に膨れ上がっている点を指摘。熊本県の蒲島郁夫知事も昨年9月に白紙撤回を表明しており、「事業の見直しは当たり前のことではないか」とした。

 また、「計画を変更する以上、自治体や住民に対する補償措置を、法的な枠組み、財政的な裏付けを含めて行う」とも語った。

 民主党は総選挙前に示した政策集で、計画中または建設中のダムについて、「いったんすべて凍結し、一定期間を設けて、地域自治体住民とともにその必要性を再検討する」と記している。ただ、前原国交相は17日夜、現時点では全ダム事業の凍結は「考えていない」と語った。

 前原国交相は今後の河川行政について、97年に改正された河川法の「住民意見の反映」と「環境への配慮」の二つの理念を挙げ、「できるだけダムに頼らない河川整備を考えていきたい」と述べた。ただ、「ダムを全否定しているわけではない」「ダムの必要な河川整備もある」とも語った。(津阪直樹、歌野清一郎)

2009年9月18日3時11分 asahi.comより

■あったりまえの話((C)石原極右都知事)です。前原誠司という政治家自体はタカ派だったりかつて「小泉改革は手ぬるい」と言った新自由主義者だったりで好きではありませんが、これはなかなかはっきりしていていいですね。

■ダムを止める止めないで思い出すのは、社会党です。1995年、長良川河口堰の建設に反対の署名までしていた同党の野坂建設大臣はまんまと建設官僚に洗脳(と当時の朝日新聞は書いた)され、「国のやることに間違いはない」とまで言って、河口堰のゲートを下ろしました。そればかりか、それまで地元メディアの選挙前の政策アンケートで河口堰反対と言ってきた社会党議員までそろって河口堰は必要だと言い出し、一体この党は何なんだと思ったものです。

■このサイトを見ている人はうすうす(はっきりか)感じているでしょうけれど、私はけっこうおつむがサヨクな人ですが、これ以来死んでも社会党には投票しないことにしました。その残党の社民党や一部が合流した民主党(社民に残った連中よりこっちのほうが多いのか?)も同様で、今回の衆院選挙も小選挙区(自民、民主、幸福しか出ていなかった)は迷いに迷ったものの最後には河口堰のウラミで白紙で出してきたくらいです。

■前原国交相の発言に対し、「地元」はいっせいに反発しているそうです。長良川河口堰や徳山ダムにしてもそうなのですが、美しいふるさとを破壊しようという「地元」って、何なんでしょうね。長良川河口堰建設が問題になっていたころ私は大阪(シマノのある堺)に住んでいて、自分が誇りに思っていたふるさとがふるさと自身の手で壊されていくのがものすごく悲しかったものです。

■90年にこっちへ帰ってきて「地元」が河口堰推進もしくは無関心なのにいっそう愕然としました。ある町の川漁師は「河口堰なんてどうでもええ。銭(漁協への補償金)さえもらえりゃあな」と言い、河口堰推進で有名だったその町の町長の親族からは、町長が「俺が補償金をもらってきてやるから今のうちに漁協に入れ」と町民に言っているという話も聞きました。長良川河口堰建設反対の署名を集めていると「署名をたくさん集めると反対する会の中で偉くなれるのかい」と言われ涙が出そうになったこともあります。

■ダムを推進しているのは必要だと言ってしまった手前前言を翻すわけにはいかないという政治家の面子や、ばら撒かれるさまざまな補償金、事業費の3%が(いままでなら与党自民党への)政治献金となってバックされる暗黙のシステム(竹中工務店OBの証言)によるものでしょう。

■前原国交相や民主党の方針に反発している勢力の反撃は激しいものになるでしょう。特に“3%”を当てにしている連中やもらってしまった奴らは必死のはずです。実際うちの選挙区の自民党・棚橋泰文は「八ツ場ダムのあたりではすでに建設業者が倒産して失業者があふれている」と支持者に吹いて回っています(ついでに言うとこの男は「社民党辻元は過激派とつながっている」と言ったこともあるそうで、支持者の前ではけっこうめちゃくちゃなことを言っているらしい)。現実に建設業に流れる公共事業費で食っている地方(岐阜はもろそういうところ)は多いですから、効果は絶大でしょう。

■この攻勢に民主党は耐えられるでしょうか。しかし、一説によると河口堰反対を翻してゲートを下ろした社会党は全国で100万票を失ったとも言われています。もう後戻りはできないでしょうね。