首相、消費増税棚上げ 議員削減「年内合意を

 菅直人首相は臨時国会が召集された30日、首相官邸で記者会見し、消費税率引き上げについて「(民主党)代表選で約束にするという扱いは考えていない」と述べ、参院選の敗北を受けて、代表選の争点にはせず、当面は棚上げする考えを示した。また、国会議員の定数削減案を8月中に党内でまとめ、12月までに与野党合意をめざす考えを明らかにした。
(中略)
 その上で「国会議員自身が身を切ることも必要」と表明。「衆院の定数を80、参院の定数を40削減する方針に沿って、党内意見を取りまとめてほしい」と、30日の朝に民主党の枝野幸男幹事長、輿石東参院議員会長に指示したことも明らかにした。
(以下略)

2010年7月30日19時39分 asahi.com

■最近メディアは国会議員減らせの大合唱です。ポピュリスト菅(民主党が高速無料化を最初に言い出したのもこの人が前代表だった2003年のこと)も、それに乗ってこんなことを言い出しました。

■テレビに出てくるコメンテータだのキャスターだのといった人たちも、既成事実であるかのように「定数削減」「議員自身が身を切れ」などといいます。なんだかかつての「規制緩和」「郵政民営化」「痛みに耐える」を思い出します。

■そもそも、前提とされている「日本の国会議員は多すぎる」というのがでたらめです。イギリスの人口は日本の半分の6000万くらいです。しかし英国下院の議員定数は日本の衆院定数480より多い650です。これは例外ではなくて、同じく日本の半分くらいの人口のフランスも日本より多い議員数です。このほかの国と比べても、日本の国会議員は異常に少ないくらいです。たまに人口3億のアメリカの下院定数が435なのを例に挙げる人がいますが、むしろこれは特殊な例です。アメリカは州ごとに憲法があるような国なので、国会議員の仕事が少なく、人数も少なくていいのです。

■と、私でも知っていることを、テレビなどに出てくる“知識人”のみなさんは知らないのでしょうか? 安易に「日本の国会議員は多すぎる」と発言する人はいても、いま挙げたような例を示してちょっと違いますよと言った人を見たことがありません。

■陰謀論めいてきますが、マスコミの後ろに何か巨大な力が動いているのではというのは、考えすぎでしょうか。

■推理小説のセオリーで、事件が起きたとき誰が得をするのか、というのがあります。定数削減をやったとき得をするのは誰でしょう。「身を切る」なんて言ってますが、減らすのは比例代表の方向ですから、民主党や自民党は身を切るどころか願ったりかなったりなんですね。

■比例代表を減らす、さらには廃止してしまえば、公明党、共産党、社民党、国民新党、新党日本その他の中小政党はまず間違いなく全滅します。民主党は郵政問題で国民新党に、普天間問題で社民党に振り回されました。いま野党の自民党にしてもちょっと前まで組みたくもない公明党と10年以上も連立を組まされていたのです。議員定数削減のドサクサで比例代表をなくしてしまえば、これら目の上のこぶ政党をすべて抹殺できるのです。

■そこで出てくるのが、官房機密費です。野中広務元官房長官が暴露したところでは、多額の金がマスコミや政治評論家に渡ったとされています。しかし、テレビや大新聞はそろってこの問題を無視したまま、つまり否定できていません。官房機密費に関して民主党は、政権交代を機に用途を明らかにするといっていました。しかし政権についたとたん、その話はなしになりました。機密費を活用する側にまわったということでしょう。

■利害の一致した民主党と自民党が裏で手を結び、機密費に汚染されたマスコミを使ってやっているのが、今の定数削減キャンペーンではないかと思えてきます。

■選挙制度に関しても、メディアの報道姿勢は不可解です。比例代表の復活当選を「ゾンビ議員」と揶揄する人はいても、小選挙区制のいびつな議席配分に疑問を呈する人はいません。少数意見の尊重という制度の趣旨を考えれば、復活当選になんらおかしなことはないのですが、選挙制度を詳しく知らない一般人にこういう話を聞かせたら、どうなるでしょう。メディア側の人間にもはや一般人レベルの知識や認識しかないのであれば話は別ですが。

■さらに考えると、先の参院選挙でタレント候補が乱立したのも、民主・自民の作戦かもしれません。タレントばかりの比例区なんていらないじゃないかという世論を作り上げるためです。

■こうしたキャンペーンによって、比例区廃止、完全小選挙区制になれば、民主・自民は万々歳です。一見対立を演出していますが、例えば憲法改正や企業減税とセットの消費税増税など基本政策は同じです。選択肢があるように見せかけて、実は裏で手を結んだ二大政党による独裁体制が完成します。夏らしい怪談です。

■と、背筋がぞっとするような陰謀論を考えてしまったわけですが、前出の野中元官房長官はこんなことも言っているそうです。「鳩山前首相は、アメリカから、普天間の辺野古移設を決めて小沢一郎を道連れに辞任するようにいわれた。私はそれを外務省の元高官から聞いた」。

■マスコミの偏向報道(といっていいでしょう)を考えたとき、アメリカをキーワードにすると、民主・自民共謀説よりも、しっくりきてしまいます。

■選挙制度改悪で社民・共産や国民新党をつぶすのは、アメリカから見ても好都合でしょう。普天間のごたごたでは、(メディアの報道もあって?)できないことを約束した鳩山が悪いということになりましたが、流れによっては反米感情が高まる事態だってあったはずです。郵政民営化は年次改革要望書によってアメリカから要求されたものです。

■メディアによるみんなの党に対する異常なえこひいきも説明がつきます。小泉構造改革・新自由主義の本家はアメリカです。

■日本はやっぱりアメリカの属国みたいです。