UFMウエダ スーパーパルサーCSU60L/C
アマゴからイトウまで

 小学生のころ、釣りに関する本ならなんでも読んだ。

 最初は「釣り入門」とか「ルアー釣り」のような入門書を、何度もぼろぼろになるまで読んだものだ。やがてそれでは満足できなくなり、大人が読むような(?)、ハウツーものを読むようになった。教科書的なものではなく、裏技やちょっとした秘訣、エッセイなどを含むものである。

 そんななかで、いまでも心に残っているものがある。

 「釣り人は、あまりにもメーカーに踊らされていないか? メーカーは渓流竿だ清流竿だと、次々に新製品を出してくる。しかしそれに乗せられて竿を買う前に、それが本当に必要か考えるべきだ。たとえばすこし先調子の清流竿なら、渓流の釣りに使えるはずだ。ふだんオイカワやウグイを釣っている釣り人が、おなじ竿でイワナやヤマメを釣ってこそ、それらの違いがわかるはずだ。新しい竿を決めるのは、それからでも遅くない」

 当時小学生で釣り具が思うように手に入らなかった――しかし本の知識で欲しい物だけはたくさんあった――僕は、大変勇気付けられたものだ。

 UFMウエダ・スーパーパルサーCSU60L/Cは、87年に購入し、いまでも使っているスピニングロッドである。

 いまでこそUFMウエダはサクラマス用ロッドに代表される高級品メーカーになってしまったが、この頃の製品はいたって控えめなデザインで、実用主義的イメージが強かった。

 象徴的なのがアンサンドフィニッシュのブランクだ。塗装を省いたこの仕上げは、前工程であるブランク研磨を行わない。だから、最外周のカーボン繊維が傷つかず、ブランク本来の性能が発揮される。ブラックフレームのSiCガイド、スライドリング式コルクグリップの外観も控えめで、好ましく感じられる

 CSU60L/Cは、6ftライトアクションである。僕のような少々古い者には、これくらいが標準のロッドなのである。じつはこれが、このロッドを買った理由だった。何にでも使える、普通のロッドが欲しかったのだ。

 しかしこのロッド、決して普通のロッドではなかった。CSU60L/Cは、恐ろしい弾性と、その素材を活かしきる絶妙のテーパーを併せ持つ、すばらしいロッドだったのだ。

 買ってすぐ、揖斐川下流で試し振りをすることにした。ウグイでも釣ろうと3.5gのスプーンをキャストして、度肝を抜かれてしまった。CSU60L/Cは、ブランク全体をぐんとしならせたかと思うと、次の瞬間弾丸ライナーで小さなスプーンを弾き飛ばしたのである。そのスピードは、その頃所有していたどのルアーロッドともレベルが違っていた。

 この日40cmのナマズを難なく上げたこのロッドは、その後、渓流のアマゴに、揖斐・長良川のサツキマスに、琵琶湖のバスにと、オールラウンドに活躍した。

 カタログでは、渓流用のロッドということになっていたが、そのパワーのおかげで30cmくらいのバスなら、軽々とごぼう抜きするほどだった。では硬いだけかというと、前述したように、3gくらいのルアーでも、見事に飛ばしてしまう。反発力の強さと、バットから曲がるスローテーパーが、うまく作用している。当然渓流にも十分対応した。渓流というとウルトラライトのイメージがあるが、渓流ルアーはほとんどが向こう合わせだから、むしろこのくらいのパワーが合理的なのだ。

 それでは釣り味が悪いかというと、そんなことはない。むしろ魚のノッキングを、ゴツッゴツッと伝えてくる。カーボンの場合、中途半端にやわらかいロッドのほうが魚のファイトを吸収してしまい、釣り味が悪いことがある。

 このロッドがその力を見せつけたのは、89年の猿払川だった。50cmのイトウ――イトウとしては小さいけれど僕が釣ったトラウトの中では最大だ――を、本当に何事もなく、引きずり上げてしまったのである。

 ところで、いまどきのルアーロッドである。とにかく、その種類の多さには恐れ入る。バスロッドには、使うルアーの種類だけ専用ロッドがある。僕なんかトラウトとバスでロッドを使い分けるのすら、理由がわからない。

 どうやらこれは、ルアーロッドだけではないようだ。テレビの釣り番組を見ていたら“タチウオロッド”というのが出てきて驚いた。それで改めて各社のカタログを見てみたら、あるわあるわ。対象魚の数だけロッドがある。

 今の釣り人はたいへんだ。

(2001年「週刊釣りサンデー」より)