前のページで、アルミボディと樹脂ボディに大きな差はないと書いたが、海用大型モデルは、アルミが主流だ。脚のたわみにくさがより重視されるのと、サイドカバー剛性がギア強度に影響してくるためだ。

 今年のシマノは、高剛性コンセプトを、「HAGANE」と表現している。ただし、これは鋼製ということではなくて、鋼のように強靭なものということである。

 ところで、30年くらい前のシマノで、「釣り具の人間は『鉄』いいおるからかなわんなあ」と自転車部門の人がいう、という話を聞いたことがある。

 リールはサビの問題があるため、ステンレス以外の鉄系材料は、安い材料が一部に使われるだけだ。そのため、釣り具部門では、ステンレス以外の鉄系材料をまとめて「鉄」ということがあった。そういう釣り具部門の人に自転車部門の人が「この部品はなんや」と尋ねると、「鉄です!」という答えが返ってくる。そして、鉄の種類を聞きたかった自転車の人はずっこけちゃうのだ。

 キャッチコピーは一瞬引っかかる部分があった方がいい。だから、アルミでも「HAGANE」というのはなかなかおもしろいと思う。

 現在、シマノ社内で、

「『HAGANE』って、何でできとるんや」

「アルミです!」

という会話が交わされているかどうかは不明である。