C300の新平行巻機構

 前のページで出てきた新平行巻機構。なぜフラットに巻けるのか、図を描いて考えてみました。前のページにも書きましたが、元はドイツ・ダム社の特許だそうです。

いまさら追記:ダム社云々は数年前にシマノのH氏に聞いたんだけど、たまに彼はウソを教えるんやね、ステンワンピースベールは細いほうからローラー受けを作るとかさ。だから、ダム社のくだりは怪しいです。シマノがいまだS字カムをそのまま使ってないところを見ると、案外ダイワの特許とか・・・。(2005/8/26)

新平行巻き機構
 カーディナル300シリーズの新平行巻機構です。赤ラインがオシレーションスライダーの溝、紺色がオシレーションギアのピンです。溝をクランクさせることでスプールを等速往復させます。 

従来のギア方式
 まず、従来の方式です。オシレーションスライダーの溝がストレートな場合、スプールの上下の死点に近づくにしたがって、スプールの速度が落ち、糸が密巻きになります。
 そのため、スプールの端で糸が盛り上がってしまいます。
 左の図でも、サイドに行くほどスライダーの軌跡が密になっているのがわかります。特に0から3までと、9から12までが密になります。

新方式
 同じように作図してみました。上の図より、明らかに軌跡が等間隔になります。
 従来式で密になりがちな9から12の部分では、傾斜部分の効果で、スライダーが押し出され、間隔が密になるのを防いでいます。
 反対に死点から遠ざかる場合、逆の効果が出てしまいそうですが、そうはなりません。これは、ギアの死点とスライダーの死点がずれているからです。0から3は、すでにギアの死点からずれてスタートしているので、スピードが落ちないのです。
 さらに、上下の図はギアの直径を同じで描いていますが、スプールの往復幅は新方式の方が大きくなります。これもメリットです。

 これはコロンブスの卵です。すばらしい。
 クロスギア方式の場合、クロスギアの表面に硬質のメッキが必要になります。クロスギアピンにも硬化処理が必要で、そのどちらの処理が不十分でも、耐久性に重大な問題が生じます。品質の維持が大変なのです。
 これに対し、この方式は、従来のギア方式と同じですから、亜鉛ダイキャストのギアとスライダーでOKです。品質的な問題が生じにくいのです。

 もちろんコストはクロスギアとは比べものにならないくらい安い。従来方式とまったく同じです。
 リールのお尻が大きくなりますが、部品は少ないので見た目ほど重くならないはずです。しかも、キャスト時の重量バランスを考えると、お尻が重いのはむしろ有利になります。お尻の重いリールは、キャストがぴたりと決まります。

 この方式は、クロスギア方式に取って代わるかもしれません。高度な処理や技術がいりませんから、どこででも作れます。もしかすると、メイドインジャパンに終止符を打つ機構かもしれません。 (2003/5/29)

AbuGarcia