カーディナル3X
 いやあ、トラウティスト18号のカーディナル特集はよかったですな。特に竹中とかいう人のがいい。読んでたらカーディナルが欲しくなって買ってしまいました(笑)。
☆「89年」と書いている部分は92年の間違いです。(2009/6/29訂正)

カーディナル3X
 03年型33/3に続いて出てきたモデルです。4Xなど上のサイズにあったハイスピードバージョンを3に設定したニューモデルです。

 自重225g、スプール径44mmの2000番サイズは33/3と同じです。

 箱にはSWEDENとありますが、名古屋製のような気もします。ま、どっちでもいいでしょう。日本人がスウェーデン国粋主義になることはないですからね。

 最大の特徴は、Xの示すハイスピードギアです。33より3の色のほうが好きという人はいそうですが、色が違うだけで33に加えて3を買うのももったいないな・・・でもギアが違うなら。そういう人もいるでしょうから、うまい企画でしょうね。私がこのパターンだし。

 おそらく昔のシリーズに「3X」がなかったのは巻上げ力不足でしょう。52などは逆に4.5にギア比を落としているくらいです。それに33/3はけっこう大口径スプール(シマノなら2500クラス)で巻上げが元々速いのですね。

 それでもいまの日本ではカーディナル33/3は渓流で使われるのが多いはずですから、このハイスピードは有効かもしれません。

 ひねた見方をすれば、4Xをいま作ろうとしても44を作ってないから3Xしかやりようがなかったともいえますが、いま4X(44でも)を作っても売れないでしょうしね。


回転バランス対策
 ハイスピード化にともなって回転バランスを改善しようとしています。ベールアーム固定ネジを真鍮からアルミにしています。

 反対側の支持部は33に対してネジの頭を厚くして重くしています。

 ぶんと回すと、重心の高いラインローラー側が外に振り出すため、それを見込んで反対側に重さをもたせたわけです。

ハンドル
 「よりオリジナルに忠実な」フラットでカシメ固定のノブです。このサイズだとこのノブのほうがいいかな。ただ、止め方はネジのほうがゴミが入っても安心な気もします。オリジナルといっても3Xの「オリジナル」はもともとないのだし。

ベールスプリング
 03年モデルの続きですから、スプリングは6巻きに戻っています。ただ、両方の支持部のスプリングともグリスは付いていませんでした。使う前に塗っておきましょう。

巻き上がり
 仏の顔もなんとやらの後ろ巻きです。私の買った03年型33よりは少しマシっぽいですが。「リールには個体差がありますが」ということわりは、このシリーズにはいらないかも?

 ときどき、「30年前の設計だから」なんてことを言う人がいますが、糸が均一に巻けないのは30年前だろうが50年前だろうが単なる不良品ですぞ。

 ちらと追記:むかーしリールを設計していた人によると、70年代の前半までは「水平ないし○mm後ろ巻き」みたいな規格の会社もあったそうです。後ろ巻きがトラブルにつながるという認識がまだなかったのでしょう。でも、仮にそんな時代があったとしても、いま同じことをやってはあかんわな。



 後ろ巻きの原因のひとつでもあるローターの軸方向ガタを測定したら0.32mmもありました。20年前のシマノのガタ限度規格をダブルスコアで突破しています。

 個体差がどうといっても、私の買った89年型33、03年型33、そしてこの3Xと、全部この部分に0.2mm以上のガタがありました。昨年イベントで見せてもらった某ルアーメーカー営業部長氏の3Xも同じくらいでした。

 糸巻き形状以前に、普通のメーカーなら3台とも「不良品」です。

 幸いトラウティスト18号に調整法が載っていたので(笑)、コピー用紙で作ったワッシャーを入れてガタを止めました。測定どおり0.1mmの紙が3枚入りました。

 この前アップしたオリムピック・シャルマンもカーディナルのように止め輪でベアリングを押さえるタイプですが、ベアリングの下にリン青銅の薄いワッシャーを入れてガタを止めてありました。現在のシマノのリールの中にも、ベアリングの下に調整ワッシャーを入れたものがあります。

 切削だけで寸法が出ない(ガタが出た)なら、ワッシャー調整してでも修正するのが本当でしょう。ガタの規格などがないのでしょうか?

 でもまだ少し後ろ巻きです。

 これも幸いトラウティスト18号に修正法が載っていたので(笑)、メインシャフトのスプラインを削り、ワッシャーを入れて0.5mmシャフトを後退させました。

 やっと直りました。

 ただ、付属のアルミ浅溝スプールがピニオンに当たるようになってしまいました。とほ。

 私の場合は33とのスプール使い回しを優先してアルミスプールは無視しましたが、アルミを使いたい場合は上のガタ止めまでで妥協するか、メインシャフトのワッシャーを控えめにするのがいいでしょう。なお、下の「クランクリンクのカシメ」をやり直すとスプールの不要な遊びが減って、ピニオンに当たりにくくなります。


ストッパー
 最近33や44を使って思うのは、けっこうこのストッパースイッチが使いやすいことです。たらし調整やルアー交換、リーリング中オフにして使うときに便利です。

 音は私の89年型33より3Xのほうが大きくて歯が引っかかる感じ・・・といっても、3Xがうるさいと言っているのではなくて、どうやら使い込むうちにマイルドな音になっていくみたいです。音はガタみたいに測るわけにいかないので断言はできませんが、33を買ったとき「うるさいなあ」と思った記憶があるので、33が静かになってきているようです。

 33や3を買うと、ストッパーのバネを変形させて「チューン」する人もいるそうですが、慣らし運転だと思ってそのまま使ったほうがいいように思います。一昔前のクルマのエンジンや、ランドナーの皮サドルみたいなものと思えば、だんだん成長するみたいでいいのではないでしょうか。

クランクリンクのカシメ
 これは3Xに限ったことではなく89年型33にもありましたが、Aのワッシャーが完全にカシまっていないため回るのがあるみたいです。私の89年型33はBのところから真鍮の磨耗粉が吹き出してきました。

 万力で挟んでBのピン部を圧縮してやると、Aがしっかり固定され、スプールの軸方向ガタが減ります。ややクランクリンク部にフリクションが出る程度がいいみたいです。ただ、小さい部品なので作業は慎重に。念のため、加工はご自身の責任においてやってください。

 カシメの話のついでに、ドライブギアに打ってあるクランク用のピンのカシメも緩んでいるものがあるかもしれません。私の場合3Xと90年型44がそうでした。持っている人は確認したほうがいいでしょう。(2007/6/11追記)

 糸巻き形状とか、ローターのガタとか、89年型と同じことを世紀を超えてやっているのはたいしたもんですな。

 と、嫌味のひとつも言いたくなりますが、21世紀にこんなリールが買えるのは、ミッチェリストから見たらとんでもなくうらやましいことです。修正が必要な部分があるとはいえ「現行モデル」があるカーディナルに対し、ミッチェルの場合そうする素材すらないのです。

 実際、糸巻き形状を直す改造を施したり、改造とまでいかなくても下巻きを手で逆テーパーにしたりしてこれらのリールを使っている人はたくさんいます。

  ローターのガタにしても、幸い悪いのはベアリング穴の深さだけで穴径はしっかり出ているため、ワッシャーだけ入れればほぼガタつきを止めることができます。太いベールひとつとっても作りにくいはずですし、C3/C4も立ち上がりですったもんだしたくらいウォームギアのリールは作りにくいそうです。だから、瑞穂機械製作所(たぶん)も大変でしょうけど、手をかけてまで使ってくれるファンのためにも、もう一息しっかりして欲しいところです。

(2007/6/5)


ややっ、ナットが薄いぞ
 いまさらですが、3Xをながめていたらローターナットが薄く見えました。で、厚みを測ってみたところ、03年型33の3mmに対し、3Xは2.5mmになっています。しかしピニオンの口はどちらもナットつらつらです。

 と、いうことは、ピニオンの口やナットに当たらないようにした上でスプールを後退させたのかと思い、メインシャフト(スプール軸)全長を測ってみましたが両者87mmで共通です。

クランクが変わってる
 さらに調べてみたら、ここが変わっていました。L寸法は33=31.5mm、3X=32mmです。3Xは0.5mm長くなっています。

 つまり、一応後ろ巻き対策は打ってあったわけです(ちょっと記憶があいまいですが、以前撮影用に借りた3もこのニッケルメッキクランクだったような気がするので、3から変わった可能性もあります)。

 瑞穂様失礼いたしました。

 と、言いたいところですが、やっぱり後ろ巻きだったのですから、ダメはダメでしょう。

 私の03年型33は0.3mmのベアリングガタ止め(そもそもこの時点で立派な不良品だ)とメインシャフト後退1.3mm(前のページで0.65mmと書きましたがクランクリンクのかしめ緩みを直したらなぜかまた後ろ巻きになりました)をしています。89年型33もあらためてメインシャフトを削りましたがこれもベアリング部0.3mmとシャフト後退0.8mmです。トラウティスト撮影に使ったリールもシャフト後退0.8mmでした。

 某ショップが出しているローターを持ち上げるワッシャーセットも0.8mmと1mmです。

 つまり、0.5mmでは不足だということです。実際、私のだけでなく、上にも書いているようにI社のH営業部長の3Xも立派な後ろ巻きでした。

 わざわざクランクの金型を起こしなおしたのに、なぜこんな中途半端にしたのでしょう(それ以前に普通は引き物のメインシャフトで対策しそうなものだが・・・)。

 幸か不幸か33や3には対抗商品がありません。だから、また何年かしたら再々々発売されるかもしれません。次こそは、買ったままで使えるものにしてほしいと思います。次も何も89型33、03型33に3と3Xだから5回目だもんな。これで次もこんなものを出したら・・・ガオーさんが来るぞ !!

(2008/1/21追記)


使ってきました
 フィールドでのハイスピードギアはいかに。まず、トラウター78MLと組んで中流域の釣りに使ってみましたが、笑ってしまいました。重いのなんの、巻き取りが。

 ただでさえ効率の悪いウォームをハイスピード化したのですから当然ですが、たとえば4gのスプーンが流芯に入ったらハンドルが回らなくなります。当然魚が掛かったら・・・。これは間違いなく世界最弱の巻き上げ力でしょう。

 3Xは“最後まで製品化されなかった謎のリール”という売り文句でしたが、謎じゃないでしょう。こりゃあふつうせんで。

 こういう「ムチャしおるなあ」的リールをミッチェルが出したら、「フランスのエスプリ(意味不明)やなあ」となるところです。でも、アブの場合、むしろ3Xをいままでやらなかったことこそ、質実剛健・堅実路線のアブらしいことだったのではと思います。

 そうはいっても、いまの日本なら3Xはほとんど渓流で使われるでしょう。しかもメインのルアーは小型のミノープラグです。リールはロッドアクションでできたスラックを巻き取るのがメインです。

 実際、ウルトラライトの竿と組んで小型ルアーを使うなら、巻きの重さは気になりません。キャスト後のラインスラックの回収は鬼のように早いですし、釣り方によっては有効なものとなるでしょう。

 魚も渓流で釣れるサイズなら、パワーは問題にならないはずです。

 巻き上げ力を無視したかのような超ハイスピードウォームは、ミレニアムステラの密巻きみたいなものといえるかもしれません。そう考えると、こういうものもあってもいいし、おもしろいのではないかと思います。

 もうひとつ付け加えるならば、私の89年型33、90年型44、大森プロラインなどウォームギアのリールは、5回くらい使ったころから巻上げ力が上がってきたような感じがあります。このタイプのギアは歯面の状態が効率により影響するようです。すでに買って、「重い!」と思った人も、じっくり使ってみてください。

(2007/6/11追記)

AbuGarcia