クラシックライン・スピニング

 説明が遅れました。スポーティー・ライン、クラシック・ラインというのは80年代なかばにアブが打ち出した2本のデザインラインです。ヘンリードレイファスの最新デザインが前者、旧来のラインを残したのが後者です。ただ、そういう方針のスピニングは、このカーディナルCシリーズが最初で最後になってしまいました。

カーディナルC3
 名機33/44のデザインとメカを生かしつつ、現代風にアレンジされたカーディナルCシリーズです。ほかにC4、C5、ハイスピードのC4Xがありました。製造は名古屋のミズホ製作所でおこなわれました。33/44と異なるのはインスプールからアウトスプールになったこと、左右両用ハンドルになったことなどです。発売当初は銘板がゴールドとグリーンで、クセがありましたが、その後写真の落ち着いたデザインに変わりました。じつはこのリール、スピードスピンの日吉産業にも話が持ち込まれたのですが、設計(ギアとメインシャフト)に疑問をもった原氏は「断り見積もり」を出したそうです。空港での別れ際「インスプールだったらよかったですね」という原氏に、アブの担当者はうなづいたそうです。

ウォームギア
 ウォームギア(スクリューギア)です。滑らかで耐久性がいいことで知られていますが、その滑らかさを出すためにはたいへんな技術がいります。スピニング初体験のミズホ製作所に立会いに来たアブの担当者は、スウェーデンではあたりまえの5週間の夏休みをつぶすはめになりました。なおスプール摺動が減速式に変わっていて、回転が安定しています。ストッパーはサイレントになりました。このサイレントストッパーは遊びが大きいですが、かえってフェザリングのじゃまになりません。なんだかんだいっても、よく作ってあると思います。

ベールスプリング
 一番の疑問がこれ。よく折れると定評(?)のトーション式ベールスプリングです。本体の耐久性が抜群なのに、ここが1〜2シーズンでポキリといきます。こういう故障はギアがだんだん悪くなるより厄介です。なんの前触れもなく、リールが使用不能になるのですから、ユーザーはものすごく不安です。33/44はベールスプリングを2本装備していたぐらいなのに、なぜこんな設計にしたのかまったくわかりません。同時期のシマノが「No-Fail Bail Spring」(無故障ベールスプリング……訴訟社会のアメリカでこう言い切るのは危険なこと)を打ち出していたのと対照的です。

AbuGarcia