リバイバル・スピニング

90年代初め、オリムピックの要求(?)で、日本向けに作られた33/44です。

カーディナル33/44
 90年代初め、エビスフィッシングから代理店を引き継いだオリムピック(後のマミヤOP)の要求(?)で復活した33/44です。当時のオリムピックはカタログでこれを「レプリカ」(複製品)なんていっていましたが、とてもしっかり作ってありました。これは本物の“カーディナル”です。ルアー黎明期にアブにあこがれたものの、当時子供で買えなかった世代が購買力をつけたいいタイミングの復活でした。このころのアブの輸入には、元シマノ釣り具事業部長S氏がかかわっていたそうです。さすがに日本市場をよく見た戦略でした。

ウォームギア
 定評のウォームギアです。滑らかかつ高耐久性を備えています。意外に知られていないのは、効率の悪さ。とくに33は巻き取りが重く感じられます。でもこれが渓流などで軽いルアーを引くのに好都合。写真のリールはグリスを換えてありますが、購入時のグリスはC3とおなじ黄色っぽい半透明のものでした。いっぽうスプール軸先端のグリスだけは、アブ純正の白いグリスでした。おそらくC3/C4とおなじミズホで作り、スプールだけをスウェーデンで取り付けた「スウェーデン製」だったと推理します。でも、そんなことはどうでもいいこと。これだけしっかり作ってあるのですから。

ローター
 ローターです。たとえば大森製作所のインスプールなどと比べると、あまり上手なバランスのとり方ではありません。ベールアーム(アームカム)の反対側に、極端な肉厚部があります。しかし有害な鉛のバランサーを使わない設計は、「先進国」スウェーデンらしいと思いませんか? また、国産品より太い、頑丈なベールワイヤにもご注目。しかも折りたたみ式です。

フェザリング
 33/44にはベールを開いたとき、ローター回転にブレーキが掛かります。現在のシマノスピニングについているフリクションベールとおなじものです。だからキャスト時にベール返りを起こさないだけでなく、人差し指によるラインコントロール(フェザリング)が確実にできます。投げて巻くのはリールの基本。この点はミッチェルとおなじ。ただし、「ベールが人差し指のじゃまをしない」という目的に対する、解決法が違います。どちらがいいとかではなく、このへんが個性的かつ、メーカーの思想が出ていていいところです。

ラインローラー
 リールに対する姿勢のバロメータ。ラインローラーブッシュです。私はここにこだわります。糸を大切にしない糸巻きなんて、認められないからです。もちろん33/44は合格です。

でもこれは……
 持ち上げて落とすようですが、復活33/44には苦言もあります。ラインローラーサポートを、ベールアームにとめるナットです。このナット、普通のドライバーでは回りません。昔のリールには専用レンチが付属していましたが、復活モデルにはついていません。もしゆるんだり、分解の必要が生じたらどうしろというのでしょう? 写真は私の解決法。使えなくなったスプーンの頭を切って、工具にしました。

ベールアーム取り付けボルト
 33に関して、ベールスプリングが折れるという話を聞きます。ベールスプリングを両方の支点に装備しているのですから、そんなに簡単には折れないはずです。私の推測では、復活33にスプリングのLポイントの長すぎるものがあったからではないかと思います。写真は私の個体。どうもベールがきしきしいうのでボルトを外してみたら、スプリングの先がボルトの裏にあたっていました。右の写真がそれ。メッキがはげて、溝が掘れています。これではLポイントから折れることもあるでしょう。持っている人はチェックしてください。

いまさら追記:Lポイントが長いのも原因ですが、もっと重大な原因は当時の製造工場にありました。89年版33(2009/6/29訂正:92年型です)は、こともあろうにベールの閉じる力を増すためにベールスプリングの巻き数を減らされていたのです。こうすることで、ベールワイヤの形状が少々出ていないリールでもベールが作動します。本来ベール作動不良とされる個体でも「合格」しますから、製造は楽です。しかし、当然のことながらバネ線材にかかる応力が設計値をオーバーし、寿命を損ねていたのです。「アブガルシア/03年版カーディナル33」「Broke Broken/ベールスプリング2」参照。(2005/12/4)

AbuGarcia