君と行った山は

余り大きな山じゃ無かった。

ケーブルカーに乗って

山頂へ向かう。

今思えば

俺の君に対する想いの絶頂も

あのケーブルカーの終着点に有った気がする。



君と行った山には

大きな神社が在った。

石段を登る君が

転びそうになって

俺は手を伸ばした

繋がった手と手は

「いかにも」な雰囲気を醸し出したけれど

「実用品」としての手を繋ぐ行為以上に

感じられなかった俺が悪い。



その神社が

「縁結びの神様」を祭っているのだと知り

はしゃぐ君につられて

笑ってしまった俺が悪い。



下りのケーブルカーは

俺のテンションの様に

これ以上無い傾斜を

ただゆるゆると

降りていく。



終着駅をそのまま「終着地」にできず

帰りの車の中でも

他愛の無い話をして

そのまま家まで送った。

俺が何にもしない事が

そのまま、君をダイレクトに傷つけていたことを

知ったのは

君に送った最後のメールを書いてる最中だった。



涙でディスプレイが滲む中

二度と無い出来事を「ありがとう」なんて一言で

片付けようとする自分の

目の眩むようなボキャブラリーの貧困さにあせった。



君と過ごした晩春の一時は

俺の記憶に残るのか残らないのか

これからの人生に係わるのかどうかも

解らないけど。

あの時繋いだ手は意外と暖かだったのだけは

忘れないと思う。



本当にさようなら。


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