「台風は勢力を維持したまま、本土に上陸しました。」
TVのアナウンサーが迷惑そうに、そして何故か
申し訳無さそうに話してる。
「それでは、現場からお伝えしましょう。」
カメラ、スイッチ。
「…!。こちらシオノミサキでは…」
「現場」のアナウンサーは必死に状況をブラウン管越しに話し掛ける。
「これからの台風の進路にご注意下さい。」
アナウンサーはまだ、渋い表情を崩さない。
自分も進路上に乗ってるからか。否か。
それを見て、進路上の俺はホクソエム。ニヤリ。
窓のカギを閉めたかに始まり、明日、職場にたどり着けない場合まで想定する。
ワクワクする瞬間。じっとしていられない衝動。
某放送協会は夜を徹して、それの位置を進路を雨量を報告する。
想像の範疇に収まりえる、自分が不幸にならない天災は
人に何故か妙な優越感を与える気がする。
そして誰もそれを責めはしない。
台風の過ぎた後の大きな風を享けながら見る、
「青空」は格別だ。
何も無かったかのような青空。
この青空代も「台風が来る」という昂揚感の中に
含まれてるんだろうか。
この台風は俺に何か教えてくれるんだろうか。