春雨
春の足音を掻き消すように
絶え間なく降る雨の音。
耳を傾ければそこに
桜の悲鳴が聞こえる程の音。
俺の鼓動も聞こえなくなり
雨に濡れる桜の花弁に自分を投影する。
「打ち落とされるハナビラ達」
「自己主張を遮られたハナビラ達」
「生き残る術を持たないハナビラ達」
「空気を泳げなかったハナビラ達」
朝が来れば
もう誰にも「観て貰えない」ハナビラ達。
桜に「意識」なぞ有る訳も無く
擬人化して楽しんでいるだけの俺。
誰に知らせる訳でも無く
夜の雨に唯濡れて立ち尽くす。
木にしがみ付くハナビラ
木を見上げるしか無いハナビラ
明日の自分はどちら側なのか考えながら。