傘
雨が降っている。
やみそうも無いシトシト雨。
信号待ちの交差点で
アイツは何も言わず
俺の傘から出て行った。
何が起こったのか解らず
俺は無意識に煙草に火を点けた。
紫の煙をただぼうっと見ている
何が起こったのか。
どうしてあいつは「濡れる」方を選んだのか。
雨はただシトシトと降っている。
俺はただほろほろと考える。
煙草は燃え尽きかけていた。
多分、あいつは
「晴れ」を探しに行ったのだろう。
この鬱陶しいだけの厚い雲のどこかに
あるはずは無いと思う「晴れ間」を
俺が消極的なのか
あいつが積極的なのか
今は解らない。
俺は傘を差したまま
あいつとは違う方向に歩き出した。
ゆっくりと。
雨はやみそうに…無い。