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「食事考2024 その2」



 10日間のうちに55ミリの雨と45ミリの雨が降った。昔は、昔と言っても20年前くらいだが、その頃は降れば10ミリ!と嘆いていたと思う。しとしと降る雨は年々少なくなり、降れば20ミリ、降れば30ミリ、とエスカレートしてきたのは近年のことである。まだ10代の頃、加速度という言葉を学校で習ったような気がするが、気候の加速度が急激に増すという事例はあの頃にはなかったと思う。

 このような気候になって、これが当たり前になると、僕達は野菜への対処を考えながら作付けをすることになる。うちの野菜を食べたい人に、通年でできるだけ野菜を届けることが僕達のやっていることだけど、基本は自分たちが食べる野菜が美味しいと思えることである。先の雨は、台風崩れの影響だったから、風も吹いた。風が吹くと野菜は弱い。再生してきたナスがまた風雨にやられている。しかし、その小さな秋茄子は、食べてみると実に美味い。塩もみしただけでも美味い。傷が少々あっても味には変わりはないのだ。

 以前にも書いたが、僕達は半端者の野菜しか食べない。例えば、今の旬とも言える葉大根。葉大根を洗って選別するときに、虫に食われた葉を落とす。その落とした葉が僕達の食べる野菜である。虫の食べた残り物の穴開きだらけの葉っぱを、30年以上食べ続けているが僕達は病気にならない。つまり、虫も、食べられた葉も、悪いものではないのである。ただ、虫には固有の習性があるのだろう。大発生する時の集団性は、それが行き過ぎた時、大抵の場合は自滅に至る。小松菜などに付くアブラムシなどもそうなることが多い。

 大根の葉には、蛾の幼虫が数種類はやってくる。今年の秋は暑くて、大雨も頻繁であった。大根の種を播いて、ネットをかけておく。ヨトウムシがいっきに増えた。少しだけ気温が下がると、シンクイムシが増えてきた。ネットの裾を土に埋めて置かなかったので、蛾はネットの中に入り放題である。2週間ほど前にそのネットを外した。蛾が限りなく飛んでいる。そして大雨が2回。蛾はかなり少なくなった。そう、雨に当てるためにネットを外したのだ。

 ヨトウムシやシンクイムシに食べられてなくなってしまった部分もあるが、8割以上は元気である。この時期には大根の間引きが葉大根になるが、間引きが済んでいないところには、シンクイムシが必ずいる。間引きながらシンクイムシを見つけて潰すのだけど、隣の大根は大丈夫であることが多い。そのときに思うのは、虫は、大根を全滅させたくて生まれてきたわけではないだろうな、というようなこと。そしてある程度大根が大きくなってしまえば、シンクイムシに食べられてなくなることはない。大根も蛾も、お互いを利用しているに過ぎないのかもしれない。シンクイムシやヨトウムシのようなものは、葉を食べたなら糞を残していくし…。

 土の上の世界だけでも楽しいものだけど、野菜の根の周辺は、数億やら数兆やらの微生物が活躍してくれているらしい。それらを想像しながら、大根畑で葉大根を収穫して大根はさらに元気になっていく。蛾の飛び交う畑がすでに変化してきているのだ。僕達は商品を売っているのではない。生命の連鎖の中の一員を食卓に届けるのだ。

2024年11月4日




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