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中心静脈カテ−テルで心タンポナーデ?
 先日あったニュース。

 点滴の際にカテーテルの操作を誤って患者を死亡させたとして、業務上過失致死の疑いで三重大病院の40代医師を書類送検。
 この医師は四十代の女性患者に外科手術(生体肝移植?)後、鎖骨下静脈より中心静脈カテーテルを留置。その先端を上大静脈内に留めるべきところ、その先の(心臓の)右心房内まで進めてしまった。女性患者はカテーテル挿入から五日後に「息苦しい」と訴え、間もなく心肺が停止、救急処置を施行し心肺は蘇生したが低酸素脳症となり、二日後死亡。
 女性患者は心のう(心臓の周囲を囲む袋)内に液体がたまって心臓が圧迫される「心タンポナーデ」を発症していた。同病院が調べたところ、点滴の溶液が約六百ミリリットルたまっていた。
 院長は「カテーテルからふき出す溶液で心臓内部が炎症を起こし、点滴がしみ出したと考えられる」と話したとのこと。

 以下は全くの私見です。変なこと言ってたらご容赦を。ご意見は無用。

 どうも変だ。
 心のう内容が点滴液であったとなっている。ということはカテーテルが右房を穿破していたのだろうか。とすれば5日ももつ訳がない。穿破孔から血液が流出、タンポナーデは急速に進行してほぼ即死のはずだ。「息苦しい」などと言うヒマは無い。
 点滴がしみ出したとなっているが、血液成分はしみ出してないのだろうか。そんな状況は想定しがたい。点滴液の成分がふくまれているというだけなら、中心静脈栄養中に生じた心タンポナーデとしては異常な事態とも思えない。他の原因により生じた心タンポナーデであってもそうであって不思議はない。
 たしかに中心静脈カテーテルは右房に入れてはいけないと言われてる。浸透圧の高い高カロリー輸液に晒されることにより心膜の炎症が起きれば心タンポナーデの原因になる可能性はあるだろう。だがその所見はあったのか?

 生体肝移植後(未確認)ともなれば他にも要因は考えられるだろう。手術操作に始まり、大量出血大量輸液に伴う血液浸透圧の異常、腎不全、各種感染症、血管内汎凝固症候群など原因になりそうなものは他にもあるはずだ。
 中心静脈カテーテルの位置異常が有力な原因候補であったとしても、それだけで業務上過失致死容疑の書類送検はいかがなものか。

 送検された医師の患者管理に問題があったのは確かだろうが、スケープゴートにされてるような気がする。

   2005,June,30.