8月27日 稲垣吾郎は逮捕されるべきか? 昨日まで神戸で行われていた日本水泳連盟主催の日本泳法大会に競技役員として参加していたため、日記がとぎれましたが、本日から弁護士業務と一緒に復活です。 と、言いながら私自身の業務とは何も関係ないのですが、週末に世間を騒がせたSMAPの稲垣吾郎氏(以下「I氏」という)の件について一言。別に私はSMAPのファンでも、ジャニーズの回し者でもI氏の弁護人でも何でもないので、報道に出てきた事実しか知りません。 報道された内容が全部真実として、事案を簡単に言うと「違法駐車をして買い物に行ったI氏が戻ってみると、ちょうど婦人警官が駐車禁止の取締中。違反切符を切られそうになったI氏はあわてて車に乗り込み婦人警官の制止を振り切って車を発進させ、立ちはだかった婦人警官に全治5日の傷害を負わせ、逮捕される」てな感じでしょうか。 単なる駐車違反で数万円の反則金(行政罰)ですむところが、逃げようとしたばかりに「道交法違反+公務執行妨害+傷害」で臭い飯を食う羽目になったわけで、身から出た錆とは言え、お気の毒に、という気もします。おまけに検察官に勾留請求までされ、裁判官が勾留請求を却下してようやく本日釈放されたそうですが、果たして彼はそこまで悪いことをしたのでしょうか? 刑事訴訟法上、逮捕には「犯罪を犯したという嫌疑+逃亡及び罪証隠滅を恐れ+必要性」という要件が必要と考えられています。悪いことをすれば必ず逮捕というわけではないのです。本件では、元々彼の犯した罪は駐車違反であって、迷惑とは言え、誰もがやってしまう可能性のある行為です。 まあ、現行犯ですから嫌疑は十分ですし、実際に逃げようとしたわけで逃亡の防止の必要性は肯定できなくはありませんが、だからといって元がこれだけ軽微な犯罪ですから、逮捕までする必要性があったかは多少疑問の余地があります。 何か「見せしめ」の匂いがしますね。 付け加わってしまった「公務執行妨害」も、一見重大な犯罪のようにも聞こえますが、要は有形力を行使してお巡りさんに逆らったら全て公務執行妨害といえなくもありませんから、後付の理屈です。「傷害」に至っては「全治5日」ですから、お医者に行かなければ勝手に直ってしまう程度のもので、普通は刑事事件になどならないものです。 まあ、警察官にも逆鱗はありますから、逮捕はあり得るとしましょう。2日後に検察官が勾留を請求する必要があったのでしょうか?? 勾留は逮捕されてから3日以内に検察官が裁判官に被疑者の身柄の拘束を要求する制度で、認められれば10日間の身柄拘束が行われます。当然、「逮捕よりも高度の嫌疑+逃亡及び罪障隠滅の恐れ+より高度の必要性」が要求されます。 I氏の行った行為のうち、駐車違反はもはや罪障隠滅のしようがないですし、公務執行妨害や傷害も、被害者は警官ですから、証拠化は全て終わっているはずで、罪障隠滅の可能性はないに等しいでしょう。また、I氏のような有名人が身をくらますわけにはいきませんから、逃亡についても不可能でしょう。 結論から言えば、勾留請求を却下した裁判官は当然の判断をしたと思います。I氏の弁護人の奮闘もあったのでしょう。問題は、検察官の段階で勾留請求をすべきではなかったのではないか?ということです。 ここに「とにかく身柄を拘束してしまえ」という日本の刑事司法の悪癖が現れています。裁判官も、被疑者がI氏でなく、一般人であったら結構あっさり勾留を認めてしまったような気がします。マスコミも、I氏の不明を責めるばかりではなくて、もう少し冷静な観点から「そこまでする必要があったの?」という報道もあっていいのはないでしょうか? |