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10月27日 精神障害者の処遇

 重大な犯罪を犯しながら、責任能力が問えずに無罪や不起訴になった精神障害者について、裁判官・医師・精神保健福祉士らが協議して入通院の要否や退院の許否を判定する機関を設けるという法案が構想されているそうです。

 精神障害者が絡む重大犯罪が起きるたびに、議論されてきたことではありますが、今まで結局制度が作られなかったのにはそれなりの経緯があります。

 数十年前の刑法改正議論の際に作成された改正刑法草案には、「保安処分」として犯罪を犯した精神障害者を裁判所の判断で治療施設に収容する制度が含まれていました。

 しかし、その発想はいかにも社会防衛的なもので、本人に対する治療の必要性よりも犯罪の重大性や社会の被害感情を優先させかねないものとして、激しい批判の対象になっていました。刑事政策の学者の中でも反対論の方が多かったようです。

 将来の犯罪行為のおそれを理由に、精神障害者を強制的に入院させる制度としては、既に「自傷他害の恐れ」を要件とする措置入院の制度があります。これは2名の指定精神科医の診断が必要とされていますが、刑事事件と直結した制度であるということ、裁判官が判定に加わるところが今回の案の新味でしょうか。

 しかしながら、裁判官が加わって何をするかが問題です。単に犯罪の重大性や社会の被害感情の大きさを理由に入院の要ありとされないでしょうか、仮にそうなってしまうとすれば、形を変えた保安処分の復活です。

 精神障害者に対する治療は未だ完全なものにはなっていません。社会が精神障害者を隔離してホッと一安心、そのさきのことは忘れてしまうのであれば、本当の解決にはなってないはずです。精神障害に対する医療水準の充実が先決のような気がしてなりません。

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