モスクワ発AF電によると、エアバス社とロシア政府との間でコンコルドのライセンス生産に関する協定が締結されました。英仏両国政府も間もなく正式に承認する模様です。昨年10月に退役した超音速旅客機が、早ければ3年後に再び大空を舞うことが見込まれます。
近く統合されるロシア航空機製造会社が、その最初の仕事として「コンコルド(конкорд)」を生産する事となります。これは、かつて英仏両国が「協調」して設計・製造した故事に習うものです。ロシアで西側航空機のライセンス生産が行われるのは、第二次大戦中にDC-3をリスノフLi-2銘で生産して以来となります。
「ロシア語とはいえ、末尾の "e" が無くなったのは英国民にとって朗報である」と英国政府高官は匿名を条件にコメントしており、今後の英仏関係に禍根が残ること心配する向きもあります。今のところフランス政府は、この問題発言への論評は避けています。協定原本はロシア語で書かれていますが、英訳版では機名を "concord" と、仏訳版では "konkord" と表記しています。
ロシア製コンコルドは基本的には英仏の設計をそのまま踏襲する方針ですが、最新のアヴィオニクスと効率を上げたターボファン・エンジンを搭載することとなり、航続距離は12,000kmとなる見込です。これに関しては、エアバス社も技術協力する旨が協定に示されています。
生産される初めの5機はロシア連邦政府が購入することとなっており、「2機は大統領を含めた政府首脳の専用機に、残る3機は遠隔地での緊急救難用に使用される」と、同政府スポークスマンが記者会見で発表しています。同席したメーカー側代表者は、「緊急救難用機の少なくとも1機には極北用にスキー状の降着装置を装備させたい」と、早くも英仏のコンコルドとの差異化の方針を語りました。記者からは「これが本当のコンコルドスキー」との不規則発言が飛び出し、会場は大爆笑の渦と化したそうです。
ダリアヴィア、カムチャツカ航空、シベリア航空の三社が逸早くロシア製コンコルドに関心を示しており、アエロフロートも導入を検討している模様です。ただ、協定では国際線に投入することが予想される航空会社向けに生産する場合にはエールフランス及び英国航空との事前協議が必要とされ、更に両社にはかつて運航していたコンコルドと同じ機数まで通常価格の35%で優先購入できる権利を認めています。その結果、民間路線就航はロシア国内線からとなりそうです。
これについて、ヴァージン・アトランティック航空は、「『英国航空』ではなく、『英国の航空会社』 と記述されるべきである (It should be described as "British airlines," not "the British Airways.")」と英国政府に働きかけている模様です。
米国の大手航空会社は「排他的な協定である」として、同国通商代表部に経済制裁を含めた対応を求めています。ボーイングもこの動きに同調すると見られていますが、一方で超音速旅客機を研究中の日本との共同開発を水面下で打診している模様です。更に幾つかの環境団体も反対を表明し、米国では俄かに政治問題の様相を呈して来ました。11月に大統領選挙を控えて、米政府と民主・共和両党の対応が注目されています。
シンガポール航空とエミレーツ航空もそれぞれ「重大な関心」を示していますが、政治的な動きが一段落着くまでは静観する構えのようです。
(2004/04/01)