ロスアンゼルス発AF電によると、31日に映画 "Jet Me Fly" の制作発表がハリウッドで行われました。この映画は、英国のジェットエンジン開発者フランク・ホイットルをコメディー・タッチで描くものです。なお、このタイトルは、"Let Me Fly(直訳すると「我をして飛ばしめよ」)" の「もじり」です。
この映画ではいくつかの飛行シーンが予定されていますが、その中にストーリーの展開上重要な「夢」のシーンがあるようです。これはホイットルがジェットエンジンを着想したり、軍や政府を説得する場面で何度か繰り返されるそうです。このシーンの撮影はCGではなく実機が用いられ、DC-3がジェットエンジンを装備して飛ぶとのことです。ボーイング(同機の製造元であるダグラス社の流れをくむ「マクダネル・ダグラス社」を吸収合併した)がこの改造に全面協力し、映画の製作発表にも担当者が同席しました。
コメントを求められたボーイング社の担当者は、既に機体の選定が終了し、改造作業に入っていることを明らかにしました。改造にあたって一番苦労したのはエンジンの選定で、「華奢な」DC-3のを分解させない程度の推力を持つジェットエンジンがなかなか見つからなかったそうです。白羽の矢が立ったのは、Yak-40に使われているイフチェンコAI-25で、DC-3の約1.5倍の自重があるYak-40を3発で飛ばしているため、双発にすると理想的な出力になります。それでもスロットルの稼動範囲を制限するなど、安全策を十分に取るそうです。
アリゾナの砂漠で眠っていたDC-3が3機は海路でロシア到着し、北カフカス(コーカサス)のミネラーリヌィエ・ヴォードウィにある「民間プラント441」と呼ばれる整備工場で、1機が現在改造工事を受けています。残る2機は予備部品供給用とのことです。同整備工場は、TU-154やAn-2の整備を専門的に請け負っていますが、第二次大戦直後はリスノフLi-2(DC-3を旧ソ連がライセンス生産したもの)の整備実績もあり、少なからぬOBも作業を見守るために駆けつけているとのことです。
改造にあたってエンジンの装着方法が何通りか検討されましたが、ミーティアやコメットのように主翼を貫く形で装着する方法が時代考証からも支持されました。作業が順調に進めば、今年の6月半ばに初の試験飛行が行われ、来年3月初めにロシアの航空当局から「仮の型式証明」が発行される見通しです。その後、映画の撮影は同地で行われる模様です。
(2005/04/01 記)