ワシントン発AF通信電によると、イラクから帰還した男が国防総省の駐車場に絨毯を広げて座り込んでおり、全米の話題となりつつあるそうです。
男はサンディー・ヒルズ軍曹(27)で、金曜日の早朝に休暇でワシントンに戻って来ました。搭乗機がアンドリューズ空軍基地に到着するや、ワシントン市内の「連邦航空局(FAA)」へ向かい、そこで一悶着を起こしたそうです。
目撃者によると、軍曹は砂漠迷彩戦闘服姿で、直径1フィート半、長さ5フィート(順に45cm、150cm)程の包みを抱えており、入り口で警備員に制止されました。そこで、包みを開け、古そうな絨毯を広げると、大声で「バグダッドで『空飛ぶ絨毯』を手に入れた。航空機登録をしたい。」と伝えたとのことです。騒ぎを聞きつけて対応した職員は、初めは冗談だと思い退出を求めましたが、あまりに真剣な剣幕に渋々「機体登録課」へ案内した模様です。
FAAが記者会見で発表したところによると、軍曹は「バグダッドでこれが空に舞い上がるのを見た。是非とも航空機登録をして、アメリカの空を飛びたい。」と主張し、「登録されるまでは引き下がらない。」と譲らなかったそうです。そこで係官は機転を利かし、耐空証明を取得しなければ登録しても飛べない旨を伝え、仮の登録番号“N014FC”を交付しました。滞空証明の取得に必要書類やその交付機関を伝えたところ、その中に国防総省が含まれていたので、軍曹は絨毯を丸めてそそくさとペンタゴンへ向かったそうです。
昼前にペンタゴンに着いた軍曹は、空を飛んで軍高官を驚かそうとしたのか、駐車場に絨毯を広げその上に座り込みました。当然のことながら宙に浮くことはできず、一夜明けた現在も座り込み続けています。
国防総省は、今のところ黙殺する構えのようです。匿名を条件にインタビューに答えた高官は、「法に触れるような行動は今のところない。。彼は身内であり、一般来客用に開放されている駐車場にいるのだから不法侵入には当たらない。バグダッドの上官によると、彼は一途な性格だそうだ。非番時に郊外のスーク(市場)を素見していたところ、強風に飛ばされた絨毯を『空飛ぶ絨毯』と丸め込まれたようだ。彼はイラクでの軍功が高く、英雄の一人である。正直、事を荒立てたくはない。携行糧食をいくらか持っているようだが、それが尽きて腹が減ればすぐ退去するだろう。それを待つしかない。彼は休暇中だから、どこで何をしようが自由だ。我々にはどうすることもできない。」と苦々し気に語りました。
バグダッドに駐在する同僚は、「商人に『精神を集中し瞑想状態なれば意のままに操れる。ただしアラビア語で考えること』と言われたようだ。バグダッドでも飛ぼうとしたが、飛べなかった。瞑想状態に程遠いのか、アラビア語が不完全だったのかと思い悩んでいた。彼は軍のアラビア語講座を受講し、初級は素晴らしい成績で終了した。現在中級を受講している。上官から冗談半分に、『ワシントンのFAAで航空機登録せずに飛んだら違法になる』と言われ、休暇を利用してその手続きを執りに行ったようだ。」と記者に語りました。
議会の一部では、絨毯を航空機登録したFAAの対応を疑問視する声もあり、週明けにも何らかの動きがあるのではとの観測が流れています。騒ぎは当分続きそうです。
(2007/04/01 記)