機上の空論

フライトを楽しむ   キャビン

 

 ほとんどの方は飛行中にトイレへ行かれたことがあると思います。席に戻るときに、多少は軽くなっているはずなのに、体が重く感じられたことはなかったでしょうか。長いこと不思議に思い思索を廻らせていました。時速900キロ程で飛んでいるのですから、更に速度を加えるためにエネルギーが必要なのかとも考えたことがありましたが、物理の法則とは違うようです。あるフライトで、意外なところから回答を得ました。戻る途中、赤ワインの入ったグラスが置かれているのが目に入りました。水面を見るとグラスが傾いていることが分りました。後尾から機首に向かう通路が上り坂になっているのです。飛行機は水平飛行といえども、かかる力のつりあいを取るために若干機首を上げた姿勢で飛んでいるのです。知識としては知っていたのですが、実際に目で見ると妙に納得できるものです。こんな発見があるから飛ぶことは止められません。とは言っても財布の中身とも相談しなければなりませんが・・・

 機内では与圧があるものの、地上より気圧が低く設定されています。その結果、不足する酸素を補うために血液の循環が速くなり、アルコールの廻りも速くなるとの事です。しかし、私はそんな経験をしたことはありません。確かに疲れているときにはいつもより速く廻ったことがありましたが、それは地上でも同じです。(アルコールに対する個人差がありますので上空での飲みすぎに気をつけましょう。えっ、それは地上でも同じですって?おっしゃるとおりです。ハィ。)

 この気圧差故に、ドリンクサーヴィスで苦しい目にあったことがあります。機内で初めてドリンクサーヴィスを受けたときにビールを頼みました。いつもの癖で缶を開けそのまま飲みました。暫くすると突然胃に違和感が生じ、圧迫され始めました。騒ぐほど大した事はなかったのですが、何か悪いものでも食べたのかと心当たりを探ってみました。しかし思い当たる節は何もありません。あれこれ考えた末に、やっと原因が掴めました。さっき一気に飲んだビールが原因だったのです。気圧が低いために胃の中で炭酸ガスが膨張し、胃を圧迫していたのです。それ以降機内でビールを飲むときは、上品にコップに注いで暫くしてから飲むことにしています。

 

機上の空論 目次へ