本気でコンコルドの搭乗を考え始めたのは何時の日だったか。2000年7月25日の不幸な事故とそれに続く飛行停止によって、夢が破れた記憶がある。従って、20世紀最後の年に、曲がりなりにも乗ってみようと考えてはいた。しかし、本当に意を固めたのは今年になってからである。「コンコルドを今秋に全機退役させる」とエールフランス・英国航空(以下BA)が突然発表した時に、今夏の最後の機会を逃すものかと思った次第である。
初めてBAのHPで料金等を調べたのは、3月上旬であった。安く乗れそうなのは、ワン・ワールドの地球一周料金である。それでもかなりの高額に二の足を踏んでしまった。旅立つとすれば、まとまった休みが取れる8月中旬である。まだ日があるので、決行か否か考える余裕がある。この躊躇が、後に一度コンコルド搭乗を断念することに繋がる。
BAを選んだのは、ワン・ワールドの地球一周料金が設定されていることのほか、憧れているのに一度も訪れたことのない英国へ行けるからである。シャーロック・ホームズ、ビートルズ、007などを通じ、英国には非常に親しみを持っている。更に英国製の航空機は非常に特徴的で、面白い機体が多い。ダクスフォードの博物館に行くことも大きな魅力である。
閑話休題。5月末日、エール・フランスが一足早くコンコルドの運行を停止した。BAは10月まで運行を続けるとのこと。ここで、取り急ぎ予約をすればよかったのだが、仕事が非常に忙しく、精神的に余裕がなかった。その後BAに問合せたのは、7月の初めになってからである。BAからの回答は、以下の2点で絶望的であった。第一に、地球1週料金は、10日以上の旅行に適用される。私の休日は8月11日から18日までの8日間である。第二に、コンコルドは、夏の間既に満席で予約できないとのこと。前者は、完全に私のミスである。HP上に書かれていた適用条件をしっかり読むべきであった。また、後者は、1フライト100席を世界中の人々が求めるのである。然もありなんと、諦めるしかない。
ここで一旦諦めたものの、地球1週料金を使わないでコンコルドに最も安く乗る方法は無いかとの興味が湧く。初めは地球を一周する方法ばかりを考えていた。しかしある時、東京―ロンドン(あるいはNY)、を割引料金で往復し、ロンドン―NYは、片道ずつコンコルドと、エコノミーで購入するのが良いことに気付く。後にこの研究が役立つのだが、その時は非常な虚しさに囚われた。満席で席が取れないのだ・・・
7月30日。運命の日である。何気なくBAのHPを眺める。上記休日中のコンコルドに空席は無いかと、調べてみたくなった。すると、空席があるようで、NY―ロンドンの予約画面にコンコルド便が出ているではないか。しかも、期間中の3日分に。もうここでは躊躇はない。すぐに予約を入れるべく、PCを操作する。ところが支払の段になって、出発国(この場合は米国)発行のクレジットカードでしか支払うことができない。従って、ネット上では予約できないこととなる。納得が行かない。諦めがつかない。暫く思いを馳せていると、日本支社に問合せるのが良いと気付く。ただ、電話を掛けようにも、深夜である。日本語HPに問合せフォームがあった。それで問い合わせることにする。
翌朝(7月31日)、早速BAからの回答メールが届く。8月12日のNY―ロンドンが何とかなりそうだとのこと。8月11日から休みなので、その日に成田を発って、NYに一泊し、翌朝の搭乗となる。可能な日程ではあるが、成田からの搭乗機が遅延または欠航になった場合のことを考えるとリスクが大きい。しかしこれが最後のチャンスであろうと、12日の座席確保を依頼した。そして夕刻、座席確保の連絡が入る。天にも昇る気持ちとはこのことであろう。独り快哉を叫ぶ。たまたま7月31日が休日であったのも幸いした。
さて、コンコルドの席を確保すると、旅程を決めなければならない。ロンドンでの滞在をできるだけ長く取り、しかも欠航・遅延にも対処できなければならない。そこで思いついたのが、全行程をBAで飛ぶことであった。11日に成田をロンドンへ発ちNYへ乗り継ぎ、そして翌朝コンコルドへ搭乗する。BAのHPを見ると、実際にロンドン経由NY行きが設定されている。ただ、成田発の早いほうの便は満席のようである。遅い便だと、11日のうちにNYへ辿り着けない場合があるかもしれない。そんなリスクを感じながらも、BAへ予約に依頼をする。そして、翌日予約完了に回答を得て、旅立ちの日を待つこととなった。
(2003.08.24. 記)