機上の空論

月で測る ・・・ 朝日新聞掲載写真より

 

9月19日付朝日新聞朝刊の一面を飾った写真に、目が釘付けになった航空マニア諸氏も多いと思う。筆者もその一人である。図1のように、「中秋の名月」を背景にジャンボ機が飛んでいる光景が、いきなり目に飛び込んできたからである。

紙上の写真を再現してみた。

直径及び翼長の数値は、上が原寸、下が紙上での値である。


暫し紙面の写真に見惚れた後、撮影地点から機体までの距離を計算できることに気付いた。撮影地点とジャンボ機の両翼端を結ぶ三角形と、それを月面まで伸ばしてできる三角形は相似になる。(図2参照) 中学レベルの数学で計算できるのだ。早速計算に取り掛かりたいのだが、数値を得ないことには計算できない。

先ず紙上で月の直径と翼長を測る。それぞれ11cmと3cmである。手元の資料で、B747-400の翼長を調べると、ウィングレットを含むと思われる数値は65mに少し欠けるほどであり、とりあえず65mとする。月までの平均距離は、手元の地図帳に載っていた。後は月の直径さえ分かれば良いのだが、手元の資料を探っても見つからない。ネットで検索したら、すぐに3476kmと分かった。改めてネットの威力を思い知った。


前置きが長くなったが、いよいよ計算である。その前に若干の準備が必要である。先ず、単位をkmに統一しなければならない。翼長は65mであり、換算すると0.065kmになる。次に、月面上で機影が重なった部分(投影部)の距離である。これは、紙面上での計測から直径の11分の3であることが分かる。従って、投影部の長さは 3476km÷11×3=948km となる。(驚いたことに、月の直径は11で割り切れる!!)

機体までの距離を x km とすれば、三角形の相似から以下の比例式が成り立つ。

x : 384400 = 0.065 : 948

これを解くと、

x = 384400 × 0.065 ÷ 948 = 26.35654・・・

となり、機体までは26kmほどとわかる。ただし、この数値はウィングレットがついたB747-400を真正面から見た場合を想定している。写真を見ると機体は左舷が見えるように機首を右に振っているので、投影部に対する機体の長さは若干短くなる。また、ウィングレットがついていないのでその分も差し引かなければならない。更に-400でない場合も考えられ、その場合の翼長は更に短くなる。その上、月までの距離は平均値であり、当日の実際の距離ではない。これらを勘案し、誤差も含めて考えると実際の距離は20〜30kmの間になるであろう。

大きさと距離が分かっている(調べれば分かる)物体と対比することによって、初歩的な数学で計算できる事柄は意外と多いはずである。今後も機会があれば挑戦してみたい。

(2005.10.01. 記)

 

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