機上の空論

にわかナヴィ

 

去る5月6日、NAL3204便(フォッカー50: JA01NV)で名古屋−成田を飛びました。ほぼ満席のフォッカー50が採った飛行経路は、離陸後浜松で東へ転針、伊豆大島を経て房総半島南東沖で再び転針、北上し成田にアプローチするというものでした。名古屋の天候は曇で、途中大島までは雲海上の飛行でした。

名古屋を離陸後、航路に沿って上昇して暫くすると乗機は雲の上にでました。下方一面に雲海が広がっています。太陽光が雲に反射して、窓の外はとても眩しく感じます。進行方向左手前方に、雲を突き抜け聳え立っている富士山が目に飛び込んできました(@)。さすがにこの距離では小さく見えます。今回の飛行経路は富士山を取り囲むように設定されているので、天候さえよければ成田へのアプローチまではずっと左手に見えることに気付きました。

乗機が進むにつれ、富士山が見える位置が後方にずれてきます。左手ほぼ真横に見える頃に、機体は左旋回しました(A)。浜松VORに達したのでしょう。相変わらずの雲海で、下に見えるのはただただ白い雲ばかりです。天気が良ければ、右手に浜名湖が広がって見えるはずです。

旋回を終えると、左真横に見えていた富士山が今度は左手前方に見えます。ここの時、富士山が見える角度によって、雲海上でも乗機の大まかな位置がつかめることに気付きました。早速「にわかナヴィゲーション」開始です。幸い、座席のポケットには「NAL航空路線図」と、共同運航している全日空の機内誌(同様の「航路図」が載っている)があります。

風による機首方向の偏異は無視して、機軸は常に航路と同一方向を向いていると仮定しましょう。(精緻な位置の割り出しが目的ではありません。おおよその位置を割り出して、楽しむことが目的です。これぞ乗客の気軽さというものでしょう。) 地図上の航路とそこから富士山に引いた直線がつくる角度は、機上から富士山を見る角度と同じです。

地図を見ると、駿河湾上空で富士山は左真横に見えるはずです(C)。その前、前方45度に見えるときは天竜川上空近辺です(B)。そして、大島上空では後方45度くらいに見えるはずです(D)。

下の図で、航路は赤線で示してあります。黄色い線は、文中の@〜Dそれぞれの位置から富士山が見える方向を表します。赤線と黄色い線とがつくる角度を「にわかナヴィ」で利用しました。尚、この地図は手書きのため精度は低く、あくまでも参考のためであることにご留意下さい。

 

 

さて、この「にわかナヴィ」の成果ですが、結構正確でした。富士山がちょうど真横に見えた時(図のC。このルート上で富士山に最接近する時です。したがって、一番大きく見えるときでもあります。)から1〜2分したころ機長のアナウンスがあり、間もなく伊豆半島に差し掛かる旨が伝えられました。また、そろそろ大島に差し掛かると思うのも束の間、雲の切れ間から大島の島影が見えてきました。我ながらその精度に驚きました。房総半島の東方を北上する時には富士山は雲の奥にあり、残念ながら「にわかナヴィ」は継続できませんでした。

機内でのちょっとした暇つぶしに試したのですが、機会があればもっと正確に計測して対地速度も計算できればと思っています。

(2003.5.16. 記)

トップへ    「機上の空論」目次へ