「Happy Feet」〜ジャズピアニスト 深澤芳美 〜
都内のジャズフェスティバルで演奏した時の事、
若く美しい女性から「深澤さんのバンド、乗りがよくて踊りやすかったです」と声をかけられました。
「え?踊り?」ジャズフェスティバルといえばお客さんは聞いているだけと思い込んでいた私はびっくり。
こんな会話からスウィングジャズで踊る「リンディホップ」をご主人と共に楽しんでいる森百合子さんとのおつきあいが始まりました。
踊るだけでなく、ジャズの歴史などの知識も豊富な彼女といろいろ話しているうちにすっかり意気投合、
トントン拍子に話は進み、数ヶ月後にはご夫妻が主催するダンスパーティで演奏する運びになりました。
リンディホップは今から八十年ぐらい前、当時最先端だったスウィングジャズと共に生まれ育った自由な要素の多いダンスです。
それで、初の試みにこちらも普段のライブのようにスウィングナンバーを思うままに演奏してみる事にしたのですが…。
始まってみると早い曲もゆったりした曲もみんな自然にリズムに乗って踊ってくれて素晴らしい盛り上がり。
そしてそれを眺めながら演奏していた私たちバンドもさらに盛り上がり、相乗効果で期待していた以上の楽しいパーティになりました。
ワルツやタンゴなどと同じようにかつてジャズも踊りと強く結びついていました。
でもモダンジャズからフリージャズと時がたつにつれて踊りから離れて発展してしまったのです。
「ジャズで踊る」…当たり前の素晴らしい事だったのですね。
身近な出会いから原点に帰る事が出来た私は、改めてリズムの持つ力に感動しました。
まだ日本では知名度の低いリンディホップだそうですが、多くの人に知ってもらい、楽しむ人が増える事を願っています。
(2009年3月7日の「東京新聞」の朝刊に掲載されました。)