『おんなたちの同窓会』 名鉄東宝新春特別公演

2005年1月2日(日)〜1月26日(水)名鉄ホール

久々の名古屋公演で、千秋楽の幕が無事に降りた今、改めて自分なりの解釈で、感想を織り交ぜながら、物語を追っていきたいと思います。

配役

小松和代(司 葉子)・小松英一郎ー平社員(山本学

間宮由紀子(星 由里子)・間宮隆之ー部長(天田俊明

川北麗子ー常務夫人(伊織直加・立花ゆかー秘書(有沢妃呂子

叶葉子ー華の女将(奈良富士子

社宅の奥様(片岡富枝・ちあきしん・他

同級生ー恭子(片山せつこ)・

山下ー社員(渡辺隆

光彦ー和代の初恋の人ー光の君(松浪寛

担任の先生(小林誠


伊沢商事社宅ー(間宮家)

穏やかな癒し系の音楽で幕が開きます。ある年の春、ニューヨークからの栄転で、間宮部長夫妻が伊沢商事社宅に引越して来ました。社宅に住む部下の奥様方はその手伝いに大忙しです。
間宮部長の奥様は、野球選手松井のネーム入りユニホームを着て、時差ボケ状態、寝ぼけ眼で登場です。家事は部下の奥様方にお任せして、のんびりと爪など切っています。
部長宅の真下には、社宅住まい25年間、問題児扱いされている平社員の小松夫妻がいます。夫婦で『青い地球を守る会』とやらの会長をしており、今日も拡声器で近所の皆さんに呼びかけています。
上階からお呼びが掛かって、小松夫婦が喪服で登場です。お葬式の掛け持ちとやらで、お清めの塩を撒き、はなから笑わせてくれます。
部長の妻由紀子と小松の妻和代は顔を見合わせた途端、お互い同級生である事に気付きます。高等学校を優等生で卒業した和代に劣等生スケバンおユキと呼ばれ、退学になった由紀子!今はその反対の立場で、同じ会社の部長の妻と平の妻です。
お互いにプライドが許しません!夫も巻き込んで壷塩を掛け合う騒動となります。

そんな幕開き、とってもユニークで笑えるんですよね。

伊沢商事社宅ー(小松家)

この所、小松宅に川北常務の3番目の妻である麗子様(直ちゃん)が社宅の奥様方にダイエット方として、フラダンスを教えに来ています。太っちょのご夫人方はムームーで、直ちゃん麗子様は可愛いフリフリの赤いお洋服に花冠を被り、タヒチの娘のようで大変良く似合っています。
奥様方は麗子様を、それはそれはペコペコチヤホヤと扱っています。和代は持ち前の賢さと優しさで、麗子様には大変気に入られており、麗子の飼い猫チロちゃんのお洋服を縫ってあげたり、キャッツフードの相談にものってあげています。
そこへ、階下があまりにもうるさいので、文句を言いたげな由紀子がズカズカと入ってきました。彼女は麗子様が何者なのか知らず、小娘呼ばわりをして、麗子に悪い印象を与えてしまいます。常務の奥様だと知るやいなや、手の平を返したようにペコペコ!時すでに遅しかな…。(笑)

ホテル宴会場ー(同窓会)

第8回桜川女子高等学校同窓会が開かれました。
それなりにお洒落をした同窓生が集まっています。「あの人はどうしたかしら?由紀子には泣かされたわぁ〜、スケバンお由紀は今頃塀の中?和代も全然出席して無いから、もしかしたら墓の中?」と、皆でくだらない噂をしている所に、和代と由紀子が華やかに会場にやってきました。

自己紹介になり、由紀子が「学校を退学後、猛勉強をして、かの有名な白百合学園に入学、卒業しました。夫は伊沢商事常務で、和代の夫は同会社部長です。」とシャーシャーと嘘を言います。和代も特に否定はしません。
凄い凄い!と場が盛り上がっていた時、会場の前を偶然通りかかった麗子が沢山の紙袋を抱えて、夫の会社名が聞こえるので、関係者かと思い会場に入って来たのです。
和代と由紀子が「麗子様、麗子様!」と奉るので、同級生の恭子が「そんなにお若いのに、何故2人がこんなにも?」と聞く。何も知らない麗子はその場で本当の身分を明かします。つまらない見栄がバレたので、場内は一気にしらけて、そそくさとお開きになりました。折角、都会に遥々とやって来た長老先生をがっかりさせてしまいました。

『華』ー(1杯飲み屋)

日々、男達は仕事や昇進の悩みを抱えて身を削っています。会社の傍にある『華』と言う1杯飲み屋は社員のくつろぎ場でもあります。間宮部長は常連客の1人、酒が苦手で真面目一方の小松英一郎を呼び出します。『華』の女将は器量良し、上品な物腰で客に接しています。奈良富士子さんは女将にハマリ役で雰囲気があり、なかなかお上手です。

間宮部長は小松に「以前の女が付きまとうので何とかしてくれ」と言うのです。小松は「女遊びはよしなさい!」と逆に部長をきつく注意して、仕事の話に切り替えます。この不況を乗り切る為に、黒豚養豚計画を新提案として持ち出します。部長はそれを取り入れようとしませんが、後に小松の知らぬうちに自分の提案として常務に持ちかけ、一種のパクリをします。

そこへ、秘書の立花ゆかが残業を終えて、間宮部長の所にやってきます。ゆかはバリバリのキャリアウーマン、ストレートの髪をなびかせ若くて知的な可愛いさがあります。打ち合わせとかで、部長はゆかと別室に篭ってしまいます。何やら2人は親密なご様子です。
〔しかし、ゆかは部長の誘いには乗りますが、本心ではありません。後で小松に注意を受けますが「私なら大丈夫!」と言います。〕
1人残された小松が酒場を出ようとすると、女将が引き止めます。女将は男で苦労したので、今度は真面目で固い人が良いと、小松をえらく気に入ります。

ところが、そこへ、同窓会を中途半端に終えて、嫌な気分の和代と由紀子が立ち寄ります。さぁ〜大変!ガラッと店の戸を開けた途端、そんな事は絶対に無いと思っていた和代の夫が女の人と2人だけで飲んでいます。和代はカンカンに怒り、夫が誤解だと言うのも聞かずに1人で帰ってしまいます。
由紀子の方は「うちの夫は何処なの?小松さん、まさか出汁に使ったのなら部下の風上にも置けないわね」と言いながら店の奥を覗きます。夫の靴とハイヒールが座敷前にあるのを発見!閉まった障子をガラッと開けると、立花ゆかの膝枕で間宮部長が寝転んでいます。
由紀子も「貴方!また、悪い病気が出たのね!さぁ、この落とし前はどう付けてくれるの?!」と怒り、今度のボーナスで特大のダイヤリングを買わされる事で、今日の所は決着です。(笑)

幕前ー(社宅のゴミ置き場)

社宅の奥様方とは、係長夫人に課長代理夫人、課長夫人に次長夫人のことです。、上司の前では調子よく振る舞い、何かにつけて小うるさいのです。小松さんが急に付け届けをするようになったので、内心悪くは無いが、興味津々のご様子。観る側はこの人達が登場するたびに愉快で楽しいです。

(小松家)

和代は同窓会での屈辱を晴らす為、夫を出世街道に乗せようと上司のご機嫌取りに必死です。夫の英一郎は相変わらず、人を蹴落としてまでの出世欲はありません。
麗子様が由紀子と連れ立って小松宅にやってきました。見れば由紀子は黒豚のぬいぐるみを持っています。黒豚養豚計画が常務に取り入れられたようですが、部長1人の提案になったようです。
英一郎はびっくりして、自分の提案だと言いますが、間宮部長もやって来て、あくまでも間宮自らの提案だと麗子様の前で言い、小松を冷たくあしらいます。真剣に怒った英一郎は会社を辞めると云います。
「私に言われてもぉ〜」と困った麗子は間宮夫妻と小松の家を出ていこうとしますが、和代が「部長の奥様の僕になりますから、どうぞ見捨てないで下さい」と床にひざまずき頼みます。涙ぐましい態度ですね。さすが良く出来た奥様です。

(間宮家)

そう言う事があってから、和代は献身的に由紀子の家を手伝い、トイレの掃除から御髪の手入れまで小間使いのように働いています。由紀子は和代に「もう一度、同窓会を開いて、ハンサムな夫同伴で私達の名誉挽回しよう。どうせ他の人達の夫はチビ、デブ、ハゲに違いないから、」と持ちかけます。
そんな時、『華』の女将が和代を訪ねてやってきます。何事かと思えば、「あの黒豚養豚計画の話は英一郎さんの提案で、話を聞いていたから私が証明します」と言う。和代は「そんな事は初めから解っています。大きなお世話です。」みたいな事を云います。そんな風に言われると、女将も負けずに「英一郎さんをご不要の折には、いつでもお引き受けしますから」と云って、角を突き合わせて帰っていきました。

ホテル宴会場ー(同窓会)

再び第9回同窓会が開かれ、名誉挽回の為、夫同伴で和代と由紀子が現れます。他の同級生らは適当な理由をつけ、夫を連れてきませんでした。2組の夫婦は正装です。星さんの着物姿は素晴らしく豪華でとても素敵です。旦那役の天田さんも格好良いです。司さんも上等の素敵なお洋服を着ています(役の上での和代は借り物らしいですよ)。お互いばりばりの正装です。

毛皮のショールを脱いで、洗面所に行きかけた由紀子は変な男に出くわします。昔の彼です。和代の初恋の人でもある光の君、光彦さんです。嫌がる由紀子について会場にヅカヅカと入って来て、由紀子の過去をバラしてしまいます。彼女は赤羽の白百合学園キャバレーで赤江ミナと言う看板名で彼と働いていたらしいのです。嘘がまたまたバレて散々です。光彦は「特に悪気があった訳ではなく、由紀子が気取っているから、ちょっとからかってやっただけだ」と言って出て行きました。
恭子が間宮に向かって「ご主人、さぞ驚かれたでしょう」と問い掛けると「僕はその店の常連で、由紀子とは大恋愛の末結婚したのですよ」と…。「それに決まっていた上司のお嬢さんとの婚約を破棄してまでも私と結婚してくれたの」と由紀子が添えます。同級生の口を挟む隙間も無く、間宮は傷ついた由紀子を庇うようにしてその場を立ち去っていきました。とても良い夫婦でしたねぇ〜。そんな間宮部長がちょっと格好良かったです!!

小松は「僕達も帰ろうか」と言って、会場を出ようとすると、今は亡き同級生の娘さんがやって来て「生前の母は、父親の会社が倒産して払えなくなった授業料を寺田由紀子さん(旧姓)が肩代わりして卒業させてくれたと感謝しておりました。」とお礼を言います。
それを聞いた皆は、由紀子に酷い事を言ってしまったと後悔し、和代も由紀子の優しさに初めて気付きます。そこで、恭子も和代に以前の思い当たる事を打ち明けます。「和代の初恋の君だった光彦さんは学生時代から悪で評判の男!由紀子は優等生の和代には相応しくないと思い、和代から光彦を遠ざける為に、自分が彼と付き合ったのだと言っていたわ」と…。

幕前ー(社宅ゴミ置き場)

噂は社宅の奥様方に早くも伝わり「この社宅に元キャバレー嬢が住んでいるらしい、その人は誰だろう?」と盛んに想像を巡らしています。通りかかった和代が由紀子を庇って「元キャバレー嬢は私よぉん〜」と言ってその場を立ち去ります。

そうそう、もう1人、独身部下で山下と言う男がいました。不器用な人間で酒で憂さを晴らしています。立花ゆかに結婚を申し込むのですが「もっと仕事をしろ」とむげに断られてしまいます。この人もなかなか面白いですよ。良い演技をしています。

『華』ー(飲み屋)

『華』で間宮部長が山下を相手にかなり酔っぱらっている。女将が気を利かして山下を帰し、小松に電話して、家につれて帰ってもらうように計らう。小松が部長を連れて帰ろうとするが、部長は酔いが回って、その場で寝てしまった。
女将は英一郎が来てくれたので喜び、「奥様に英一郎さんをいつでもお引き受けますよ!と言ってきた。」と言う。しかし、さすがは英一郎です。「自分にとって大切なのは我が社を勤め上げる事と、和代を生涯の伴侶だと思っている」ときっぱり言い、女将は見事に振られてしまいます。その辺は女将もさっぱりしたものです。
目を覚ました部長は「川北常務が自分に辛くあたる。今度の重役会議では川北常務は絶対失脚する。僕は塩田常務に乗り換えるよ、小松君も着いて来い!」と言う。小松は反対して部長を諭しますが、土壇場で間宮部長だけは塩田常務に乗り換えることになります。

そこへ、珍しく酔っ払った麗子がフラフラとやって来て「パパと喧嘩したからお姉ちゃん今夜は泊めてぇ〜」と半泣きで女将に縋る。間宮と小松は驚き、この2人は姉妹だった事が始めて判ります。
「情報源はここだったのか……。」といっぺんに酔いが覚めた部長。

(小松家)

由紀子は和代の学級新聞連載童話『イノブタピピの話』を当時の自分と重なって、大変楽しみに読んでいたといいます。その最終章を退学の為に読み損なっていたのです。和代は由紀子の真意を知った今、英一郎にも手助けしてもらいながら童話の完成を急ぎます。
そんな時、社宅の奥様方が揃って、吉報!を運んできた。小松英一郎は重役会議で課長に昇進、川北常務は副社長に、塩田常務は辞任と。間宮部長は??塩田常務に乗り換えたので、地方に飛ばされる事に決まったと言う。
そこへ、負けた間宮夫妻もやって来ましたが、案外サッパリしています。「会社を辞めて商売でもするか」と由紀子に持ちかけると、由紀子は「会社を辞めなくても良い、格下げになっても貴方に着いていくわ」と言います。

「前祝を川北家で行うので川北派の方は出席するように」と秘書の立花ゆかが伝達にやって来た。実は、ゆかは麗子と大の親友で小中高と同級生、ゆかを伊沢商事に紹介してくれたのも麗子だった。
つまり、麗子の姉である『華』の女将が白なら、立花ゆかは黒だったかも……。
従って、部長は飼い犬に噛まれた事になる。
「しかし、2人の女の子を意のままに操る川北常務は怪物かも…」と負け犬間宮は降参…。
立花ゆかは川北派の皆を連れて、川北家に急ぎ、小松夫妻は間宮夫妻と共にその場に残ります。
夕日が部屋一杯に差し込み、綺麗な夕暮れです。「昇っていく陽もあれば、沈んでいく陽もあるのねぇ」と由紀子はしみじみと言います。

伊沢商事社宅の庭先

そして、再び桜の季節が訪れ、間宮夫妻が長野に旅立つ日がやって来ました。見送りに小松夫妻が駆け、『イノブタピピの童話』を贈ると、由紀子の願いで最終章を読むことなり、和代が静かに朗読をすると、とても嬉しそうに聞き入る由紀子です。
そこへ、同級生達が車椅子姿の先生を連れて駆けつけました。由紀子が卒業出来るように未納の授業料を皆で納め、校長に卒業証書を書いてもらったそうです。先生から卒業証書を授与され、「仰げば貴しの歌」を合唱し、記念写真を取りました!
由紀子は友の有難さを身にしみて感じながら、社宅を後にしました。

1人の友が去った今、和代は桜散る庭に佇み、大きな仕事を1つ終えたような気持で、「また明日から新たな戦いが始まる…。でももう、私はひるまない!」と……。終わり


誰にでも判り易く、親しみ易い内容と無駄の無い転回で、最後は上手く纏めてありますね。作者の技量と名役者が揃い、しっかりとした作品に仕上がっていました。其々の役者さんが自分のポジションを個性的に演じ、直ちゃん演じる麗子様も直ちゃんならではのキャラで、その良さを大いに発揮し、私達も大いに楽しませていただきました。

2005年1月29日yuko記

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