宙組は前回の『カステル・ミラージュ』で、メンバーも私的には馴染みになっており、個人個人の活躍や成長が興味深く、面白く拝見できた感じでもあります。
紫色をふんだんに使い、上品で美しさに溢れる宝塚らしい中国王朝ものを、久しぶりに観た感じがする。何処となく、はかなげで爽やかな風邪が吹いているから、暗くて怖いお話にはならないのが、宙組カラーでもあり、宝塚らしくもあるのでしょう。
元々はお伽話で、プッチーニのオペラ『トーランドット』としては、よく聞く。宝塚でも何度かやっており、少しずつ書き換えられて3度目の上演だと言う。
たか子さん演じるカラフ王と花ちゃん演じるトーランドット姫の誕生から始まって、成長した二人の出会いから物語が発展する。
鈴奈沙也が涼やかな声で歌う芍薬花乙女達の舞は夢夢しい。カラフ王は初出陣で勝利を修め、祖国に凱旋。やがて、心あって旅に出る。たか子さん(和央ようか)の中国衣装の立ち姿がとても良い。
花ちゃん(花總まり)トーランドット姫のお出ましは、それはそれは豪華な衣装のお披露目。見事な絵柄の長いケープを幾人かの侍女達に持たせ、銀橋を渡る。珍しくて楽しめますね。ところが先祖の恨みで、心が凍り付いているから冷ややかなのです。
盗賊の水さん(水夏希)は一本筋の通ったお頭役。ある日、出会ったカラフを気に入って、命がけで手助けする。最後に敵と水の中で戦って果てるが、バシャバシャと本物の水を使ったのだから宝塚も思い切ったものだ。以外にあっけなく死んじゃうのが無念な気がする。
水の中での葛藤相手が、なんと夢大輝君。今回は色々な場面で活躍していて、結構目立っていますね。そう、彼(笑、失礼)は『カステル・ミラージュ』で、直ちゃんボスの第一弟子でしたね。フテ役のなりきり度が気に入ったので印象に残っています。直ちゃんのお茶会にも駆けつけてくれたし、可愛い弟子ですよ。(笑)
トーランドットの御殿の広間でしょうか、紫のジュ-タンを敷き詰めた階段は、宝塚における日本、中国物の象徴のようで、結構、見応えがありますね。
花ちゃんの2番目に着る衣装や、冠が彼女には一番似合っていて、素敵です。衣を脱いだピンクの衣装がまた綺麗、柔らかで、弱々しくて、儚げな雰囲気に反して、役柄、一本の細い氷の鉄線が体の中心を突き抜けている感じがします。
御殿の向うから月が昇る時、大きくてゴロンとした、まるで気球のような黄色い塊が建物の間から姿を現わしたので、ちょっと、可笑しかったけどね…。(笑)
いつしか、祖国は滅びてしまい、年老いたカラフの父を、ずっと、守り続けてきた奴隷の娘タマルにかなみちゃん(彩乃かなみ)。子守唄がとても上手い。自らの死をもって、心が凍りついたトーランドット姫に、誠の愛を知らしめた時は、心打たれますね。
そうそう、ぽっぽさん(貴柳みどり)、凄く恐ろしいお化粧だからびっくりしたけど、御触れを出す中国のお役人だったんですね…。思い切った姿です。
トーランドットが亡霊にうなされ、勇者の愛にすがる夢の場面は、蓮の花が散りばめられており、花ちゃんのお衣装は赤、広い袖が孔雀の羽のようで大変見事。勇者は中国らしき厳しい顔付きのお面を被り、「熱い熱い」と、のた打ち回るトーランドットを助けるが、面を取ると、カラフの顔が現れた。今度は「嫌じゃ嫌じゃ」と悲鳴を上げるトーランドット。ここもなかなかの印象に残る場面ですね。
北京の民の1人である苑みかげさんの歌が、目立っていました。そう、この人も『カステル・ミラージュ』で、メキシコからドラッグを流していると言うマフィアの1人ガンビーノでしたね。台詞は少なかったけど、がっしりとした体形で良かったですね。歌がこんなにも上手かったのだ!確か、今回の公演でお辞めになるんですよねぇ~。声にもかなりの魅力があるし、良い男役なのにほんとに惜しい!!
最後にカラフは、トーランドが出した3つの謎を解き終え、逆に「我が名を当てよ」とトーランドットに問う。タマルの言葉に、心が和らいだかのように見えるトーランドットは、夜明け前、カラフの名を知り、裏切るのかと観客をハラハラさせた末に、その名は「愛」とひざまずく所がとても感動的ですね!!
めでたし、めでたし!とても面白いお話でしたね。久々に豪華で、内容的にも良かったなと思います。
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