イーストウィックの魔女たち

2003年12月2日〜29日 帝国劇場

【演出】 山田和也

【キャスト】 陣内孝則 一路真輝  涼風真世 森公美子

 大浦みずき 安原義人 笹本玲奈 新納慎也 他

私は最初、客席に座すなり、舞台上の大胆な装置を見て、一瞬ビックリしました。
つまり、舞台上に巨大な丸くて白いものが2つ、そう、オッパイがデン!と置いてあったので、ギョッとしたんです。
その後ろには上半身の一部が横たわっていて、でかい穴、つまり、お臍があるんですものねぇ〜(笑)。何、これ!って感じでした。

ところが音楽が始まると、なかなかお洒落なプロロ−グなんですよ!!
宇宙の彼方から幾つもの星が飛んで来て、赤や黄色、緑の光線が流れて、白くて丸い物がまるで地球のようにくるくると廻り出し、そこに、星くずが、地図が、イ−ストウイックと言う文字が映し出されました。まるで、映画を見ているようにスリルがあって、とってもお洒落で、何が始まるのかとウキウキする位です。

さて、ヨーロッパのイーストウィックと言う平和で小さな街に、稲妻が走り、雷鳴が轟き、1人の魔法使いらしき何者かが降り立ったようです!!

魔法使いか、ただの人間か?それがダリル・ヴァン・ホーンと言われた男!陣内さん演じるユニークでキザキザな色男です。
この男の目に止まったのは、ちょっと綺麗で個性的な30代半ば女性、仲良し3人組。

そのうちの1人アレクサンドラを演じるのは一路さん。夫と別れ、今一つ際立った作品が出来ない彫刻家で1人の子持ち。(えっ?オッパイ人形ばかり造ってるんだって?そんなぁ〜)
涼風さんは才能が今一つ伸びない音楽家のジェーン、夫と別居中〜。
そして、森さん演じるスーキーは、話す事が苦手で、思いを相手に伝えられない事でずっと悩んでいる内気なOL。只今不倫中〜。
3人は、このまま歳をとっていく事に不安を感じながらも、変化の無い退屈な日々を送っていました。
一方、大浦さん演じるフェリシアは、亭主を尻に敷き、清く正しく美しくをモットーに、この街を仕切る逆上しやすくヒステリックなご婦人。夫との間に、可愛いい1人娘ジェニファー(笹本玲奈)がいます。

地上に舞い降りた?ダリルの出現で、街の人々は興味津々大騒ぎ!!
ダリルは、この街を息づかせようと男気ムンムンで3人のご婦人に迫ります。【いたるところに笑いがあってユニークなんですけどね。】
3人3様、巧みな色仕掛けで迫られるのですけれど、一路さんにしても、涼風さんにしても、森さんにしても、演技が大変上手いし、演出も其々に個性的です。
陣内さんのお住まいなんて、もう、あきれて笑える位に、芸術的なお住まいです。(笑)ダリルによって美しく変身した3人のご婦人は、ルンルン青春気分です。各々が持てる才能には磨きが掛り、華やぐ日々です。
そして、魔女のようになった3人は素敵なドレスを身にまとい、空を舞う事さえも叶います。【客席の真上をふわふわと飛行するので、とっても感動しますよ!】

折角、其々に男が出来たと喜んでいたら、実は皆同じ相手。それに街のうわさにもなり、大変です。更にダリルは街の男たちを不道徳な方向へ導き、街のモラルがどんどん崩れ始めます。
街を取り仕切る(新聞社のオーナーなんですけどね)フェリシアは怒り狂い、小悪魔化した3人を徹底的に嫌います。そこで、魔女たちは悔しいのでフェリシアにちょっとした悪戯をします。魔力が効き過ぎて、いつも気分が悪いフェリシアのヒステリックは頂点に達し、亭主を道連れに哀れな最期を遂げます。

一方この街には、1つの清純カップルがいました。1人はアレクサンドラの1人息子であるマイケル(新納慎也)と、フェリシア夫婦の1人娘ジェニファーです。2人は結婚する位に相思相愛だったのに、男の子の方がダリルの魔法に掛かり、他の女の子達を追っ掛け回すような変男になってしまったのです。
両親を亡くし、恋人も失ったジェニファーの寂しい心の隙間に、3人の魔女に振られたばかりのダリルが手を差し伸べます。そして、ダリルの毒気に当てられたジェニファーは、怪しく大人びて、ダリルと結婚の約束までも〜!!さぁ、大変!!
全てを察知した3人の魔女たちは、力を合わせて、悪魔退治!習いたての魔法を紐解き、ダリルを痛めつけます。結婚式を目前にして、痛めつけられたダリルはまるで、洞穴のような巨大なお臍の中に吸い込まれて行きました。そこへ魔法が解けたマイケルがやって来て、ジェニファーと仲直りです。【めでたしめでたし!!】

悪魔は去り、再び、イーストウィックの街に静かな平和が戻ってきましたとさ。3人の魔女たちは、元の地味なご婦人に戻ったけれど、ダリルが残してくれた何かがお腹の中で息づき、そして、何かが変わった…。

音楽も楽しいし、魔女3人のコーラスは素晴らしいし、個性豊かな其々の演技がとても良いです。陣内さんだから出来るこのキャラクター、結構悪魔的なのに全然嫌味がなくて、愉快な人物に出来上がっています。新納さんと笹本さんの爽やかコンビも生きていましたね。大浦さんの役も大変ですよね。ご苦労様って感じです。
軽いようで、実は道徳的なお話でもあり、大胆で思い切った作品ではあったけど、馬鹿馬鹿しくて笑っちゃう所もあったりで、肩の凝らないミュージカルとして、なかなか面白かったのではないでしょうか。
 2003年12/15 yuko記

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