星組東京宝塚劇場公演2005年7月〜8月観劇記

『 長崎しぐれ坂 』 

『長崎しぐれ坂』を観て、かつて雪組で上演した『雪之丞変化』が、ふと、懐かしく思い出されました。
頃は幕末、長崎は唐人屋敷を巡る物語です。

元雪組出身の轟さんが御大将、伊佐次をやってます。粋ですっきりとした2枚目、ドスの効いた台詞回し、着流しの所作の良さなど、轟さんはやっぱり日本物がぴったり!伊佐次は江戸を荒らした大泥棒、気短で怒りっぽく大柄な反面ユーモラスな所もあります。荒くれ子分を引き連れて、流れ流れて長崎の唐人屋敷に逃げ込んだ。

星組のトップ、わたるさんの役は大泥棒の伊佐次を追って長崎までやってきた岡っ引の卯之助。始めて見る青天と岡引姿は板についており、結構似合っています。十手の房の色を時折変えたり、昔懐かしい竹蛇の玩具などをひょいと使ったり、ちょっとした遊び心も覗かせています。
泥棒とおまわりさんみたいに正反対の立場だけれど、伊佐次とは幼馴染だと言うから、ことの真意は複雑。

もう1人の幼馴染は芸者役の檀ちゃん。堺の商人の囲われ者で、品の良いお色気が漂うおしまさんです。偶然長崎に立ち寄ったら、幼馴染の伊佐次と卯之助にバッタリ会い、子供の頃の神田界隈が懐かしく蘇り、伊佐次と連れ立って江戸に帰りたくなるんですね。

伊佐治の子分、安蘭さん扮するらしゃは、出番は少ないのにインパクトが非常に強いです。半人前のチンピラで向こう意気が強くて、人情にもろく、優しさ故に殺されてしまう。死に際には泣かされます。白羽さんとのコンビが良いですね。

その他の子分衆も、非常に個性豊かで、難しい方言台詞を上手くこなしています。さそり(真飛)、らっこ(涼)、あんば(柚希)と、大胆で歌舞伎役者みたいな衣装が各々イケてます。

あと、何と言っても日本舞踊が見せ場の一つです。神田明神祭り、長崎の異国漂う蛇踊り、精霊流しも圧巻です。松本悠里さんの舞はお見事で、仙堂花歩さんの伸びやかな歌声も聞き応えがあります。

さて、精霊流しの真っ最中、闇をぬって逃げ回る伊佐治。結局、おしまちゃんは堺に行ってしまったけれど、何が何でも江戸に帰りたいと、伊佐次の願いは強い!「とぉーい、とい!とぉーい、とい」と精霊流しの掛け声が高まり、踊りは山場へと〜、伊佐次を助けんとばかりに、卯之助が痛い足を引きづりながら必死に追い掛けていく。
しかし〜、伊佐次はお役人の卑怯な銃殺に合い、卯之助の腕の中で息を引き取る。船は岸を離れて江戸へと流れていく。無念な思いが残ります。遠くにおしまさんが乗っている船の灯かりが見え、情緒たっぷりの光景です……。おわり

『ソウル・オブ・シバ!!』

ショーは打って変わって、速テンポで歌い踊るとても明るい作品です。
シバによるシューズ伝説…、ヒーローの湖月わたるちゃんは神から授けられた水色のシューズで運命が開けていくんですね。
プロローグの幕開き、お洒落なソロダンスが素敵です。舞台上の水玉模様もいいですね。2階からだとこの水玉がよく見えます。

黄金色に染まった神が現れると、赤や金色の超華やかな本プロローグとなります。
御大将の轟兄さんは神に昇天なさったようで(笑)、神々しく慈悲深いシバです。闇太郎『雪之丞変化』からキング・オブ・ザ・キング『サジタリウス』への変わりようです。(笑)
金色に身を包んだシバは、上界より眺め、必要とされる時に下界に現れる。少なくともそんな感じがします。

舞台はニューヨーク、ブロードウェイ裏街で始まります。
わたるちゃんは神に夢を託されたダンス青年レークです。貧しい靴磨きから出発して、運命的にダンスの才能が開花していきます。
檀ちゃんは超美人の大女優ダイス、上品なお色気ムードです。「ごきげんよう〜!」と声を掛けられたレークは一目ぼれ〜?(笑)
そのプロジューサーオーキッド役に安蘭けい、小柄だけど大きな演技で決まっています。『コート・ダジュール』のレイモン(高嶺ふぶき)気質を受け継いでる気がします。レークとの出会い場面はさりげないユーモアセンスが効き、日替わりアドリブ使いのようです。
レークを中心にした街角のタップダンスが楽しいです!ドラム缶を叩いたり、やりたい放題、下級生も上手いですねぇ〜。レークの運はここで一つ進展します。

安蘭さん(オーキッド)の銀橋での歌いっぷりは一路真輝さんモードがちらりと伺えます。やはり、元雪組生ですねぇ〜。(笑)
レークは高級クラブを紹介されて、そこのウエイターになります。レークを中心に美男ホスト達のダンスが格好良い見せ場となっています。
店に来ていたダイス(女優)をめぐって、ボス(立樹遥、ボディガードかな??)とオーキッドの騒動になります。店員(レーク、ホスト達)が助け、ダンス対決で表現しています。店員の勝ち!ここでもレークの株は上がります。ダイスからも賞賛を得ます。またまた進展!

シバの導きで、トロピカルな夜のパーティに……。とても綺麗な銀とブルーの世界で男女が踊りまくります。アダルトなロケットダンスも飛び出します。先程は格好良いホストだった柚希礼音ちゃんがダイナミックな足上げダンスで黒鳥のように伸びやかに踊っています。いつしかレークとダイスは恋に落ちて、二人だけの世界で踊っています。しかし、進展はここまで……!

ダイスを奪われたオーキッドの心は疼きます。銀橋で「ジュラシー」を歌い、切ない程に聞かせてくれます。嫉妬をあらわにしたオーキッドによって2人は引き裂かれ、レークは殴り倒され、足を蹴られ踏みつけられます。「もう、踊れない、もう、踊りたくない〜」と悲痛な叫びが〜。

いよいよ、シバの出番です。お慈悲が下され、全員純白衣装に身を包み、祈りの舞が永遠に繰り広げられます…。まるで白鳥達のようです。

舞台はフィナーレへと転換し、大階段のデュエットダンスになります。シルバーグレースーツのわたるちゃん、グレーのドレスにコートと帽子の檀ちゃん。退団する人とのラストダンスはシックで大人のムードに溢れていました。
暑い夏を吹っ飛ばすかのように、真赤とゴールド使いの超ゴージャスなパレードで幕が降りました。

2005.8/14yuko記

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