『阿国』ミュージカルokuni

2007年3月3日〜29日(新橋演舞場)4月3日〜15日(京都南座)

「出雲の阿国」と言えば、歌舞伎、歴史小説、テレビやその他芝居などで知られていますが、私は東京の明治座で上演された杜けあきさんの『出雲の阿国』を一度観た事があります。
今回は
伊央里直加が出演すると決まって、新たな『阿国』を観る機会に恵まれました。原作・皆川博子、脚本・鈴木聡、演出・栗山民也です。初演は平成2年で、再演を重ね、4年ぶりの新橋演舞場、京都南座での再演だそうです。

これは、出雲から京都にやってきた阿国の晩年を大衆的なミュージカルで描かれており、阿国歌舞伎の絶好調から始まり、時代の波に時を経て、いつの間にか観客の足は遠のき、新しい出し物へと移っていく…。
そんな、どうにもならなくなって、朽ちていくものの哀れさ、潔さを
木の実ナナさん率いるベテラン役者が精魂込めて、リアルでエネルギッシュなミュージカルを演じていました。
結構ご婦人の常連が多く、客席も不思議なほど熱気に溢れていました。木の実ナナさんファンが多いのでしょうか。お客さんに超愛想良く、湧き出るような笑顔で、阿国と木の実ナナが一体になっている気がしますよ。気風が良く、パワーは全開、元気100倍って感じでした。

 ♪さて、物語は江戸時代初期、天下が徳川に変わろうと国がざわついている時、京都四条河原では連日、芸人達が競い合い、人気を集めていた。
そこへ出雲からやってきた阿国一座が飛び入りで阿国の舞を披露する。この地一帯を牛耳っているお偉方の目に留まり、四条河原での興行を許可される。(実際は色仕掛けの賜物…)
運が向いて来たところで、阿国の亭主、
三九郎(若松武史)が一座の役者を増やしにかかる。とっぱ(深沢敦)、こふめ姉さん(年増の元芸者)、農家を家出してきたお丹親子(大和田美帆、鷲尾真知子)、それに加えて一蔵(東山義久)と二蔵(西村直人)は双子のように高度な芸を披露する。中でも一蔵役の東山義久は売れっ子だけあって、アクロバット風なダンスが素晴らしい。
こうした個性派達が揃い、更に場を盛り上げる。芝居が始まると、まるでドンちゃん騒ぎ!お祭り騒ぎのような賑わい、橋の下の乞食軍団や、村の衆もドンちゃん騒ぎ。こうして阿国一座は満開となる。

そうしたある日、現れたのが猪熊少将(池畑慎之介)、武士なのだが、自称美男で女が付きまとう。(猪熊少将はあのピーターさん、以前に帝国劇場で拝見した時は女役だったけど、今回はキザな男役で男の色気が売りで、貫禄も充分ある。花道に格好つけて登場すると常連客が結構騒ぐのです。)
猪熊少将取り巻きの中に公家の出である遊女軍団がいる。その筆頭が
遊女かわかぜ(直ちゃんこと伊央里直加)です。この軍団は雲の上の存在のようで、ちょっと気位も高い。お品良く皆美しい。中でも我らが直ちゃんは上品で嫌味が全然無い。そうした所がファンの一員である私はホッと一安心なのです(笑)。結構オキャンな感じもあって本人も楽しんでる風にみえる〜。
しばしの間、阿国と猪熊は男と女、こうして、阿国の踊りにますます磨きが掛かるのです。

しかし、時は流れ、景気の良い時期も去り、三郎左衛門(上条恒彦)率いる一座に人気を根こそぎ持っていかれる。新一座の目玉商品は若さ溢れるインパクト抜群の2代目阿国と称するお丹(大和田美保)が堂々登場した事!!
気が付けば、阿国一座にいたはずのお丹親子を三郎左衛門が引き抜いたのか、お丹親子が三郎左衛門に縋ったのか。いつの世も同じ事だが、新しいものに人は流される。珍しいものに惹かれる。あのちっちゃな小汚い娘が、とびきりピチピチの美人スターに変身なのだからびっくり!
続いて一蔵二蔵も三郎左衛門一座に乗り移るし、こふめ姉さんもさっさと移ってしまった。実は猪熊少将までもが
お丹に〜。
猪熊さまに付いている金魚のような遊女かわかぜ軍団も、和装から洋装に替わり、紅襟の黒い着物から紅白の洋風モダンスタイルに変身だ。キャピキャピお丹を囲んで登場。そりゃ〜目新しさに目を奪われますよ。

世は徳川の時代に変わり、河原で歌舞伎踊り(かぶく)をする事も風紀が乱れるので禁じられ、取り締まりが厳しくなる。前世を捨てきれずに徳川に刃向おうとする武士達や猪熊も捕らえられ、裁かれる。そして、無残な最期を遂げる。
河原に取り残されたのは亭主の三九郎と、とっぱ、阿国の3人だけ〜。登りの旗もボロボロで哀れなものだ〜。阿国は、一人だけでも
かぶく(歌舞伎踊り)と強気で言い張り、たった1人河原に残されるが、通りすがりの人間に馬鹿にされ、乞食扱いされる。
とことん哀れさをさらけ出し、狂ったように一人踊りする阿国……。一旦は国に帰ると去っていったはずの三九郎が引き返してきて、最後は阿国を宥めて、共に国に帰っていく……。♪−物語おわりー

もう一つ記すべきは音楽演奏の面白さです。沖縄民謡的でアジアン風な音色でもあり、上々颱風と言うミュージシャンが担当しています。独特の音色を出す楽器と歌い手の黄色い声が不思議なほど耳に心地良く、しなやかな踊りも入り、独特の世界が良かったです。
今回はそれらの音楽披露がフィナーレともなっているんですよ。ロービーでCDを販売していたが、今となっては買い損なったかなと思っている位です(笑)。

直ちゃん(伊央里直加)は遊女役以外では、村の衆で出ていました。地味な和装姿だったけれど、結構弾けていて、とても楽しそうでした。私も新橋演舞場は勿論の事、京都南座まで直ちゃん仲間とわいわい揃って観に行ったものだから、直ちゃんも舞台から上機嫌で喜んでくれ、客席に下りてくる場面では握手握手で大騒ぎでした。

凄いパワーのベテラン役者を中心に、出演者達の汗が飛び散ってくる程の熱気が感じられた公演。私も本場京都の四条河原に出掛けて行って、阿国の銅像に出会い、本物を満喫した感覚を得、観る度に面白さが増し、まことに良き思い出になったなぁと思います。yuko2007.8/5記


当時のおしゃべりルーム日記より

4月15日『阿国』京都南座千秋楽祝!

早くも本日、『阿国』舞台が京都南座で千秋楽を迎えています。おめでとう御座います!!

私は京都を中心とした小旅行を終えて、南座から一足先に帰って参りました。
弾けんばかりのパワーと愛嬌を備えた木の実ナナさんを初め、名役者達の力の入った演技は、なかなかの物で、ひときわ見ごたえのある「阿国」舞台になっておりました。

伊央里直加さん(直ちゃん)は、品良く美しいかわかぜ役を魅せ、町衆役では明るく飛び跳ねて踊りまくり、元気いっぱいの舞台を見せて下さり、客席の私達にも惜しげもなく愛嬌を振りまき、私達はしばし笑いの連続だったりして、とっても楽しかったです。
直ちゃんファンの方々も京都、大阪、宝塚と各地方からやってきており、楽屋の入り出待ちは切れ目の無い静かな賑わいを見せ、笑顔の直ちゃんが気持ち良く対応して下さり、とても良かったです。

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