星組公演『王家に捧ぐ歌』 

★★東京宝塚劇場 10/4、10/10 、10/24観劇記★★


まず、オペラ『アイーダ』を元にしたこの作品が素晴らしかったという事に加え、わたるちゃん、檀ちゃん、安欄さんの3人が、各々の持ち場を精一杯に演じていた事が素晴らしかったですね。また、見栄えのする舞台背景も効果的で、観るものを楽しませてくれました。
それに、ベテラン箙かおるさんと一樹千尋さんの声量ある歌声が作品に厚みを出し、全体的に見応えのある宝塚盤『アイーダ』を完成させていました。

若き将軍ラダメスを演じる湖月わたるさんは、見栄えのする長身に力強い歌声、包容力ある演技で、一途にアイーダを思う眼差しは強く、そのソフトな顔立ちは初々しさをも醸し出していました。地下牢での白い衣装が宝塚らしく、何とも素敵でした。(ちょっと、直ちゃんバウの『エンラブ』を思い出してしまった…。)裸足の演技も生々しい魅力を感じさせてくれましたね。

ファラオの娘アムネリスを演じる檀れいさん、何と言っても衣装が豪華で、冠と言い、両手を広げるとまるで極楽鳥が羽根を広げたようで、宝塚ならではの見事さでした。それがまた、大変良く似合っていて、とても美しい!これには本物歌劇オペラ『アイーダ』も負けてます。(笑)最後のゴールド衣装も誇り高くまばゆいばかりで、女性的な一本芯の通った力強さを演じていて、なかなか良かったです。

アイーダは安蘭けいさん、利発そうで、純粋な目を持ち、歌声が美しいですね。衣装も囚人ではあるけれど、エチオピアの王女らしく素敵です。銀橋のラブシーンで背伸びした時、、赤いぺディキュアを塗った素足がちょっぴり覗いていて、可愛らしかったですね。

エジプト王ファラオを演じる箙かおるさん、寛大な心が災いして、自分の命を滅ぼしてしまう運命にありますが、ラダメスに対しての表情が柔らかで好感が持てます。初めて歌を聴きましたが、声量の豊かさに感心しました。
エチオピア王であるアモナスロを演じる一樹千尋さんも、さすがベテランたる細かな演技と、元より定評のある歌声も素晴らしかったですね。
勇敢なアイーダの兄ウバルド演じる汐美さんやカマンテである真飛さんは、物語に味を添え、ラダメスの戦友2人も溌剌としていて、格好良かったですね。

舞台構成も優れていましたよ。目を楽しませてくれた壁画は、舞台両脇に描かれていたエジプト人なる大きな絵が印象的でした。
最大の盛り上がりである凱旋は力作ですね。白とブルーとゴールド使いの配色が洗練されたイメージを生み出し、大鳥の羽ごとき物が舞台奥から突き出てきて、ファラオは宙吊りブランコで降り立ちます。結構な高さがあり、怖かったのでは?と思ったりして…。よく見るとゴールドの安全ベルトが付いていたのですね。勇者の行進もなかなか格好良いです。(ここで、ラッパと共に有名なアイーダ行進曲が聞きたい位です。笑)
また、王家の背後には、アブシンベル神殿なるモノクロ画像が控え、迫力を添えていましたね。
そして何と言っても、宝塚っぽい見せ場である最初と最後に登場するゴンドラは素敵ですし、その石牢の上には、誇り高く立つファラオとなったアムネリスがいました。その最後の言葉には胸を打たれます。

フィナーレは明るく歌って踊ります。最初は黄色い衣装の若者達が歌い踊り、檀さんと娘役の舞台になります。バックといい全体がとても綺麗です。白黒燕尾の男役の総踊り、アフリカのイメージで頭にバンダナを巻いていますね。黒人の踊りは安蘭さんを中心に娘役達が歌います。ロケットの後はわたるちゃんと檀さんのデュエットダンスです。やっと、わたるちゃんことラダメスを自分のものにしたかのように、遠慮がちに嬉しそうに踊る檀さんが微笑ましく、わたるちゃんの優しさに溢れたエスコートがとっても魅力的でした。

私としての感想はこんな所でしょうか〜。演じる方たちは、力作ゆえに大変だったのではないかと思いますが、総体的にとても良かったですよ。

2003年10/12 yuko記


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