『最悪な人生のためのガイドブック』 観劇記
2005年5月13日(金)〜5月29日(日)パルコ劇場
開幕前は題名からして、どんな作品なのかなぁ〜???と、さほど期待はしていなかったのですが、観れば、結構、面白可笑しく楽しい作品であることに気が付きました。
不倫だのファザコンだの今の流行り言葉が軽々しく出てくるし、男女の交際を一種のゲーム感覚で楽しんでおり、将来なんて難しい事は考えない。今が楽しくハッピーであればいいみたいな風潮が飛び交う。年齢なんて気にしない、群れて、皆友達!誰もがちょっと友達思いなところに意味ありかな…。
舞台背景は平凡なのに、セットに小さな工夫がなされ、雰囲気が出ていました。歩道橋が常にあるので、話の中心になる『ピザ・アミーゴ』のお店はこの辺りにあるんでしょうね。
その歩道橋の上から、心地良い歌声が聞こえて来ます。そう、物語のナレータ的役目も含めて、男女5人組のアカペラ クインテット、トライトーンが素敵な音楽を奏でてくれて、効果倍増です。個性豊かな8人の登場人物が一時(3年間位かな?)の人生を提供してくれます。それが『最悪な人生のためのガイドブック』と言う事になります。(笑)
まず、ドイッチ!(苗字が土井だから、こう呼ばれてるそう)川平慈英(かびら・じえい)さんが演じており、中心人物だけあって、濃いけど、大量の台詞を難なくこなして、実力のある人だなと思いました。ドイッチは今年40歳の厄年、それなのに未だにバイトで、独り者。ピザを焼く事を誇りとして、友達を大切にしています。ある日、アベコに出会って人生が一転!
アベコ(苗字が阿部だから)、キムラ緑子さんが演じてます。アベコはライターを職業とする独り者、もうすぐ40歳、現れた男2人を巡るお話が転回していきます。次に、オノッチとキヨッペのコンビがとっても良いです。2人はピザ・アミーゴのアルバイト店員です。
オノッチ(超今風な若者、結構真面目)、森山未来君が演じてます。素早い動きのダンスがとても良い!!台詞も速いテンポだけど、上手く交わしているし、役に真剣に取り組んでいる感じで、好感度大。
キヨッペ(超今風な女の子だけど、根が真面目で将来の事を真剣に考えている)堀内敬子さんが演じています。オノッチと恋人同士。オノッチとのフィンガーダンスが素晴らしい!!はじけそうな高音台詞や笑顔がとてもチャーミングです。堀内敬子さんは「歌も上手いし…」と思っていたら、劇団四季卒業後、ミュージカル界で結構ご活躍だそう。『レ・ミゼラブル』のコゼット役をやった事もあると言うから脱帽です。
アミーゴの店長はムラキさん(小林隆さん)、50代後半で小心者だけど心優しいのが1番の取得、縺れた糸がさりげなくほどけるのも、この人が1役かっています。最後の最後にどういう風の吹き回しか、直ちゃん扮するミチルといい仲になるのですよ。(笑)
次はマキさん(草刈正雄さん)、高級自家用車を乗り回す通称ジャガーの男で、ピザ・アミーゴの社長です。背広姿がなかなか格好良いですよ。ここで「エレベーター♪エレベーター♪」の歌が出てきます。エレベータ式に上り詰めた社長の座ですね。奥さん持ちなのに、アベコに恋して振られるから、こう言うことは上手くいかないらしい。秘書の八木ミチルにもつまみ食いをするから、逆に鬱陶しい程追っかけられるはめに…。
そこで、八木ミチルをご紹介します。伊織直加さん演じる社長の秘書です。特上美女で、ファザコンとか言われてます。つまり、エレベータ式にエリートなボスを狙っていますからね。「エレベーター♪エレベーター♪」と歌いながら、執念深く相手を追いかけて、事の次第をまぜっかえす悪女です。「森へ行きなさぁ〜い!森へ〜ナイフとフォーク♪ナイフとフォーク♪」と悪女は歌い叫ぶ。でも、ほんとはそんなに悪くないのよ、ムラキさんと言う適当なお相手が見つかって、まずは目出度し目出度し!
アベコの親友トリコを三鴨絵里子さんが演じてます。のんびりとした独特のキャラクター作りは(腰が引けて顎も胸も出てるけど)立っているだけでユーモラスです。恋人の好みが奇妙で、目の下にクマが出来るほど奥さんにびくびくしながら不倫をする男が好みとか〜、全く悪趣味ですねぇ〜。その上、飽きっぽい!なのに嫌味が無いし、適度に友達思いだから憎めない人物です。
そのトリコさんの現在の恋人がババさん(名前は馬場なのに、目の下にクマがあるので、クマちゃんと呼ばれてる)。近江谷太朗さんが演じています。クマちゃんはトリコさん好みで、奥さんにびくびくしながら不倫してます。友達の急場である肝心の時に、つい、余計な事を言ってしまうから笑えます。
其々が自己中心的なんだけど、実は皆、とても友達思いだから、こんがらがった糸もいつか丸く修まりました。
直ちゃん(伊織直加)も出番は少ないけど、強烈なインパクトで毎回登場。オレンジとうぐいす色のスーツ姿が決まっています。千秋楽に近づくにつれてテンションも更に高くなっていきましたよ。
速テンポで飛び交う台詞、役と真剣に取り組んでいる出演者達を観ているのが、とても気持ち良いですね。お洒落に歌とダンスが織り交ぜてあるのも素敵です。センター外のゴミ袋との戯れダンスも面白いですね。
老若男女、誰が観てもそれなりに納得するようなガイドブック?になっているから作・演出者である鈴木聡さんは凄いです。もちろん音楽も大変良いです。大入り満員だった事も嬉しいし、観客の私達もよく笑って、楽しかったです。
そう言えば私は行った事がないけど、新宿から程近い中野坂上にはピザアミーゴのお店があるそうです。もしかしたら、歩道橋もあるのかもね?今度機会があったら見て来ようっと!観劇後はエレーベータソングと、フィンガーダンスが耳に残ってしょうがなかったです。(笑)
この後の大阪公演の方も大入りで、全体的に更なるテンションアップだったそうですよ。
Yuko 2005年6月13日記