レビューデラックス 満天星大夜總会 スターダストパーティ

宙組大劇場公演(’03.2/21〜3/31)宙組東京宝塚劇場公演(’03.5/9〜6/22)

作・演出 齋藤 吉正

第1場   熱烈歓迎

純真青年(和央ようか)がオケボックスの中央からいきなり登場、青いジャンパーにカーキー色のダブダブズボン、真っ赤な帽子に赤い手袋と赤い靴、片足で盛んにリズムを取りながら、「熱烈歓迎、ようこそ〜♪」と上海、香港の大都会に夢を馳せて、観客を夜の街に誘う。なかなかお洒落で、背中の黒い般若面が活かしてる。客席も手拍子で最初からノリノリである。

第2場〜第3場  歌舞般的飛翔

妖麗な孔雀(花總まり)が登場、赤にグリーンの配色で思い切ったいでたちをしている。舞台両脇には赤龍の目が光り、口から煙を吐く!美羽あさひ他、数人の孔雀がバックで踊り、なかなか見応えのある序曲的場面である。舞台が明るくなると、そこは煌びやかで華やかな紫禁城風なキャバレーとか…。白いドラゴンに変身した純真青年(和央ようか)が中央のセリから上がって来る。緑のドラゴン男役達が、華麗に歓迎する。再び赤孔雀の花ちゃんが現れて、デュエットを組む。グレーとダークグリーン姿のドラゴン、水(水夏希)さんと直ちゃん(伊織直加)が順に現れる。主要メンバーが銀橋へ、舞台両脇の見事な龍の目が光り、背景は光沢感のあるゴールドに輝き、流星が飛び交う華やかな幕開きとなる。

第4場  麗美優時空

早くも衣装替えしたドラゴンたか子さんが、下手花道袖から銀橋に現れた。手招きで4匹の可愛いパンダを呼ぶ。音乃いづみ、和音美桜、咲花杏、華凜もゆるの4人で、ふっくらとしたとても可愛いパンダごときちゃんである。ゆっくりとじゃれ合いながら歌い、銀橋を通り過ぎた頃、下手の花道セリからポニーテールにミニスカートのキャピキャピ花ちゃんが後ろ向きで上がって来る。

第5場〜第6場  銀幕街頭

花ちゃんは(花總まり)は、スリ名人のイカれた女の子で、HANASHANGと呼ばれている。今日の獲物は、マフィヤのボスや社長さん。銀橋を歩き、下手花道にやってきたボス(美郷真也)とのすれ違い様にお財布を頂戴した。その腕は抜群!(笑)。警官が4人追っ掛けて来るが、やり過ごす。

舞台中央から今や大スターと呼ばれる電影明星(椿火呂花)が、胸を張って顎を上げて登場。時には黒っぽい長髪で、白い上等なチャイナドレスを着こなしている。紫のイブニングドレスにオレンジの羽根ショールを纏ったスターの愛人(彩乃かなみ)が、華やかで大人っぽい雰囲気を撒き散らせて、いつも着きまとっている。そこへHANASHANGがスターに憧れて、サインをせがむが、「子供は相手にしない!」と平手で突っぱねる。
出雲綾、風輝マヤのスカウトマンが花ちゃんをスカウトし、「今や、新人アイドルの誕生!」と宣伝して歌う。

花ちゃんは可愛い女の子に変身し、新人アイドルが誕生した!!街は大騒ぎ!かつてのスターは下火となり、HANASHANGは社長もボスも、警官も店員も乞食さえもが憧れる人気の的となる。意気揚揚とHANASHANGが銀橋を渡ると、反対方向からかつてのスターがやって来て、すれ違う。おや、やっ??花ちゃんのチャーミングさにスターはひざまずき、2人は握手。愛人がびっくりして、怒り狂うが相手にされない。

HANASHANG人気はうなぎ昇り、背を向けていた愛人も最後には納得、花ちゃんのとりこになってしまうから笑える。ここでは出演者全員が個性的に演技をしているので、ほんとに笑える。馬鹿馬鹿しいようだけど、楽しいし、飽きない風景です。(社長の右京さんなんて、毎回ノリノリだよ!笑)

第7場〜第9場  大聖悟空

舞台奥から孫悟空(和央ようか)が登場して、銀橋に向う。たか子さんの赤い孫悟空衣装はピッタリと似合っていて、なかなか格好良い。舞台は暗闇に煙り、新たな2対の龍が無彩色に描かれた背景となる。赤と青の珠が其々に光り、男女の龍を現わしているのだろうか、昇る姿と下に這う姿が立派に描かれていて、感心した。

この夜更けの街に、金閣(水夏希)と銀閣(寿つかさ)を頭にした妖怪達がやって来て、辺りに蔓延る。そこへ迷い込んだサンゾウ(美羽あさひ)と言う人間の女の子が、食い物にされようとしている。声の出ない女の子は通りかかった孫悟空に手話で助けを求めた。スローテンポの音楽が流れ、2人だけの素敵なダンスになるが、美羽あさひのしなやかな振りにウットリとさせられる瞬間でもある。

音楽は一転し、リズムが変わり、争いのダンスとなる。この早業が皆意気投合していて、また、実に気持ちが良いのだ!トップたか子さんの見せ場のひとつでもある。振り付けがKAZUMIーBOYさんとやら、今風ダンス振り付けで、かつての宝塚とは一味違い、フレッシュさを楽しめる。

悪が滅び、辺りは静寂さを取り戻す。孫悟空は歌いながら、銀橋へと歩き出すと、サンゾウがためらいながら後を追う。そのしぐさが遠慮がちで可愛らしい。舞台はいつの間にか三日月が昇り、辺りを明るく照らし出し、2対の龍の絵が影絵のように浮き出ている。孫悟空とサンゾウは月を仰ぎ、仲良く下手に去る。

第10場〜第15場  満天星大夜

下手花道袖から、赤いコートを肩に掛け、黄色いスーツに同色ソフト帽の直ちゃん(伊織直加)を先頭に、男役ギャング軍団が歌いながらやって来た。銀橋には笑顔一杯の男役が勢ぞろい、超明るくて格好良いよ。お好み次第と言う感じかな…。
直ちゃんギャングだけが残って、赤いコートを羽織ると、舞台の向こうに可愛い男装の女の子ミンミン(花總まり)の姿が見えた。真っ赤なパンツスーツにピンクのコート姿の彼女向けて、直ちゃんギャングがアプローチ、銀橋で軽くディエットするが、舞台に戻ってさりげなく逃げられてしまう。
水さん(水夏希)ギャングが登場し、直ちゃんと歌う。直ちゃんがチャイナドレスの女ギャング達と下手に消え、水さんが銀橋へ、お色気マヌエラ(彩乃かなみ)が登場、ギャング達を虜にするがボディガード(遼河はるひ&悠末ひろ)が着いている。
マヌエラは水さんと連れ立って、下手に消えると、舞台の盆が廻り、階段上にタンタン(和央ようか)が紫のスーツに赤いコートを肩に掛けて格好良く登場、長身だから着映えがするなぁ〜。ミンミンが再び現れ、意気投合し、仲良く歌いながら銀橋へ。

舞台は一転、合同結婚式へ

舞台奥から直ちゃんとかなみちゃん新郎新婦が現れる。早口言葉(音楽リズムが早いから)で凄く楽しそうに歌い踊る。水さんカップルも登場。水さんのお相手は、普段は男役だけど下向き加減でお目目パッチリの可愛い初嶺麿代さん。続いて、椿さんと美羽あさひさんご夫妻も登場、グレーのモーニングに白いドレスの花束を抱えた新郎に新婦。歌詞が早口言葉で何やら面白い。

『嬉し恥ずかし、イェイェイェイ〜♪、何んでやんで、気に掛るぅ〜、うぶな振りして舞い上がる〜、それが好きなのわたしゃぁ〜♪なまじ東京の女じゃぁ〜、金も掛るしイェイェイェイ〜♪、情もクソもなくぅ〜、私の負けだわぁ〜、夜がしみじみとぉ〜』

記憶の所々で、まぁ〜こんな感じかな。(笑)リズムも凄く軽快だし、踊りながらで、よく言葉を間違わないと思う。全員が新郎新婦のカップルとなって盛大に盛り上がった所に、御大将カップルが現れる。たか子さんと花ちゃんカップルだ。衣装も色合いは皆と同じだが、ひときわ豪華で、花嫁の衣装が特別に可愛いし、花ちゃんの長い御身足が美しく目立った。客席も一体となって手拍子、主要カップルが銀橋に並び、宴たけなわとなる。

一旦、暗転となり、再びライトが当たると、花嫁(花ちゃん)1人に新郎(たか子さんと直ちゃん)2人が残っている。『常夏の島へ泳ぎ出すのよ、あっはん、ハネムーン〜♪、準備は万端、こさかりてぇ〜、貴女と行きましょう、何処までも、アバダバダ、ハネムーン〜♪』ハネムーンへ旅立つ歌の掛け合いで銀橋へ。花嫁をめぐって、2人の新郎の早口テンポ歌が楽しい。もつれ合いながら銀橋を渡り終わった所で、「イェイ!」と3人がポーズして終わる。

第16場〜第17場  星辰童話

下手花道から星の青年(水夏希)がせり上がってくる。幾千年もの昔、星の世界に起きた愛の物語が、今、始まろうとしている。舞台は灰色、星の砂漠をイメージしてある。

砂漠には1人の少女(彩乃かなみ)が助けを求めて、青年と歌い交わす。2人共グレーの衣服に手錠をはめている。上手セリからは赤い煙が上がり、さそりの頭(寿つかさ)が現れた。めぐり会い、愛し合う2人は、蠍達に引き裂かれる。2人の愛の力で、手錠が熔けたというのに、少女は蠍頭に毒を飲まされてしまい、蠍の女王と化する。女王は青年を我が手に捕らえ、不気味な笑いを浮かべて、中央のセリに下がる。

かなみちゃんの演技も善から悪へと、優しさから恐ろしさへと変わり、舞台背景の稲妻も凄い!羽山紀代美先生の振り付けだったんですね。何度観ても、見応えのある場面です。

第18場〜第19場  異邦悲恋

上手花道袖から詩人(和央ようか)が登場、男女の悲恋物語を静かに歌い語りながら、銀橋を渡る。水色が所々に入ったストレートな白長髪に、上質の白いチャイナ服が上品さをかもし出している。

娼婦(出雲綾)が怪しげに歌い、幕が上がると、ここは娼婦の館。下手花道袖から人影が銀橋に向う。立ち止って帽子を取ると、ライトが顔に当たる。海軍兵ジョー(伊織直加)の帰還である。懐かしい港町に辿り着き、かつての恋人涛麗(椿火呂花)を思う。ところが彼女は娼館に売られ、アヘンにおぼれている事を、少女の娼婦(咲花杏)に知らされる。驚いたジョーは涛麗を救い出そうと娼館に飛び込む。2人の再会も虚しく、顔役や他の用心棒達に、散々邪魔され、痛めつけられる2人。あげくに館は火に包まれてしまい、逃げ場を失った2人は、永遠の愛を誓いながら、炎の中に消えてしまう。実際は舞台中央にて、せり下がる。

直ちゃんの白い軍服の格好良さ!椿さんは上品な女役で、ピンクのチャイナドレスがとても可愛らしく、2人並ぶ姿は絵になるほどに美しい。
ファンの間での希望も多かったであろうこのコンビ、実現出来てほんとに良かった!炎(前回の宙組公演ダンシング・スピリット)で出会い、炎の中に死するご両人様。(笑)振り付けは御織ゆみ乃先生、速いテンポで繰り広げられるストーリーで、よく纏まっていると思うけど、ゆっくりたっぷりと観たくもある。

第20場  白翼伝説

このままでは、あまりにも悲し過ぎるので、舞台は白翼飛びかう天空、昇天となる。
たか子さんが白翼となって、舞台奥から登場、真白いカーテン幕で天空をイメージ。やがて、白翼の群達が飛び交うように現れる。次々とほぼ全員登場。水さん中心に踊った後、直ちゃんと椿さんが走り出て来て、優しく寄り添う。そして、たか子さん中心に直ちゃん、水さん、かなみちゃんが前列に並ぶ。ここで、必ず直ちゃんとたか子さんが申し合わせたように目を合わせて微笑み合う。これが何とも言えず良い気分だ。昇天だから嬉しいのかもね。客席は手拍子となり、前列隊が銀橋へ、こうして明るく晴れやかに終わる。

第21場〜第23場  婀娜百図

上手花道袖から男役と下手花道袖から娘役が其々3人づつ現れて、銀橋で明星カップルが誕生。メロンにレモン、オレンジと三色のカップルはフレッシュで美男美女揃い(椿火呂花、華宮あいり、遼河はるひ、美羽あさひ、音乃いづみ、和音美桜)。各々が歌う度に客席から暖かい拍手が沸き起こる。気分良く観ているのに、「もう、フィナーレかぁ〜」といつも名残惜しく思う場面でもある。

3人組のカップルが明るく元気に去ると、舞台の幕が開いて、紺色のアダルトな明星カップルが登場。水さんとかなみちゃんである。飛ぶように舞台奥から現れて、銀橋に走り来る。落ち着いた雰囲気で歌い絡む、紺色が水さんらしくて、とても似合っている。舞台では8人のお姉さま達が美しい声で歌い踊っていた。

そして、龍をイメージしたドラゴンロケットへ、全員濃いブルーで結構地味。

黒エンビのダンス

ロケットが決めのポーズを取ると、バックの幕が上がり、大階段上には逆三角形に板付いた黒エンビ男役が勢ぞろいしていた。客席から気勢を発するほどにビシッ!としている。これぞ宝塚である。逆三角形の頂点は直ちゃんで、その顔にライトが当たる…。『アンチェイン、マァーイ、ハート〜♪〜』直ちゃんの低音が響き渡り、場内総てが息を止めているかのように直ちゃんを見つめている。声が豊かに伸びて、伸びて、『ウォ〜フォ!』とため息のような掛け声を発すると、場内から突いたような拍手が起こる。いよぉ〜待ってましたぁ〜、直ちゃん!と言った感じで…。

金管楽器が奇妙な音色を奏で、黒エンビのダンスが始まった。舞台中央のセリから御大将のたか子さんが気取ったそぶりで、超格好良くお出ましである。全員が階段を降り、舞台はたか子さん中心に黒エンビの総踊りとなる。宝塚における最大の見せ場とも言われる男役の黒エンビダンスは、彼等の目線が一直線で、その線上に座した時にはドキドキとさせられたものだ。

たか子さん中心に決めのポーズで、一旦、暗転になり、ほとんどの男役達が舞台袖に去って行った。大階段上には、落ち着いたオレンジ系のドレスを着た花ちゃんがスタンバイ、「あぁ〜待ちわびたぁ〜貴女との〜♪」と影ソロ(鈴奈沙也)が流れて、花ちゃんのダンスが始まる。舞台中央ではたか子さんが袖口のボタンを整えながら、やがて来る夢の訪れをこの手に受け止めようと、男らしく待つ。

舞台の上手よりにライトが当たり、直ちゃんがソロを務める。「たぁ〜、旅立ちはァ〜、グッバァーイ、言葉もなぁーく、あぁ〜流れゆくぅ思い出はぁ〜、君との日ぃ〜♪」、くるりとターンをして階段を上がる直ちゃん。たか子さんと花ちゃんは直ちゃんの歌に乗せて、舞台中央で夢のひとときをゆったりとデュエットダンスしているはず。いつも私のオペラは直ちゃんを追っているから、二人のダンスが観れない状態で、すみません。後ろ向きに階段を上がり、中段辺りで正面に向きなおる。「そこから客席に対しての風景を目に焼き付けている」と直ちゃんが言っていたのを何処かで聞いたことがある。

階段を斜めに駆け下りて、下手脇で、直ちゃんの心を込めたソロがフィニッシュ。舞台中央ではたかこさんが花ちゃんをリフトし、何回も回転しているはずなのに、一度も見た事がない私。ごめんなさい。客席は割れるような拍手喝采が起きている。
どの場面も良いけど、男役最後の舞台であるから、毎回ここはゆったりと時が流れ、堪能させられている。

第24場 パレード ーThe star Dust partyー

「さぁ、時間ですよ」と言わんばかりのパレードが始まり、3人のエトワールが降りて来た。赤龍達の華やかなパレードになる。順に大階段を降りて挨拶、其々主題歌を歌い継ぎ、大きな赤い羽根を背負った直ちゃん赤龍が歌う。やっぱり、直ちゃんには赤エンビがとても良く似合う。退団公演が赤で本当に良かったと思った。

「満天星大夜總会」は見応えのあるショー作品であり、場面場面、スターの個性が生かされ、見所満載であった。齋藤先生の演出・構成もなかなか良かったんだと思う。

03.7月2日yuko記

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