★★砂の戦士たち★★

2003年11月11日(火)〜11月19日(水)池袋サンシャイン劇場

演出・振付 謝 珠栄

企画制作 TSミュージカルファンデーション

出演者

石川禅  駒田一 平沢智

本間憲一 吉野圭吾 坂本健児

横田栄司 川本昭彦 福永吉洋

幸村吉也  縄田晋 阿部よしつぐ

伊織直加

ストーリー

80年代の日本、ある小さな劇団が1つの作品を上演する。それによって起きる出来事や、それに携わる若者達が作品を通して、仲間とか家族を見つめなおし、其々の歩む道を考える。
その上演作品とは、ブラジル文学の『砂の戦士たち』を舞台化したものである。

《1930年代のブラジルは、世界恐慌にによるコーヒー価額の大暴落を諸に受け、貧困と動乱が渦巻く激動の時代だった。恐怖、絶望、いらだち、飢餓にあえぐ親達は生きる為に仕方なく、子を手放し捨てた。
小さな港街であるサルバドールの朽ち果てた倉庫には、女子供が方を寄せ合い、生きる為に犯罪を繰り返していた。やがて、彼らは自らの一団を砂の戦士!と呼ぶようになった。》

稽古場の床下から寺田が現れ、彼の語りで物語は始まる。

「人の時間は砂の流れのように、いくらそこに留め置こうとしたところで、指の隙間から零れ落ち、やがて消える。そして、後に残るのはそこに確かに砂があったと言う感触だけだ。でも、僕は決して忘れない、その感触を!僕の手の中にあるあの確かな記憶を…!!」

音楽(作曲、斉藤恒芳 YANCY)27曲からなるミュージカルナンバーは大変素晴らしく、サンバやボサノバのリズム、セレナーデや哀しい曲もあり、砂浜をイメージした描写的な音楽もある。

砂の決闘〔少年達が砂浜で走り回り、飛び回り、今日も必死で生きている。ペドロとボルタの争いとなり、リーダーが決まる〕

何故?〔少年達は何故捨てられたのか?闘い抜いて生きるぞ、きっと答えを見つけてやるぞぉ!とペドロ中心に力強く歌います〕

上屋倉庫〔海辺の倉庫を根城とし、今日も少年達は生きる。ガトの歌、仲間同士の争い〕

砂の戦士たち〔サンバ調でボア・ビタの歌です〕

ぼくらの箱船〔砂浜、ボア達、そして劇団員たちの歌〕

喜びの光の中の、哀しみ〔プロフェソール、ペドロの歌です。歌詞も音楽も色彩的ですね。〕

父、ライムンド〔ペドロの歌〕

さよならのサンバ〔ギターを抱え、サンバを歌うボア〕

金持ちの息子〔金持ちの家に行ったきり、8日も帰って来ないセンイを疑って、ガトを初め、グリンコやボアが歌う〕

おふくろの匂い〔優しさに心を動かされたセンイの歌〕

俺たちはどこへ流れてゆくのか〔虚しい現実、やり場の無いいらだち、研究生達の歌〕

メリーゴーランド〔移動遊園地に雇われたガト、仲間をメリーゴーランドに乗せてやると歌う〕

逃走のダンス〔警察に追いかけられる少年たちが逃げ回る〕

ドーラの危機〔現れた女の子ドーラをめぐってジョアン、ボルタ、ガトが争い歌う、狂気のような歌〕

漂う小瓶のように〔帰る場所の無い私、ここに居られればいいと歌うドーラ、直ちゃんの歌とダンス場面〕

仲間〔寺田さん、井坂さん木村さん、広瀬さんが仲間について歌う〕

ドーラ・母・妹・恋人〔臭い、臭い、これ何の匂い?盗んだ石鹸を掲げ、ドーラを中心にして皆が歌う楽しい洗濯の場面。皆の女神のような存在になるドーラ。〕

街の天然痘〔菌の繁殖をイメージした白い踊りです。睦田さんが歌い踊り、井坂さんもいます。みんな白い奇妙な帽子を被っているので、誰だかはっきりは判りません。〕

神様の罰〔アルミロの死。悲しみ…。どうか安らかにと皆で歌う〕

刻み込まれた憎しみ〔アルミロの死で、ボルタが力強く立ち上がる。お前の分まで生きてやるぞ!と歌う〕

星のムラート〔勇敢な男は心臓に星を持っている。「ペドロを宜しくな、あの人の力になってやってくれ」とプロフェソールに言い残して去って行くボア。とても爽やかで、美しいボアの歌声がいつまでも心に響く〕

自分を信じて〔やっと、仲間の意味が少し解り掛けてくる。団員達の気持ちが1つになる時。神山さんを初め千島さんや劇団員達の歌です。「なんか素敵、今の感じ、とっても暖かい〜」と千島さんは迷惑を掛けたお詫びに松坂牛の大判振る舞いをする。〕

ドーラそしてペドロ〔ペドロとドーラの悲しみの2重唱です。直ちゃんと石川さんのラブシーンがあり、最も美しく、悲しい場面です。〕

終わりの日・始まる日〔ドーラの死、残されたものの悲しみの歌。そして始まりの歌です。寺田、プロフェソールが力を込めて皆を勇気付け、励ます。劇団にも作品にも通じる歌、合唱がとても綺麗です。〕

新しい旅立ち〔砂の戦士達の新しい旅立ちです。それぞれの特質を活かし前向きに歩む時が来ました。全員がそれぞれの道に思いを馳せて歌います。〕

サーカスのブランコ乗りに〔センイだけは違う、生まれ変わって、新しい自分になりたいと砂浜を駆け巡り、自ら命を絶つ〕

こうした音楽が奏でられ、歌われながら、格闘技的なダンスや、カポエイラ、サンバなどが繰り広げられてゆき、物語は転回していく。

出演者には芸達者が勢ぞろいしており、チームワークも抜群で、素晴らしい成果を上げていました。

石川禅
劇団では神山さん。亡き前任者の後を受け継いで、この公演を企画した一座のリーダー的立場にある。正当派青年である。
劇中劇『砂の戦士たち』ではペドロ。砂の戦士のリーダーである。皆を幸せにしたいと願い、仲間の個性を尊重し、揉め事を静めたり、皆の良き理解者である。後にドーラの恋人役になるが、はかなくもドーラを病で亡くしてしまう。そしてその後、ペドロは自分について来る仲間達とこの街の明日を守る為、誇りを持って、希望と言う力で戦う。貧しい労働者の為に戦い抜いた革命家の父、ライムンドのように…。
〔役柄が2枚目肌で、この人の歌が素晴らしい!!元々歌に定評があったが、演技や台詞回しもなかなか上手い!ダンスは苦手みたいだけれど、やっぱり素晴らしいと思った。〕

次にあげたいのが横田英司
劇団では寺田さん。唯一、部外者である。神山の友達(知人)で原作『砂の戦士たち』を紹介してくれた人。クールに劇団を見つめており、がんじがらめが嫌いで1つの劇団には所属せずにマイペースで生きている。
作品製作に加わっていくうちに劇団員達に愛着を覚え、意欲を燃やし、熱い心で良きアドバイスを送っている。ところが、開幕を目前に、過労で倒れた千島を見舞った帰り道、バイクで転び、命を失ってしまう。その後も寺田の魂だけが、仲間として作品に参加している。物語はこの人の回想から始まり、回想に終わる。〔これが何とも言えなく悲しいし、残念で仕方がない。私としては1番涙を誘う所である。〕
劇中劇の役は、プロフェソールである。仲間の中で唯一、字が読めるので、少年達に物語を聞かせてやっている。絵が上手くて、将来は画家になりたいと夢を抱いている。落ち着いていて静かな性格、ジョアン・グランジから信頼されている。
〔横田さんは台詞回しがとってもしっかりしている。大柄で、雰囲気的にモサッとしている(役柄)のに、大変好感を持つ人である。この役柄は当たり役ですね。〕

坂元健児
劇団では睦田さん、いつも筋トレに励み、徹夜で振りを練習するほど稽古熱心であるが、公演真近かで足を捻挫してしまう。公演が始まると、痛いのも忘れて一生懸命やってしまう。
砂の戦士ではボア・ビタ。爽やか系で楽天的な性格、いつもギターを抱えて、美声を聞かせている。波打際のサンバや歌声が印象に残る。後に天然痘を発症し、軽いうちに人知れず仲間から去り、治療施設に行く。「ちょっと行って来る…、ペドロを宜しくな、あの人の相談役になってやってくれ」と、自分の事より人の事を気に掛けている。「行っていらっしゃい…」とプロフェソールだけが見送る。
そして、「いくら答えを先送りにした所で、答えを出さなくてはならない事には代わりない。それが大人の判断と言うものだ…(泣)。君は凄い、心臓に星を持つ男は勇敢だ!いつかきっと君の絵を描くよ!」とプロフェソールは叫ぶ。
〔そんな光景がとても良く、『星のムラート』の悲しいメロディがいつまでも心に響く。坂元さんは今年帝劇で『レ・ミゼラブル』のアンジョルラスに挑み、ますます人気を高めている人。少し小柄だけど、爽やかな風貌でギター語りが良く似合う。アクロバット的なダンスも抜群で、大変活躍していた。〕

駒田一
劇団では黒藤さん、ユニークな存在で、女性が好きで、ちょっとエッチかな。人の名前をいつも間違うところが特長。筋トレも要領がいい。おじちゃんっぽい。
劇中劇では、悪役みたいな血の気が多いボルタ。最初の仲間争いでにペドロに負け、リーダーの座をペドロに譲った。強さでは2番手格。逆上しやすく危険な男であるが、まだまだ子供。母の首領、代父ランピオンのように、将来は山賊になりたいと思っている。
〔『新しい旅立ち』を力強く歌っています。『レ・ミゼラブル』の悪親父テナルディエがボルタの中に結構入ってます。〕

平沢智
保川さん、結構醒めた存在、役者としては、さほど才能が無い事を自分で解っている。この作品が終わったら劇団を辞めようと思っている。
砂の戦士ではセンイ。足が悪く、いつも1人でいる。幼い頃に大人達から受けた虐待によって、心を捻じ曲げられ、捻くれ者である。が、誰よりも自分達の不幸を憎んでいる繊細な少年である。
最後は、「何かが違う!自分を誰かに認めてもらいたい、愛されたい!」と、砂浜を駆けて駆けて駆けて、新しい生まれ変わりを夢見ながら自殺してしまう。
〔平沢さんは以前から芸達者で、演出や振付けも手がけている先生でもある。身軽で、今回はアクロバット的なダンスでも活躍している。〕

本間憲一
劇団では木村さん、気が短くて自分中心的な感じ。怒鳴っている場面が目立つ。
砂の戦士では心優しいジョアン。男らしく兄貴肌でもあり、両親を亡くしたドーラを仲間に加えようと、命がけでドーラを守る。相談事は尊敬するプロフェソールに持って行く所が、ユニークで笑わせてくれる。ダンス面でも大活躍です。
〔『キス・ミー・ケイト』では直ちゃんがお世話になりましたね。今回の劇中劇でも大変お世話になってますよ。(笑)〕

吉野圭吾
井坂さん。この小さな劇団に見切りを付けて、稽古もあまり熱心ではない。新しい世界のオーディションを受けてみようと両天秤に掛けている現代ッ子。
砂の戦士ではキザっぽいガト。のっぽでハンサムな青年、デカイ指輪なんかしてお洒落だ。態度も横柄でお金をくれる35歳の売春婦に入れ込んでいる。やがては、その女と詐欺師を目指すらしい。
〔今年から『レ・ミゼラブル』でも活躍していましたね。低音の魅力で、今回の個性的な役がなかな上手く、いい味を出しています。ダンス面でも相当活躍してしており、重要人物ですね。〕

そして、直ちゃんこと伊織直加
劇団では千島葉子さん。知的な女の子で、他に仕事を持っていて、忙しくしている。初めは劇団合宿ににも3日間しか参加出来ないとか、皆に迷惑を掛けていた。過去に劇団経験者でもあり、冷静な判断力がある。やがて、仲間の意味や作品を作る事の意味を理解し、仕事を調整して協力する。ところが、気を使ったり、無理をした為に倒れてしまい、ちょっと入院してしまう。
砂の戦士では唯一女の子のドーラ。天然痘で両親を亡くし、行き場がなくなり、途方にくれている所をジョアンに助けられ、砂の戦士に入れてもらう。そして、愛に餓えていた戦士たちの良き母であり、恋人であり、妹のような存在となる。ドーラが来た事で皆の心が大変和み、洗濯場面が微笑ましく、楽しい。
がしかし、彼女も天然痘が発症するのか、高い熱に見舞われてやがて命を無くしてしまう。死ぬ間際は以前から憧れていたペドロと2人っきりになり、ひとときの幸せの中、息を引き取る。ペドロとのデュエットソング『ドーラそしてペドロ』が哀しくも美しい。そして、ドーラの死を悼み、蝋燭を手にした少年達の悲しい歌声が響く…。
〔紅一点の直ちゃん、良い作品に恵まれて、良い役柄でしたね!皆に愛されて、惜しまれて、はかなくも神に召される役ですからね…。とっても可愛らしく、綺麗で、優しい歌声でした。本間さんとのダンス場面もちょっとありましたね。〕

川本昭彦
守島くん。黒藤さんに、よく守山君とか言われていた。(笑)彼の家は代々共産党だとか…。
砂の戦士ではピルリト。倉庫の隅に膝まづいて、聖母の優しい愛を見つめ、自分達の惨めな境遇から脱出を願っている、おとなしい少年。後には修道士を目指すそう。
〔この人も美声で、歌がいいですね。〕

福永吉洋
広瀬さん。愛すべき独特のキャラクターだ。食後なのに、いつもアンパンとかソーセージをかじっていて、食いしん坊。研究生の1人なのにあまり仕事をせず、のほほんとしている。
砂の戦士ではグリンコ。ここでもお調子者かな。平凡なのに存在感は充分あるし、劇団では河原さんにドラえもんにしか見えないなんて、千秋楽だったかに言われてましたね。
〔福永君は弟がいて、弟も役者で、私達は、よく福永お兄ちゃんと呼んでいました。宝塚OGの高嶺さんつながりで懐かしかったです。〕

幸村吉也
河原さん、研究生の1人で、皆の洗濯係になり、他の研究生に当り散らし、よく癇癪を起こしている。お父さんが病気で倒れ、途中で国に帰るが、本番になったらちゃんと戻って来た。後には郷里に帰るそう。
砂の戦士では、小柄で最年少のアルミロ。真先に天然痘に掛り、死んでしまう。
〔この場面はクロ−ズアップされていて、彼の身体に天然痘の菌が繁殖する様をダンスで表現しています。少し不気味ですが見事な一場面に感心しました。〕

縄田晋
関口さん。研究生の一員でカレー係、食事当番。鍋を片手に河原君の愚痴を聞いてやる。スラッとしていて、好い男だ。
砂の戦士ではバランダン。のんびり屋で、何処までもペドロについて行き、果てはリーダーになるとか〜。
〔『エリザベート』のトートダンサーや、『モーツアルト』にも出ていたらしい。ミュージカル界でご活躍なんですね。さすが、身軽な動きが凄い。〕

阿部よしつぐ
竹村さん。初め、千島さん(直ちゃん)の代役をするから女性かと思った。実は堀の深い顔立ちで、色白の美男子だった。研究生の1人で、才能が無いから裁縫係だそう。やっぱり女性っぽいな。
砂ではエンリケ。グループの中で1番気が弱いらしく、あまり目立たない存在。
〔初めに観た時はピルリドと区別が付きませんでした。結構、人気があって、ファンに囲まれていました。実際も優しそうですね。〕

以上13人の出演者でした。個性豊かで一人一人が目立ちます。全員が役柄によく合っていたと思うし、また、その役に成り切っていたと思います。

ストーリーの結末

公演は無事に終わった。怪我をした睦田さんも、国に帰っていた河原さんも、過労で倒れた千島さんも、寺田さんを除いては全員戻って来ていた。「寺田さん見てくれてたかなぁ〜?」と誰かが言う。
全員が稽古場に一列に並び、神山さんが舞台の前方を見つめながら

「寺田!お前のおかげでここまで来れたよ、皆帰って来てくれたよ、お前だけがいなくなったけど…。あのなぁ〜、今日、無事に千秋楽の幕が降りたよ!劇団に残る者、違うメンバーで仕事を続ける者、新しい生活を始める者。誰もが後悔してない、誰も過去を責めてはいない、誰もが過去にしがみ付いていない。自分の意志で自分の未来に目を向けている。寺田、プロフェソール、あの日、君が言った通りだ、君のおかげだ!有難う!」
神山の声を聞いた寺田の魂は、自分が死んだ事に気付き、安心して、稽古場の床下に消える。追悼の音楽が流れていく…。

〔ここが何と言っても悲しくて、残念でたまらなく、涙を誘います。直ちゃんも毎回泣いていました。自分の見舞いに来てくれた帰り道に、寺田は死んだのですからねぇ〜。千島は辛いでしょう。〕

そして、この話のテーマともなる仲間を意識した寺田の言葉です。

「人の時間は砂の流れのように、いくらそこに留め置こうとしたところで、指の隙間から零れ落ち、やがて消える。そして、後に残るのはそこに確かに砂があったと言う感触だけだ。でも、それでいいんだ、幻なんかじゃない、僕は確かにここにいたんだ、仲間達と一緒に…!」

ー幕ー

音楽と詩が綺麗な作品で、演じる人の勢力が漲り、本当に心に残る素晴らしい作品だったと思います。

2003年11月28日Yuko記

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