月組公演『薔薇の封印』ヴァンパイア・レクイエム観劇記
2004.2/6〜3/21 東京宝塚劇場

紫吹淳のさよなら公演となった、小池修一郎、作・演出のヴァンパイア・レクイエム『薔薇の封印』は、なかなか凝った作品で、1幕目は2時代、2幕目も2時代と4世代に分かれている。正確には一幕の冒頭は現代で、2幕目の巻末も冒頭に続く現代になっている。
その間7百年もの年月が流れ、4時代の短編を繋げて、正義と悪の異なるヴァンパイアが葛藤しつつも生き続ける様を描いている。いづれの時代も大変上手く纏まっており、さすが小池先生の力作新開地ものだなと思った。

時代と時代の繋ぎ目は時の河が流れ、紫吹さんのダンスで表しているが、これがまた、お洒落であり、今までに無い変わった振り付けで、気に入った。リカちゃん(紫吹淳)だから出来るこの作品なのかも知れない……。
彼女は長身で恵まれた体型を持ち、ダンスの上手さは抜群、トップスターに価する風格と個性の強さで、この怪しげなヴァンパイアを上手く表現している。
垣間見る彼女のダンスは何と言っても見所であり、各時代ともに其々魅力的な風貌を装っていて、ベルリンにおける停電の場面では、シャンデリア上のラブシーンがとてもお洒落な演出で素晴らしい。終盤の現代ではワイン系のスーツをビシッと着こなし、ストールを襟元から流し、髪型も今風ショートで、なかなかに格好良いリカヴァンパイヤーだ。

その相手役であるエミクラちゃん(映美くらら)。この人は個性豊かなリカちゃんにしっかりと着いて行っており、以前よりも演技力がしっかりとしていた。いよいよ自立の時期でもあるし、大人のムードも大分出てきており、溌剌とした演技には好感が持てる。『大将となるにも〜♪、始めは二等兵〜♪』と歌い、赤の兵隊服が良く似合っていた。

次期トップとなる彩輝直は荒ぶるバンパイアとして、悪役を上手くこなしていた。なかなか憎々しげで、良かったと思う。

大空祐飛は意外にメガネが似合い、インテリ青年風で良い!!フランスの場面でも、国王の弟として、水色の豪華な衣装が大変似合っている。王に対する嫉妬で謀反を企てたりするが、全然憎めないキャラクターが面白い。黒燕尾のタンゴやフィナーレダンスもスッキリとして、目を引いた。

キリヤン(霧矢大夢)、フランス場面でバレー好きな国王として大活躍。クルクル廻るダンスはお見事!取り澄ましているのにユーモアがこぼれ、楽しい人だ。あの豪華で重そうな衣装を纏い、軽やかに踊るのは大変であろうに、観る度にその軽快さを実感した。

嘉月絵理のドクターも良かった!正義のヴァンパイヤに対しては敵役だが、個性的なメイクと演技が非常に面白いし、結末に白髪姿になって、ひっくり返る所は必見!(笑)

月船さららの美形とユニークな存在、北翔海莉の歌の上手さと、るいちゃん(紫城るい)の涼やかな歌声も良い。

それから、フランスの時代で、ハーフヴァンパイヤとなった紫水梗華はバレーが出来るんだ!綺麗な乙女に成長していて〜(笑)。しなやかにリカちゃんとデュエットダンスが、ちょっと嬉しい。『大海賊』や直ちゃん(伊織)の第1回目のディナーショーに出ていたからね。

フィナーレはキリヤンが銀橋で歌い、ラインダンスに誘う。その後、うんと洒落た白燕尾姿リカちゃんの歌とダンス、白燕尾の男役さん達がリカちゃんの周囲を踊り、エミクラちゃん、娘役達がバラ色のドレスで見送るように踊る。黒燕尾の男役達のダンス、其々がリカちゃんと絡み、丁寧に別れを告げるように踊ると、あぁ〜、この人も辞めるんだと言う実感が湧いてきた…。
パレードは、やはりヴァンパイヤの衣装で、娘役達も薔薇色のドレスを装い、十字架のシャンシャンを振って…。ダークレッドという落ち着いた色合いのフィナーレ色は、紫吹さんにはとても似合っていた。

この観劇記を出す頃には、この公演もサヨナラ千秋楽を終えているだろう。
紫吹さん、長い間、お疲れさま!今年7月、OG直ちゃんと共演作品『喝采』でお目にかかれることを楽しみに…。

2004.3/23 Yuko記

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