和歌と俳句

松尾芭蕉

夏

一 二 三 四 五 六 七 八 九 十

五月雨に御物遠や月の皃

降音や耳もすふ成梅の雨

杜若にたりやにたり水の影

夕皃にみとるるや身もうかりひよん

夕皃の花に心やうかりひよん

岩躑躅染むる涙やほととぎ朱

しばしもまつやほととぎす千年

五月雨も瀬ぶみ尋ぬ見馴河

なつ木立はくやみ山のこしふさげ

うつくしき其ひめ瓜や后ざね

たかうなや雫もよゝの篠の露

山のすがた蚤が茶臼の覆かな

富士の山蚤が茶臼の覆かな

雲を根に富士は杉なりの 茂かな

命なりわづかの笠の下涼み

夏の月ごゆより出て赤坂や

富士の風や 扇をのせて江戸土産

百里来たりほどは雲井の下涼

またぬのに菜売に来たか時鳥

あすは 粽難波の枯葉夢なれや

五月雨や竜灯揚る番太郎

近江蚊屋汗やさざ波夜の床

梢よりあだに落けり蝉のから

水むけて跡とひたまへ道明寺

あやめ生り軒の鰯のされかうべ

菖蒲生けり去年の鰯の髑髏