和歌と俳句

野沢凡兆

一 二 三

まねきまねき枴の先の 薄かな

百舌鳥なくや入日さし込女松原

吹風の相手や空に 月一つ

初潮や鳴門の浪の飛脚舟

物の音ひとりたふる ゝ案山子哉

上行と下くる雲や龝の天

稲かつぐ母に出迎ふうなひ哉

肌さむし竹切山のうす紅葉

立出る秋の夕や風ぼろし

世の中は鶺鴒の尾のひまもなし

灰捨て白梅うるむ垣ねかな

鶯や下駄の歯につく小田の土

骨柴のかられながらも木の芽かな

野馬に子共あそばす狐哉

蔵並ぶ裏は 燕のかよひ道

鷲の巣の樟の枯枝に日は入ぬ

鶏の声もきこゆる山桜

ある僧の嫌ひし花の都かな

はなちるや伽藍の枢おとし行

市中は物のにほひや夏の月

灰汁桶の雫やみけりきりぎりす

海山に五月雨そふや一暗み

綿ふくや河内もみゆる男山

こもりせで今年も萌る芭蕉哉

蜻蛉の藻に日をくらす流かな