和歌と俳句

蚊遣り 蚊遣火

一 二 三 四

眠たうてあごのまろさや蚊火の妻 草城

埒もなや蚊火焚く妻の大あくび 草城

たましひのさびしくいぶる蚊遣かな 草城

蚊遣火やみすぎよすぎの裏長屋 草城

土砂降りのいよいよ烟る蚊遣かな 万太郎

蜑が家の軒並ひくき草蚊遣 野風呂

蚊遣火の煙の末をながめけり 草城

みづうみに月のさしたる蚊遣かな 草城

蚊火げむり哀しきひとをかくしける 草城

月雲をいづれば燃ゆる蚊遣かな 不器男

炎々と蚊火見えそむる運河かな 青畝

蚊遣火のなづみて闇の咫尺かな 蛇笏

遠蚊火に見ゆる二人のやさしさよ< 青畝

翠微より蚊火の起居のうかむ時 青畝

遠蚊火がよべもこよひも小火のごと 青畝

蚊遣焚く家やむつまじさうに見ゆ 虚子

藺田を刈るさ中の駅の蚊遣かな 爽雨

峡の空高く真青なり蚊火焚けば 楸邨

黒部川発破とどろき蚊火暮れぬ 楸邨

蚊火煙月の襖にうつりけり 花蓑

蚊火それて灯が宝玉となりにけり 青畝

蚊火足して若者ばかり泊り客 貞

蚊遣火のなびけるひまに客主 虚子

遠蚊火のふと人影に遮ぎられ 林火

家中に蚊遣火の紅ただ一点 誓子

蚊火の妻二日居ぬ子を既に待つ 草城

蚊やりの香枕ひくくて眠られぬ 万太郎

沖の火のみえずなりたる蚊やりかな 万太郎

蚊遣火やくらし貧しく帯細く 真砂女

わが枷によろこびもどる牛に蚊火 爽雨

木曾人や蚊遣を腰の畑仕事 林火