「ふたり」

公開
1991年
監督
大林宣彦
原作
赤川次郎
脚本
桂 千穂
音楽
久石 譲
出演
石田ひかり、中島朋子、尾美としのり、柴山智加、中江有里、島崎和歌子、吉行和子、竹中直人、ベンガル、 大前均、奥村公延、林泰文、藤田弓子、入江若葉、増田恵子、岸部一徳、富司純子、他
備考
ビデオレンタル中
DVD発売中(特別プレミアム版 税別5700円)
物語
 北尾実加は、ドジでグズな尾道女子中学校に通う中学生。 彼女には、美人で頭の良い姉・千津子がいたが、不慮の事故で亡くなっていた。 その千津子は、妹を放っておけず、幽霊になって実加の前に現れた。
 ピアノの演奏会、クラス対抗駅伝、何気ない日常・・・・千津子はいつも実加の側にいて、実加を導くのだった。
 千津子の恋人だった神永智也とつき合うようになった実加。 中学校を卒業し、かつて千津子が着ていたのと同じ制服を着る高校生になった。 だが、父は小樽へ単身赴任。母は体調を崩し入院。 いつの間にか、北尾家は、バラバラになっになっていた。
 演劇部で、千津子のはまり役に抜擢された実加だが、それは他の部員のやっかみで辞退し、大道具係に。 それでも懸命に生きる実加。 千津子の亡くなった年齢に追いついた実加・・・・。
 父の小樽の愛人が北尾家にまで現れた。 取り乱し、ナイフを手にした実加を制す千津子に、実加は口走ってしまう、「お姉ちゃんなんか、どっか行っちゃえ」と。 結局落ち着きを取り戻した実加だが、千津子は本当に消えてしまった。
 外国へ行くという神永と、実加は別れた。 千津子が使っていた万年筆を手に、実加は、千津子のことを書きとめ始める。 千津子が生きていた頃のこと、そして、死んでしまってからのこと・・・・。
一言
 新・尾道3部作の第1作と銘打たれた、149分の長編映画。
 「転校生」、「時をかける少女」、「さびしんぼう」と続いた尾道3部作とうってかわって、「ふたり」では何人も死にます。 実加の姉・千津子、実加の親友・真子の父、実加の同級生・万里子の母・・・・。 (万里子自身、母と心中を図り、一人助かった。) 日常と背中合わせに存在する「死」〜大きな悲しみをもたらすもの〜、さらには当たり前のように存在すると思われた家族の崩壊に、ヒロイン・実加が向き合わされる、かなり重い物語です。
 その実加を、いつも見守る(幽霊の)千津子。 中島朋子が、凛として、知的で、清楚で、しかしどこか寂しげで、はかなげな雰囲気を出しています。
 実加と千津子以外に、光っているのが、実加の親友・長谷部真子。 快活な性格の真子は、グズな実加の頼れる友。 一緒に笑い、一緒に食べ、一緒に駆け、時には実加の代わりに(?)怒り。 見ていて、とても気持ちの良い少女です。
 名シーンの一つが、姉ではなく自分が死んでいれば良かったと言う実加に、真子が「今度言ったら殴る」と言い、それでもまだ自分が死んでいた方が良かったと続ける実加を、すかさずぶったシーン。 神様は長生きさせるために実加を選んだのだから、良いことも悪いこともひっくるめて、長生きしなくては駄目だ、と。 ・・・・ふと思うのです。 千津子には、実加にとっての真子のような親友がいたのだろうか、と。 美人で頭が良いと評判で、母親からは子供であることを忘れているかのように頼られ、死後も母校では伝説の人。 優等生で、しっかり者で、羨望の的だった千津子は、実は寂しい人だったのではないか、と。
 主題歌「草の思い」は、劇中劇の主題歌でもあり、映画の中で少女達に歌い継がれ、エンドロールで大林監督自身の歌声が流れる、最高の主題歌です。
仕様

特典
 特別プレミアム版は、2枚組。 DISC1は「北尾実加」仕様のピクチャーディスクで、本編(劇場公開版)の他に、大林監督と原作者・赤川次郎の対談、未公開シーン、予告編を収録。 DISC2は「北尾千津子」仕様のピクチャーディスクで、英語字幕本編(海外版)の他に、石田ひかりインタビュー、中島朋子インタビュー、ミュージッククリップ「草の思い」、等を収録。
 映像特典の中の、ミュージッククリップ「草の思い」は、シングルCDでしか聴けなかった中島朋子歌唱の「草の思い」(とCDのカップリング曲「わたし、いないの」)を、本編映像のダイジェストに乗せたもの。 劇中、何人もが口ずさみ、エンドロールには大林監督と久石譲音楽監督歌唱版が使用されていますが、“千津子”が歌う「草の思い」収録は、嬉しい特典。
 欲を言えば、劇場公開に先行したNHK放送版も選択鑑賞出来る仕様だとさらに良かったのですが。



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