| 公開 |
2005年6月4日 |
| 監督 |
佐々部清 |
| 原作 |
浅倉卓弥 |
| 脚本 |
砂本量、佐々部清 |
| 音楽 |
加羽沢美濃 |
出演 |
吉岡秀隆、石田ゆり子、尾高杏奈、西田敏行、松坂慶子、中越典子、鳥羽潤、平田満、石橋蓮司、
西村和彦、小林綾子、他 |
| 備考 |
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| 物語 |
かつて将来を嘱望されるピアニストだった如月敬輔は今、“天才ピアノ少女”楠本千織を連れて各地の施設を慰問して回る日々を送っていた。
5年前、敬輔は、海外でコンサートを開催した夜、日本人親子が拳銃強盗に襲われる事件に遭遇。
銃弾に神経を断裂されて、左手の薬指が動かなくなってしまった。
この時敬輔が救った、両親を失った少女が、千織である。
千織はサヴァン症候群のため脳に障害を負っていたが、一度聴いた旋律を完璧に再生出来る能力を持っていた。
偶然このことを発見した敬輔により、千織はピアノを弾く才能を開花させたのである。
今回、敬輔と千織が招かれて訪れたのは、長大な橋を渡った先にある、美しい海に囲まれた島の、脳科学研究所の療養センターだった。
この療養センターには、治療に時間がかかる脳疾患患者とその家族が集まり、大きな家族になって生活していた。
所長の藤本が言うには、職員の岩村真理子が、敬輔と千織を熱心に招聘したのだった。
敬輔は最初気が付かなかったが、真理子は敬輔の高校の後輩で、真理子にとって敬輔は初恋の人でもあった。
翌日。センターの礼拝堂で、千織のコンサートが開かれた。
曲名が分からない千織の気の向くまま、何を弾くか分からないコンサート。
前日に看護師の長谷川未来がリクエストした、療養所の患者でもある父が好きな「子犬のワルツ」も演奏して、コンサートは盛況に終わった。
コンサートの後、人見知りをする千織が不思議と真理子に懐き、2人はセンターの敷地で遊んでいた。
そこへ天候が急変し、突然の雨と雷が襲いかかる。
真理子達がいた場所の間近に落ちた雷は、風車を破壊、降りかかった破片が、千織をかばった真理子の背中に突き刺さってしまう。
千織は幸い、軽傷だった。
だが千織を助けた真理子の傷は肺にまで達していて、医師・倉野達が必死に処置したものの、非常に危険な状態となる。
意識を取り戻した千織は、押し黙ったまま。
ようやく口を開いた千織は、敬輔に、驚くべきことを告げた。
「私は千織ちゃんじゃありません。真理子です。」・・・・死にかけている真理子の心が、千織の中に宿っているというのである。
にわかには信じがたい出来事に、敬輔と千織の中の真理子は、このことを2人だけの秘密にすることにした。
次の日。千織の中の真理子は、敬輔に、身の上話をする。
父と2人だけの家族だったので、大家族に憧れて、大学時代に知り合った、家族経営の旅館の跡取り息子と結婚したこと。
子供が生まれず、離婚したこと。
絶望して駅のホームに立っていた時、療養センターの倉野医師夫婦に出会ったこと。
たった1人の肉親・父も亡くして、療養センターで働いてきたこと・・・・・・。
3日目の朝。自分の体が死んで行くことに耐えられなくなった千織の中の真理子が、パニックを起こした。
まず看護師の未来が、流暢に喋る千織の声を聞いて疑念を抱き、千織の中の真理子がICUで騒ぎを起こすに到って、倉野医師にも知れてしまう。
やむなく事実を説明する敬輔だが、もとより信じられる話ではなかった。
千織の体に真理子の心が宿って4日目の朝。
昨日は自分の代わりに千織が消えてしまってもいいと思ったと言う千織の中の真理子に、敬輔は、どんなに千織を呪ったか、それでも出来る限りのことを千織にしてやりたいと思うという心中を語った。
脳科学研究所のホールでは、療養センターの患者と家族達が大挙して、危篤の真理子がいるICUに押しかけようとしていた。
藤本所長や倉野医師によりそれは押しとどめられたが、真理子のことで必死になっている人々の姿に、千織の中の真理子は心を打たれる。
真理子が欲しかったもの<大家族>は、手に入っていた・・・・。
半信半疑だった未来が、ようやく事実を受け入れた。
今日が最後と悟った千織の中の真理子は、未来に、療養センターの後事を託す。
それから千織の中の真理子は、未来を通じて藤本所長の許しを得て、療養センターの中をくまなく歩いた。
そこにいる全ての人々に、感謝をしながら。
そして夜。
千織の中の真理子は、敬輔と共に礼拝堂に入り、最後の時を過ごす。
ただ一つの心残りは敬輔のピアノを聴けなかったこと。
千織の中の真理子に促されてピアノに向かった敬輔は、動かない筈の指が不思議なことに動き、驚く。
島の灯台が放つ光が礼拝堂を照らす中、敬輔がピアノで奏でる「月光」が響いた・・・・・・・・・・。
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| 一言 |
佐々部清監督が故郷をロケ地に選んだ作品の第3弾。(第2弾の「カーテンコール」より先に本作が公開。)
山口県の西北端に位置する角島は、美しい海に囲まれた島。
ここを舞台に、少女を守ってピアニスト生命を投げ出した男・敬輔と、少女を守って生命を投げ出した女・真理子と、大きな代償に守られた少女・千織、
それに、妻が寝たきりになってしまった医師・倉野をはじめとする、療養センターの人々の、それぞれの心情がフィルムに焼き付けられた名作。
角島がロケ地に選ばれた大きな理由である灯台は、クライマックスで、「これが本当にCG無しの映像か?」と信じられないくらいの光線を放っていました。
風景も、人々の有様も、皆美しい・・・・・・この映画を見て、もしも何か物足りなさを感じるとしたら、全てがきれいにまとまり過ぎている、ということでしょう。
しかし、むしろそれこそ、“アクションも無い、CGも無い、派手な物は何も無いけれど、ひたすらに人の思いを撮る”佐々部監督の真骨頂だと思います。
〜何かを失うことは、決してただ失うだけとは限らないし、感謝の気持ちを持っていればちゃんと幸せはみつかる。〜
敬輔や真理子を見ていると、そんなことを感じさせられました。
見ていて引っかかったのは2点。
1つは、千織の中の真理子が荒れたシーン。少々唐突に感じました。
もう1つは、礼拝堂の少女像のステンドグラスに書かれていた文字。
エンドロールを見ながら、あれはどういうことだったのか考えて結局分からず、首をひねりながら帰ることに。
(あの文字の謎は、下関市で配布されているフリーペーパー「essence」No.15掲載の福澤勝弘美術監督の文章を読んで氷解しました。
こんな重大な設定(療養センターは、趣旨に賛同した千織の両親が提供した土地に建てられた!という裏設定)は、劇場販売のパンフレットに載せておくべきだと思うのですが・・・・。)
後から、敬輔の心情の描き方が足りない気もしましたが、これは上映時間がもう少し長ければ何とかなっていた問題でしょう。
出演者の中で、何と言っても素晴らしいのが、千織役の尾高杏奈。
「千織」としては、脳に障害を負っている(設定年齢)14歳の少女を見事に演じ、
「体は千織だが心は真理子」の状態では、仕草も喋り方も石田ゆり子が演じた(設定年齢)28歳の真理子そっくりで、新人とは思えない演技でした。
パンフレットやテレビ番組のインタビュー等で佐々部監督が種明かしをしているのによれば、一度石田ゆり子に演じさせて撮影し、それを尾高杏奈に見せて演じさせたということですが、
さすがの佐々部監督の演出力です。
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